読書・水彩画

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J・F・フリードマン『第一級謀殺容疑』<下>

2024年07月04日 | 読書

第一級謀殺容疑』 (原題:AGAINST THE WIND)<下>

   著者:J・F・フリードマ ン(J・F・FREEDMAN)

   訳者:二宮 磬    1991.11 新潮社 刊 (新潮文庫)



<承前>
 さて、ウィルは落胆する被告4人に対し、死刑判決事案では上訴は当た
り前
であるが上訴要件をクリアすることが如何に困難なことであるか説明
する。
 ウィルは好きな酒も絶って(と言ってもビールは別、ワインも別)好き
なメアリー・ルーとの交渉も抑えている。
 
 そんな中、突然州検事のロバートソから呼び出しを受ける。重大事件が
発生。
州知事を交えて事態収拾に協力を依頼される。州刑務所で暴動が発
生、受刑者集団から州側の交渉役には弁護士ウィルを充てるよう要求があ
ったというのだ。
 ほぼ全権委任を与えられたウィルは決死の覚悟で刑務所に向かう。

 受刑者集団の代表はなんとウィルの依頼人ローン・ウルフだった。常に
物事を冷静に把握できるウルフは、暴力行為がエスカレートする受刑者た
ちを宥め、要求を集約し実現できる方法をウィルと協議する。

 収監者評議会はウィルとウルフらでまとめた要求書を呑んだ。ウィルは
知事の要求書同意を取り付けて、記者会見に臨む。ウィルは一躍ヒーロー
となる。

  そんななか、(いささか出来過ぎであるが)TVでウィルの英雄的活躍を
見た失踪中のリタが電話をしてきた。審理直前で身を晦ましたのは「証言
したら殺す」と言われ怖くて逃げたからで、今度こそ審理での証言に臨む
と言う。
 ウィルはリタを隠れ家に匿い検察側のうその証言づくりの一部始終を録
取し、判事に再審に向けた審尋の再開を申し出る。

 判事の好意的判断で、再審に向けリタの証言録取書中心に審理が再開さ
れた。検事のロバートソンは怒り狂う。「宣誓し真実だと述べた証人が、
実はあれは
嘘だったという証言が真実だということは信用できない」とい
うのである。また検事はリタに嘘の証言を仕込んだという検事補や担当警
官の悪事をも認めるわけにはいかない。リタは検事の必死の追及にたじた
じとなるが、懸命に踏みとどまる。

 何という幸運か、ウエストヴァージニアの小さな町の保安官からウィル
に電話があった。ある宗教伝道師の信者の一人が、ウィルの抱えた訴訟事
件の殺しの犯人だという男が告白したいと言っているという。またガセか
と思いながらもウィルはその町に飛ぶ。
 話を聞いたウィルはこの男の述べることは真実だと受け取った。
 またリタが4人組にレイプを受けた後警官の手で病院に連れられて行った
ことが明らかになり、前の供述の一端が崩れたことで再審が決定される。
 事件発生後なにやかやで2年余り経ってた。

 伝道師に殺人を告白したスコット・レイという流れ者の若者は、被害者
バートレスと麻薬の取引でトラブった上、自分が忌み嫌うゲイだと指摘さ
れたあげく屈辱的な奉仕を強いられたことから彼の銃を奪って頭を射殺、
めった刺しにしたうえ陵虐への仕返しにペニスを切り取り口にねじ込んだ
と供述した。
 唯一の物証である銃はレイの記憶通り道路側溝から発見された。

 かくして4人組のバイカーらは無罪釈放となった。判事は言う。「被告
人たちの釈放を認める」、「そして諸君に…本法廷は心からのお詫びを申し
上げる」

 ウィルの仕事は終わった。この訴訟で自分の人生でまともな何かを掴ん
だのかもしれない。家ではメアリー・ルーが待っている。
                     (以上この項終わり)


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