ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

六本木アートナイト

2013-04-05 10:50:18 | フェス、イベント
3月23日、六本木アートナイトに行ってまいりました。これは六本木ヒルズ、ミッドタウン東京、新国立美術館の3会場を中心に、23日の日没から翌24日の日の出までをコア・タイムとしたオールナイトのアート・イベント。今年で5回目となる今回は、日比野克彦さんがアーティスティックディレクターを務め、『TRIP→今日が明日になるのを目撃せよ。』をテーマに開催されました。

私はこういった街ぐるみで開催されるようなアート・イベントが大好きなんです。街を歩きながらアートに出会う感覚が楽しくって。特にこの六本木アートナイトは昼間ではなく深夜に開催されているという夜遊び感がまた楽しいんですよ。しかも今年は渋さ知らズオーケストラも参加してますからね~。音楽好きの心もがっつり掴んでいます。

さて、その渋さ知らズオーケストラ。メイン会場とも言える六本木ヒルズ・アリーナにて19時20分スタートという、まさにアートナイトの“夜”が本格的に始まろうとする時間帯での大舞台。ステージには現代美術家、宇治野宗輝さんが手掛けたという巨大なアートブネが鎮座し、客席後方には日比野克彦さんによる“灯台”モニュメントが聳えるというアートナイトならではのシチュエーション。大勢の観客で埋まった会場に現れた渋さ知らズの面々に、これから何が始まるのかよく分かっていなかったお客さんもいらっしゃったであろう歓声とどよめき。そして始まったライヴはいつも通りな渋さ知らズオーケストラ。すし詰め状態の大所帯が繰り出すあまりにも型破りなアヴァンギャルド・ジャズ、演劇要素を感じさせる極彩色のダンサー達、そして漁師姿で一際異彩を放つ玄界灘さん。アート・イベントだからって特別なことはしていませんが、それ以前に存在そのものがアートですよ! 「一週間」の“チュララ~チュララ~♪”がしばらく頭から離れませんでした。


他にも、会場各所に展示されているアートブネをはじめとする様々なアートを見て回ったり、ミッドタウン東京では突然、白雪姫達のパフォーマンスに出くわしたりと、刺激的な一夜でした。ですが私の場合、体力的にオールナイトは厳しいので、そこそこ早い時間に帰宅しましたけどね。って言うか、翌24日は上原ひろみさんのブルーノート公演に朝から並ばなくてはならなかったので、体力温存しました…。

上原ひろみ@ブルーノート東京

2013-04-04 11:01:03 | ジャズ
3月24日、ブルーノート東京にて上原ひろみさんのソロ・ピアノ・ライヴを観てまいりました。

ここのところ、トリオ・プロジェクトでのライヴが続いていたのでソロ・ピアノは久しぶり。震災直後にコットンクラヴで観て以来ですから、およそ2年振りですね。私が観たのはこの日の2ndショー。3日間続いた今回のブルーノート公演最終ステージです。

出来るだけ前の方で観たいため、朝8時前から並びましたが、既に先客さんが10人程いらっしゃいました。1stショーを予約している人は昼過ぎに整理券が発行されて解放されたのですが、何故か2ndショーのみの人は1stショーが始まるまで整理券を出せないとかで、結局17時半まで並び続けることに。計9時間半ですよ! 我ながら頑張りました。と言っても立って並んでる訳ではなく、椅子に座ってですけどね。まあ、ゆっくり読書する時間が取れて、それなりに有意義な時間を過ごせたり。

そんなこんなで、この日はまるで上原ひろみさんのコンサートのために私の1日全てを費やしたような感じになりましたが、その甲斐あって整理番号も1桁台をゲットし、いよいよ2ndショーの入場時間。照れを押さえつつ案内係の方に「上原さんの顔がよく見える席で!」と希望を伝え、案内された席が前から3列目、上原さんの斜め横。表情から全身までばっちり見える席。残念ながら鍵盤は見えませんが、腕の動きはしっかり見える。ま、私の場合、手元より表情優先なので、充分過ぎる良席。

そして開演時刻を少し過ぎて上原さんが登場! 割れんばかりの拍手。黒系で纏められた衣装、髪は向かって左斜め後ろに爆発している。1曲目は「The Tom And Jerry Show」。いきなり猛烈にスピーディな曲から始まり思わず身を乗り出しちゃいましたね。ハジケんばかりに駆け抜けていく上原さんのタッチ。そして鍵盤に命を吹き込むかのように目まぐるしく移ろう彼女の表情。それは時にピアノと戯れるようでもあり、時にピアノを愛でるようでもあり、時にピアノに挑みかかるようでもある。上原さん独特のスキャットとも言えそうな“唸り声”も含め、小さな身体全体でピアノに相対する上原さん。そんな彼女の姿を直ぐ目の前で観れる幸せ。そしてホール・コンサートとは違い、ピアノの素の音が直接響いてくる感じは、ステージを間近で観れるブルーノートならではの臨場感。この生々しさが堪らない!

