
3月15日、ブルーノート東京にてリアノン・ギデンズを観てまいりました!
皆様、キャロライナ・チョコレート・ドロップスというグループを御存知でしょうか? まるで古き良き時代の黒人ジャグ・バンド/ストリングス・バンドを現代に甦らせたようなスタイルにより、2006年に初作「Dona Got a Ramblin' Mind」をリリースして以来、2010年作「GENUINE NEGRO JIG」がグラミー賞『Best Traditional Folk Album』部門を受賞するなど、ここ数年で一気に知名度を上げているオールドタイム・トリオです。そしてその紅一点シンガーこそ、今回の主役、リアノン・ギデンズなのです。
もちろんリアノン・ギデンズ自身も、ここ2~3年の間に数々の話題作に参加し、一人のシンガーとして名うての共演者達にも引けを取らない存在感を発揮したかと思えば、昨年にはついにソロ名義としては初のフル・アルバムとなる「Tomorrow Is My Turn」を名匠Tボーン・バーネットのプロデュースの元にリリースするなど、ソロ・アーティストとしても俄然注目を浴びるにいたっているのです。そしてそんななかでの初来日です。私はその最終公演となる3月15日、2ndショーを観てまいりました!
ほぼ開演予定時刻、客電が落ち、拍手と歓声に迎えられメンバー達が入場してまいりました。リアノン・ギデンズはワンピースのように見える鮮やかなブルーの上下。スカートに裸足というスタイルが眩しい!彼女を中心に向かって左側にはギタリストのチャンス・マッコイ、ウッドベースのジェイソン・サイファー、中央にドラムスのジェイミー・ディック、向かって右側にはアコギやバンジョーを弾く2人の黒人プレイヤー、ハビー・ジェンキンスとローワン・コーベット、以上の6人編成。ハビー・ジェンキンスとローワン・コーベットは現在のキャロライナ・チョコレート・ドロップスのメンバーでもあります。ちなみにチャンス・マッコイはオールド・クロウ・メディシン・ショウの現メンバーだったり。
1曲目、バンジョーの音色に導かれて始まった「Spanish Mary」。ボブ・ディランが地下室セッションに残した歌詞から生まれた企画作「The New Basement Tapes, Lost On The River」でリアノン・ギデンズが歌っていた曲。ルーツに根ざしながらもエレクトリック・ギターをフィーチャーした幽玄なサウンドに、リアノンの凛とした歌声が響きます。
続いてソロ作から「Don't Let It Trouble Your Mind」、「She's Got You」、「Waterboy」と3曲続けて。序盤からドリー・パートン、パッツィー・クラインと女性カントリー・シンガーのカヴァーを持ってくる辺り、今回の公演における彼女の趣向が伺えて、なる程、と思ったり。ですが、圧巻だったのは「Waterboy」。ブルースとしても知られるトラディショナルですが、リアノンは黒人フォークシンガーのオデッタが歌ったヴァージョンを下敷きにしているよう。麗しいメロディーのカントリーを歌うリアノンも素晴らしいですが、私はやはりこういう曲を歌う彼女に惹かれてしまう。特に終盤、アカペラのようになる部分でのブラック・フィーリングは堪らないものがありました。
さらに「Underneath the Harlem Moon」。こちらは昨年11月27日(RECORD STORE DAY)にリリースされた彼女の最新EP「FACTORY GIRL」に収録されている曲で、1930年代に黒人女性シンガー、エセル・ウォーターズが歌った小粋なジャズ・ナンバー。エレキギターがブルージーな味わいを施しつつ、まるでボードヴィルの時代にタイムスリップしたかのような雰囲気がまた最高でした。そしてソロ作から「Last Kind Words」。30年代初頭にパラマウントへ3枚のレコードを残して姿を消したという伝説の女性ブルース・シンガー、ギシー・ワイリー(ジーシー・ワイリー)のカヴァー。この辺り、さすがリアノン・ギデンズ!!と拍手したくなる選曲ですね。
そして続く「Louisiana Man」という曲がまた格好良かった! バンジョーを中心にトラッド的な雰囲気を漂わせつつ、エレキ・ギターによるロックなリフを合わせたオルタナ・カントリー。終盤はちょっとジャムっぽくなったり。リアノンはこの曲について“ケイジャン”と語っていましたが、ダグ・カーショウのあの有名曲とは違う曲でしたね。これも古い曲でしょうか?それともオリジナル?
