読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

C・J・ボックスの『狼の領域』

2017年11月20日 | 読書

◇『狼の領域』(原題:NOEHERE TO RUN)
         著者:C・J・ボックス(C・J・BOX)
         訳者:野口 百合子 2016.10講談社 刊 (講談社文庫)

  

    おなじみの猟区管理官ジョー・ピケットシリーズ。ワイオミング州トゥエルブ
・スリーブが担当区域。妻のメアリーベス、シェリダンとルーシーの二女の父。
新しい後任の管理官に引き継ぎをする前に、5日間の猟区パトロールを終えれば愛
する家族と一緒に暮らせることになる。

 近頃キャビンが荒らされたり、射止めたエルクの肉が誰かに解体され横取りされ
たという気味悪いことが頻発しているという噂があり不安な心を抱えてパトロール
に出たピケット。その不安は的中、とんでもない事件に巻き込まれることになった。

 手製の弓矢を発見したピケットは得体のしれない双子の兄弟に出会う。彼らは狩
猟許可証も持たず違反切符・召喚状も燃やしてしまう。立ち去るピケットに鋭い矢
が突き刺さる。乗る馬も殺された。ピケットは這う這うの体で森の中を逃げ出す。

 一方2年前オリンピック出場を目指す女性ランナーが山中で行方不明になった。
ピケットは重傷を負って逃げる途中この女性に助けられる。この女性は例の双子と
知己の間柄に見え疑念を抱く。

 川に沿って道なき道をたどりようやく帰還したピケット。不明女性の両親がピケ
ットに娘の救出を懇請する。もう二度とこの件にかかわらないとメアリーベスと約
束したのであるが、妻も気の毒に思って友人のネイトと共に再度山に入る。

 実はピケットが追う双子兄弟は州犯罪捜査部のお尋ね者であった。悪辣な上院議
員マキンティが土地開発を目論み、兄弟の家族クライン家所有の広大な土地を収用
にかけ、合法的に取得してしまった。銃を取って収用に反対した家族は銃撃戦の末
に母親と兄を喪い、兄弟は広大な森に姿を消していたのである。

 追跡劇はピケットのほか州警はもとよりFBI、ATF,マキンティ上院議員の雇った
追手らが入り乱れての乱戦。ついにピケットらは先んじて兄弟を発見した。彼らは
言う。「この山に入ってくるな」、「俺たちを放っておいてくれ」。ピケットは生
真面目なので一緒に下り法廷でけりをつけようと説得する。しかし…。

「俺たちの土地を返してもらいたい。謝罪してもらいたい。上院議員が刑務所に入
るのを見たい。土地開発業者がリンチされるのを見たい。そして何よりも放ってお
いてもらいたい。」、「そうなるように努力する」、「あんたのような連中の言い
そうなことだ」。


 アメリカ中西部のワイオミングの山岳部の手つかずの自然が描写され読んでいて
光景が浮かんでくる。Googl Eearthで画像検索すると実際どれだけ魅力的な山岳
地帯かがよくわかる。

(以上この項終わり)


 

 
  


沈黙の森

 

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