2曲目「Choux A La Creme」では上原さん流のハネたグルーヴが心地良く、得意の低音弦をミュートしたベース・ソロも炸裂。続く「My Favorite Things」では音量を絞った繊細な高音域をコロコロと引き続ける場面が有り、その時の上原さんの1音1音を慈しむかのような表情も印象的でした。そして叙情豊かな「Old Castle, by the river, in the middle of a forest」。曲が進むにつれ会場の空気がどんどん上原ひろみ色に染まっていく。トリオとはまた違う、ソロならではの躍動感、繊細さ、美しさ、さらにある種の狂気に満ち、それら全てが豊かな情緒となって会場を満たしていく。

さらに「Haze」。来ましたね~、私が一番聴きたかった曲。この曲大好きなんです。本当に美しい曲。音がさらさらと流れていくようであり、その流れは緩やかな波と共に豊かな情感を描いていく。聴く者はただただその流れに身を委ねる。そしてこの日の「Haze」は特に美しかった!そして悲しかった。上原さんは涙をこぼしながら弾いてました。何を思っていたんでしょうね…。


本編ラストは「Rhapsody in Blue」。これはタップ・ダンサーの熊谷和徳さんとのデュオでお馴染みの曲ですね。もちろんガーシュインのあの曲。これが凄まじかった! なにが凄まじいって、上原さんの集中力と言いますか、曲への入り込み方。まさに全身全霊で持てる全ての力を使い果たさんが如くの勢い。トリオやデュオの場合は他メンバーの音を聴き、彼らとの駆け引きや調和が重要になる訳ですが、ソロの場合はただただピアノに没頭するより他はありません。そしてその密度たるや!上原ひろみ恐るべし!です。この曲でも、本来は熊谷さんのタップがパーカッション的な役割も果たしていた訳で、それが無い分ちょっと寂しいのでは?なんて思ったりしたんですけど、そんな懸念をものの見事に吹き飛ばしてくれました。上原さんはいつだって全力投球ですよ。ですがこの「Rhapsody in Blue」はこれまで見たことない程の圧倒的な熱量でした。それは情熱的とかいう言葉だけでは足りない、まるであふれる思いの丈に飲み込まれるような感じでした。

そして演奏が終わると同時に観客達が一斉に立ち上がって拍手喝采。上原さんは半ば放心状態な様相ながら、その拍手に応えるためにステージ中央へ歩むもその足取りはちょっとフラフラしてる。凄まじい演奏をやり終えた上原さんと、それを見届けた観客達。そこには小さい箱ならではの一体感がありました。

アンコールに戻って来ての「Time Out」。この曲、人気あるんですかね?上原さんが冒頭部分を弾き始めた瞬間に観客達も大喜び。途中、ピアノの連続フレーズに合わせて「オイ!オイ!」という掛け声がかかると、上原さんもそれに応えつつ声を出して笑ったり、観客の反応を引き出してちょっと遊んだりしてました。この辺りはアンコールならではの親密感でしたね。ですが一旦スイッチが入るとまたしても狂気が炸裂する。もう手がつけられない程にアグレシッヴな感性が爆発し、観客も大喜びながら、結局終わってみれば上原さんの足取りはまたフラフラ。あ~、こんな上原さんが大好きです!!

そしてスイッチが入ったのは上原さんだけではなく観客達も同じだったようで、もっともっとと拍手が鳴り止まない。流石に今回はもう出てこれないのでは?と思ったのですが、いえいえ、戻って来てくれました~!まさかの2度目のアンコール。曲はしっとりとしたスロー・ナンバー「Place to be」。上原さんのエモーションがここで溢れ出す。先の「Haze」はまだ堪えてる方でした。「Place to be」は泣きながら弾いてました。上原さんが何を思いながら弾いていたかは判りませんが、とても悲しい「Place to be」だったことでしょう。聴いている私にとっては、とてもさ寂しく、とても美しく、そして素敵な「Place to be」でした。


上原ひろみさんのライヴを観るといつも思うことですけど、ホント、上原さんのファンで良かった!!



この日のスペシャルカクテル「春爛漫」に寄せられた上原さんのサイン↓ 上原さんの軽快でダイナミックなピアノの音から着想を得て作られた春らしいカクテルだったそうですが、私はお酒がダメなので頂けませんでした…。





この日のセットリスト↓

01. The Tom And Jerry Show
02. Choux a la Creme
03. My Favorite Things
04. Old Castle, by the river, in the middle of a forest
05. Haze
06. Rhapsody in Blue
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07. Time Out
08. Place to be