中盤の聴かせどころはしっとりと、ソロ作からタイトル曲「Tomorrow Is My Turn」。シャルル・アズナヴール他の作でニーナ・シモンが歌った曲のカヴァー。ニーナ・シモンの繊細さとはまた違う、リアノン・ギデンズならではの芯を感じさせる歌声が素晴らしかったですね!そしてこの流れでフレンチな雰囲気のこの曲を違和感無く聴かせるリアノンのルーツ表現には脱帽です。
それにしても彼女にとってのルーツの裾野の広さや、その自由なブレンド感覚には驚かされます。白人の父と黒人の母との間に生まれたという彼女ならでは感性なのでしょうね。
さて、ステージは終盤に差し掛かります。リアノンがハビー・ジェンキンスを紹介し、彼のリード・ヴォーカルによるゴスペル曲「Children, Go Where I Send Thee」。アップテンポに、しかも次々にキーを変えて行く展開が興奮を誘い、客席から自然に手拍子が沸き上がる盛り上がり! 続くトラディショナルな雰囲気を醸した「Come, Love, Come」。こちらはキャロライナ・チョコレート・ドロップスのレパートリーにもなっている曲で、おそらくリアノンのオリジナル。
そしてこの夜のハイライト!私が最も聴きたかった曲であるゲーリック・ナンバー「S'iomadh Rid The Dhith Om / Ciamar A Ni Mi」。この曲もキャロライナ・チョコレート・ドロップスでやっている曲ですが、私は映画「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」のスペシャル・ ライブの映像でこの曲を観て、これは凄い!こんなの生で聴けたらな~!と羨ましく思っていたのですが、やってくれました!! ケルティックなメロディーが徐々に加速して行くようなリアノンの歌唱が素晴らしい! さらに終盤、みるみる熱を帯びてくると、その歌声には黒さが光り出す。こういう感性はリアノンならではですよね。歌い終わると同時に割れんばかりの拍手歓声。いや本当に素晴らしかったです!あとこの曲ではそれまで後方にいたローワン・コーベットが前へ出て来て、ボーンというパーカッションでまるで踊るようにリズムを繰り出してまして、それがまた躍動感に溢れていて最高でした!
本編ラストは再び「The New Basement Tapes, Lost On The River」から「Duncan And Jimmy」。ブルーグラス&アイリッシュっぽい爽やかなフレイバーに最後はほっこりして終了。いや、もちろんこれで終わる訳はありません。アンコールを求める拍手にステージに戻って来た彼女達。曲は「Lonesome Road」。そして「Up Above My Head」へと繋がれる。シスター・ロゼッタ・サープ・メドレーと言ったところでしょうか? いやはや、最後まで天晴でした!!
