読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

西川三郎の『罠』

2017年11月07日 | 読書


◇ 『』 著者:西川 三郎 2017.3 幻冬舎 刊

  

     西川三郎の題名が一字の作品第3作。ほかに『瘤』、『欲』があ
 る。
  『瘤』を先に読んだが、『罠』はまるでタイプが違う作品。企業
 の出世争い、上司と部下の確執などがあって、ありきたりの企業小
 説かと思ったら、FX(外為証拠金取引)に狂う高層マンションの
 住人の奥様方や悪徳地上げ師、金には目がない銀座のクラブのママ
 などが登場し結構飽きさせない内容。

 お人好しですぐに人を信用してしまう車の販社取締役管理部長石田
 真人が主人公。子供はいない。妻紗栄子は本社(自動車メーカー)
 の元秘書。今は同じマンションに住む4人の妻たちとFX外為取引に
 のめりこみ多額の借金をしている。夫とは冷えた関係にある。

 石田はある日散歩中に喫煙を注意して怖いおじさんに絡まれた。だ
 が通りかかった美人の女性に助けられた。何とこれが同じマンシ
 ョンの住人で銀座のクラブのママ・玲子。しかも怖いおじさん赤川
 もこのマンションの住人で不動産業で高利貸の大金持ち。
 なぜか石田は美人ママに部屋に誘われる。
 こうした不自然に疑問を感じながらも玲子の言いなりになってしま
 3う石田。

  FX取引のグループの一人小沢真理は赤沢に借金をしているが利息
 の代わりに掃除を引き受ける。実は金庫の大金を狙っていて、盗聴
 器を仕掛けている。
  石田の妻は昔バイトで玲子とキャバクラで一緒に働ていたことが
   ある。FXの証拠金不足で赤川から多額の借金をした紗栄子は、昔取
 った杵柄の特技で利息の代わりに赤川に全身マッサージを施し気に入
 られる。
  赤川は石田の会社に架空の土地売買を持ち掛けているが、慎重派
 の石田を排除するために司法書士と玲子で石田を罠にかける。
  本社の燃費不正疑惑情報が週刊誌に投書された。玲子に情報を漏
 らした疑いで石田は川崎支店長に降格させられる。一方玲子は同社
 の空売りで大儲けをして証券取引等監視委員会の調査対象になる。
  抜け駆けした玲子のせいで架空取引の儲けを失った赤川は玲子を切
 り捨てる。
  一方真理は石田を抱き込み赤川の留守に金庫を開けるがもぬけの殻。
 真理の細工を見抜いた赤川は金庫の大金を移したのだ。紗栄子と呵々
 大笑する。

 何とも劇画チックな筋書きで面白いが、あとには何も残らない。
                     
                       (以上この項終わり)   
 
 

コメント
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