*このライヴの少し前、3月10日、上原ひろみさんの信頼熱き調律師、小沼則仁さんが亡くなられたそうです。65歳。謹んでご冥福をお祈り致します。

そそるライヴ 4月編

2013-04-02 20:34:15 | そそるライヴ
関東近辺にて4月に行われるライヴ、フェス、イベントのなかで、気になるものをピックアップしてみました。


4/04(木)ALLEN STONE @ブルーノート東京
4/09(火)Michael Kiwanuka @ビルボードライヴ東京
4/10(水)チャラン・ポ・ランタン @タワーレコード渋谷店(インストア・イベント)
4/12(金)WILCO @ZEPP DiverCity Tokyo
4/12(金)THE JIM KWESKIN JUG BAND @日本橋三井ホール
4/12(金)NICOLE HENRY  @丸の内コットンクラブ
4/12(金)George Clinton & PARLIAMENT / FUNKADELIC @ビルボードライヴ東京
4/13(土)SHANTI @タワーレコード渋谷店(インストア・イベント) 観覧フリー!
4/13(土)Yokohama Jug-Band Festival ! vol.12 @VIVRE前広場 他
4/13(土)WATCHING THE SKY VOL.6 @日比谷野外大音楽堂
4/14(日)Predawn @タワーレコード新宿店(インストア・イベント) 観覧フリー!
4/17(水)Roy Ayers with special guest Lonnie Liston Smith @ビルボードライヴ東京
4/18(木)Tim Scanlan @吉祥寺コピス前 投げ銭!
4/19(金)Arrested Development @ビルボードライヴ東京
4/19(金)Jim Kweskin & Geoff Muldaur @横浜 サムズアップ
4/20(土)STANLEY JORDAN TRIO @丸の内コットンクラブ
4/20(土)Earth Day Tokyo @代々木公園 入場フリー!
4/21(日)Earth Day Tokyo @代々木公園 入場フリー!
4/25(木)ABIAH @ブルーノート東京
4/25(木)Yonrico Scott Band @下北沢 Garden
4/26(金)VINCENT GALLO @ブルーノート東京
4/28(日)MOUNT SUGAR @銀座ときね
4/29(月)Sergio Mendes  @ビルボードライヴ東京



お出かけの際は事前のご確認をお願いいたしま~す!

2012年 ベスト・アルバム 第1位!!

2013-04-01 17:19:06 | 2012年総括
LEONARD COHEN / OLD IDEAS

ようやく辿り着きました。2012年「ルーツな日記」ベストアルバム第1位、レナード・コーエンの「OLD IDEAS」です!!

もうすぐ80歳になるレナード・コーエンの8年振りとなった最新作。シンガー・ソング・ライターの前に詩人であり、また小説家でもあり、禅僧でもあるというレナード・コーエン。私も彼のことをそれほど熱心に追いかけて来た訳ではありません。もし表現者としての彼の魅力を全て理解しようとすれば、特に私のように英語を理解出来ない者にとってはおそらく雲を掴むような話になってしまうでしょう。ですがそんな私にもレナードは語りかけてきます。優しく、闇のように深いバス・ヴォイスで。

とにかくこの声ですよ! その低い響きは聴く者の五感を包み込み、深淵な世界へと誘い込む。それは非現実的であり魔術的。年齢を重ねるごとに深みを増すそんなレナードの歌声にただただ酔いしれてしまいます。そしてバックの演奏も見事。プロデュースはパトリック・レナード、エド・サンダース、アンジャニ・トーマス等が楽曲ごとに受け持っているようですが、独特の枯れた色合いから浮かび上がる陰影の濃いある種のムードで全体が貫かれ、楽曲を聴き進めるごとにその世界観に飲み込まれていくよう。もちろんその世界観を支配するのはレナードの歌声ですけどね。そしてその歌声に対比するような女性コーラスも特筆もの。シャロン・ロビンソン、ウェッブ・シスターズ、ダナ・グローヴァー達による柔らかく麗しいそのハーモニーはまるで女神の囁きの様でもあり、それがレナードの孤独感を伴ったある種の悟りのような歌声を際立たせます。

もちろん楽曲も良い! 特にパトリック・レナードとの共作となる「Show Me The Place」と「Come Healing」の2曲はレナード・コーエン独特のゴスペル的な情緒が濃密に感じれれ、素晴らしい!の一言。またブルージーな感覚が甘味に響く「Darkness」や、寂れた酩酊感を伴う「Amen」、長閑なカントリーがまるで危うい誘惑のように感じる「Banjo」なども見事。ですが正直、歌詞については日本盤の訳詞を読んでもその深い意味まではよく分かりません。訳者の方も歌詞そのものだけではなく、英文ライナーに載せられた歌詞の草稿のような断片をも頼りに色々と悩みながら訳されたそうです。その訳詞を読みながら考えを巡らしつつ作品を楽しむのも良いでしょう。ですが私は、敢えて何も考えず、ただただ、楽曲とサウンド、そしてレナードの声に没頭するのも有りだと思います。

邪念を捨てて、どっぷりと聴き込むことの出来る大傑作です!!