最新ソロ作からゲスト参加曲、バンドのレパートリーを織り交ぜ、カントリー、フォーク、ブルース、ケイジャン、フレンチ、ケルト、ゴスペルなど、ジャンルを横断し人種を超えたルーツ解釈により、まるである種のミュージック・トラベルのようでもあり、それでいて散漫にならず、あくまでもリアノン・ギデンズの音楽としての流れを感じさせる圧巻のステージでした。また、伝統的でありながらモダンかつ魔術的なバンド・アンサンブルは、Tボーン・バーネットやジョー・ヘンリーとの仕事を重ね、吸収した、その影響を伺えるものでもありました。
そうなんです、リアノンの歌声が素晴らしいのはもちろんなんですが、バンドの演奏がまた見事だったんです。メンバーそれぞれが多彩な技を見せてくれましたしね。例えばリアノンは2本のバンジョー(ひとつはフレットレス)を曲によって使い分けていました。フィドルも用意されていましたが、結局使わなかったような…? ベースのジェイソン・サイファーは指弾きと弓弾きを織り交ぜていましたし、ハビー・ジェンキンスはバンジョー、マンドリン、大太鼓と大活躍でした。そして曲によってはフィドルも弾いていたギタリストのチャンス・マッコイ。彼の良い具合に歪んだギター・サウンドが、このバンドの音楽性を異空間的な世界に広げていた要だったと思います。実はチェロ奏者の代わりに彼が入ったそうなんですが、この交代は大正解だったのではないでしょうか?(チェロの入ったステージも観てみたかったですけどね…。)
この日のセットリスト↓
01. Spanish Mary
02. Don't Let It Trouble Your Mind
03. She's Got You
04. Waterboy
05. Underneath the Harlem Moon
06. Last Kind Words
07. Louisiana Man
08. Tomorrow Is My Turn
09. Children, Go Where I Send Thee
10. Come, Love, Come
11. S'iomadh Rid The Dhith Om / Ciamar A Ni Mi
12. Duncan And Jimmy
-------------------------------------------
13. Lonesome Road ~ Up Above My Head

この日のスペシャル・カクテル↑

終演後はお楽しみのサイン会。私もサインを頂いて、ツーショットの写真も撮っていただきました!!
皆様、キャロライナ・チョコレート・ドロップスというグループを御存知でしょうか? まるで古き良き時代の黒人ジャグ・バンド/ストリングス・バンドを現代に甦らせたようなスタイルにより、2006年に初作「Dona Got a Ramblin' Mind」をリリースして以来、2010年作「GENUINE NEGRO JIG」がグラミー賞『Best Traditional Folk Album』部門を受賞するなど、ここ数年で一気に知名度を上げているオールドタイム・トリオです。そしてその紅一点シンガーこそ、今回の主役、リアノン・ギデンズなのです。
もちろんリアノン・ギデンズ自身も、ここ2~3年の間に数々の話題作に参加し、一人のシンガーとして名うての共演者達にも引けを取らない存在感を発揮したかと思えば、昨年にはついにソロ名義としては初のフル・アルバムとなる「Tomorrow Is My Turn」を名匠Tボーン・バーネットのプロデュースの元にリリースするなど、ソロ・アーティストとしても俄然注目を浴びるにいたっているのです。そしてそんななかでの初来日です。私はその最終公演となる3月15日、2ndショーを観てまいりました!
ほぼ開演予定時刻、客電が落ち、拍手と歓声に迎えられメンバー達が入場してまいりました。リアノン・ギデンズはワンピースのように見える鮮やかなブルーの上下。スカートに裸足というスタイルが眩しい!彼女を中心に向かって左側にはギタリストのチャンス・マッコイ、ウッドベースのジェイソン・サイファー、中央にドラムスのジェイミー・ディック、向かって右側にはアコギやバンジョーを弾く2人の黒人プレイヤー、ハビー・ジェンキンスとローワン・コーベット、以上の6人編成。ハビー・ジェンキンスとローワン・コーベットは現在のキャロライナ・チョコレート・ドロップスのメンバーでもあります。ちなみにチャンス・マッコイはオールド・クロウ・メディシン・ショウの現メンバーだったり。
