ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

レディシ@コットンクラブ

2009-01-26 16:36:59 | ソウル、ファンク
1月24日、丸の内コットンクラブにて、念願だったレディシのライヴを観てまいりました。も~、素晴らしかったです!

私が観たのはこの日の2ndショー。とにかく圧倒的な歌声! 「Get to Know You」、「Joy」、「I Tried」、「Think of You」、「Best Friend」、「Someday」、「Alright」など、一昨年リリースの「LOST & FOUND」からの楽曲中心のステージでしたが、このアルバムの完成度とは違う次元でライヴが凄いというのは、ある程度予想はしていましたが、その予想を遥かに上回るすごさでした。アルバムで聴かせたメロウネスを残しながらもとにかくパワフル。声そのものが黒人ならではの艶とコクに溢れ、そして表現力豊かに声音を変えながら高低差のある音階を自由自在に飛び交うような歌唱はエキサイティングこの上ありませんでした。そしてその発声を本人も楽しんでいるようでした。

そんな余裕すら感じる卓越した技量には、彼女を認めているというチャカ・カーンが脳裏を横切ったりもしました。もちろん彼女にリスペクトを贈るアーティストはチャカだけではありません。これまでにフランク・マッコム、ラファエル・サディーク、ゴードン・チェンバース、ブラッカリシャスなど、数々の作品に客演し、エラ・フィッツジェラルド、ルーサー・ヴァンドロス、アース・ウィンド&ファイアーなどのトリビュート作にも駆り出されています。さらに近々リリースされるセルジオ・メンデスの新作にも参加しているとか、まさに引く手数多。でもそんな人気振りが頷ける彼女の歌唱力です。

8歳の頃から歌い始め、デビュー前にも既にキャバレーやミュージカルで歌っていたというレディシ。ベイエリアでの活動が実り、自主制作ながら99年にアルバム「SOULSINGER」でデビュー。そのメロウな作風はネオ・ソウル・ムーヴメントの渦中で話題になりました。しかし何故か2nd作「FEELING ORANGE BUT SOMETIMES BLUE」はジャズ・アルバム。でもこの辺りがレディシの規格外の面白さ。「FEELING ORANGE BUT SOMETIMES BLUE」も一言にジャズというにはあまりにも剛胆な歌唱であり、やはり規格外。そしてこのアルバムには強烈なスキャットで歌われる「Straight No Chaser」が収録されていますが、彼女の歌に欠かせないのがこのスキャット。

この日のライヴでも自由奔放且つディープなスキャットをたっぷりと聴かせてくれました。とにかく隙さえあればスキャットを入れてくる。おそらく感情表現としてスキャットが自然に出てくるんでしょうね。そして1曲アカペラでもの凄いスキャットも披露してくれました。これは感情表現というよりスキャットのためのスキャット。ちょっと意味不明ですが、とにかく凄かったです!

レディシの歌はソウルフルこの上ありませんが、このスキャットなどジャジーな感触があるのも彼女ならでは。やっぱり彼女のルーツにはジャズがあるんでしょうね。2nd作がジャズ・アルバムだったり、エラ・フィッツジェラルドのトリビュート作に参加していたり、さらに自身のMySpaceは、ソウル版とジャズ版と二つ持っているようですし。そして彼女が満を持して契約したメジャー・レーベルはジャズの名門Verveでした。そんなジャジーな感触を上手くヒップホップやソウルにしみ込ませた傑作が、一昨年Verveからリリースした「LOST & FOUND」でした。

今回のライヴではこの「LOST & FOUND」をどう生バンドで処理するのか楽しみにしていたのですが、いやはや、レディシ本人に劣らずバック・バンドも最高でした。ドラムス、ベース、ギター、キーボード2台、女性コーラス2名の計7人編成。「LOST & FOUND」のメロウなヒップホップ的感性が、メロウを残しながらそのままソウルになった感じ。躍動感を増したファンキーなリズムに、揺れるローズ・サウンドと、セクシーにカッティングするギターが絡みます。これが生で聴くネオ・ソウルかと、感激しました! そこにあのパワフルで自由奔放でエモーショナルなレディシの歌が乗るんです! 思い出しただけであの甘味な興奮が甦ってきます。

そしてレディシはなかなかの盛り上げ上手でもありました。大胆に足を見せた衣装もディープでしたが、ファンキーな曲では座っていた観客を立ち上がらせ、一気にダンス・フロアへと変貌させたり、自らも常に踊りまくっていました。また観客とのコール&レスポンスもありました。しかも得意のスキャットでですよ! 我々も楽しみながらスキャットを真似しましたが、結構ついていくのに必死でした。

でもハイライトは何と言ってもスローナンバーでしょうね。まずやはり「LOST & FOUND」からですが「In the Morning」。もう極上でしたね。何と言っても声の響きが素晴らしい。そして感情が溢れ出るように歌われるその感性。こういうのを聴かされちゃうともう私は堪りませんね! やっぱりソウル、およびR&Bって良いなと。

さらに極め付きは昨年のクリスマス・アルバム「 IT'S CHRISTMAS」から「What A Wonderful World」。そう、サッチモのアレです。これはね~、ちょっと素晴らしすぎましたね。これが生で聴けただけで満足すぎます。ジャジーに静かに始まり、彼女を追いかけるようなローズの甘い音色をバックに、愛情たっぷりに徐々にソウルフルに高揚していく。一瞬たりとも聴き逃せない特別な瞬間でした。

この日のライヴで見せてくれた、ジャズもソウルもゴスペルも全て飲み込んだかのような押しの強いディープな歌声。そこにはある種の無骨さとも言える魂を感じました。現代的な洗練とそんな魂を併せ持つレディシ。他にも聴きたい曲は色々ありましたけど、それはまた次の来日のお楽しみということで。また来年も来日してくれることを祈ります。