1曲目、バンジョーの音色に導かれて始まった「Spanish Mary」。ボブ・ディランが地下室セッションに残した歌詞から生まれた企画作「The New Basement Tapes, Lost On The River」でリアノン・ギデンズが歌っていた曲。ルーツに根ざしながらもエレクトリック・ギターをフィーチャーした幽玄なサウンドに、リアノンの凛とした歌声が響きます。
続いてソロ作から「Don't Let It Trouble Your Mind」、「She's Got You」、「Waterboy」と3曲続けて。序盤からドリー・パートン、パッツィー・クラインと女性カントリー・シンガーのカヴァーを持ってくる辺り、今回の公演における彼女の趣向が伺えて、なる程、と思ったり。ですが、圧巻だったのは「Waterboy」。ブルースとしても知られるトラディショナルですが、リアノンは黒人フォークシンガーのオデッタが歌ったヴァージョンを下敷きにしているよう。麗しいメロディーのカントリーを歌うリアノンも素晴らしいですが、私はやはりこういう曲を歌う彼女に惹かれてしまう。特に終盤、アカペラのようになる部分でのブラック・フィーリングは堪らないものがありました。
さらに「Underneath the Harlem Moon」。こちらは昨年11月27日(RECORD STORE DAY)にリリースされた彼女の最新EP「FACTORY GIRL」に収録されている曲で、1930年代に黒人女性シンガー、エセル・ウォーターズが歌った小粋なジャズ・ナンバー。エレキギターがブルージーな味わいを施しつつ、まるでボードヴィルの時代にタイムスリップしたかのような雰囲気がまた最高でした。そしてソロ作から「Last Kind Words」。30年代初頭にパラマウントへ3枚のレコードを残して姿を消したという伝説の女性ブルース・シンガー、ギシー・ワイリー(ジーシー・ワイリー)のカヴァー。この辺り、さすがリアノン・ギデンズ!!と拍手したくなる選曲ですね。
そして続く「Louisiana Man」という曲がまた格好良かった! バンジョーを中心にトラッド的な雰囲気を漂わせつつ、エレキ・ギターによるロックなリフを合わせたオルタナ・カントリー。終盤はちょっとジャムっぽくなったり。リアノンはこの曲について“ケイジャン”と語っていましたが、ダグ・カーショウのあの有名曲とは違う曲でしたね。これも古い曲でしょうか?それともオリジナル?
中盤の聴かせどころはしっとりと、ソロ作からタイトル曲「Tomorrow Is My Turn」。シャルル・アズナヴール他の作でニーナ・シモンが歌った曲のカヴァー。ニーナ・シモンの繊細さとはまた違う、リアノン・ギデンズならではの芯を感じさせる歌声が素晴らしかったですね!そしてこの流れでフレンチな雰囲気のこの曲を違和感無く聴かせるリアノンのルーツ表現には脱帽です。
それにしても彼女にとってのルーツの裾野の広さや、その自由なブレンド感覚には驚かされます。白人の父と黒人の母との間に生まれたという彼女ならでは感性なのでしょうね。
さて、ステージは終盤に差し掛かります。リアノンがハビー・ジェンキンスを紹介し、彼のリード・ヴォーカルによるゴスペル曲「Children, Go Where I Send Thee」。アップテンポに、しかも次々にキーを変えて行く展開が興奮を誘い、客席から自然に手拍子が沸き上がる盛り上がり! 続くトラディショナルな雰囲気を醸した「Come, Love, Come」。こちらはキャロライナ・チョコレート・ドロップスのレパートリーにもなっている曲で、おそらくリアノンのオリジナル。
そしてこの夜のハイライト!私が最も聴きたかった曲であるゲーリック・ナンバー「S'iomadh Rid The Dhith Om / Ciamar A Ni Mi」。この曲もキャロライナ・チョコレート・ドロップスでやっている曲ですが、私は映画「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」のスペシャル・ ライブの映像でこの曲を観て、これは凄い!こんなの生で聴けたらな~!と羨ましく思っていたのですが、やってくれました!! ケルティックなメロディーが徐々に加速して行くようなリアノンの歌唱が素晴らしい! さらに終盤、みるみる熱を帯びてくると、その歌声には黒さが光り出す。こういう感性はリアノンならではですよね。歌い終わると同時に割れんばかりの拍手歓声。いや本当に素晴らしかったです!あとこの曲ではそれまで後方にいたローワン・コーベットが前へ出て来て、ボーンというパーカッションでまるで踊るようにリズムを繰り出してまして、それがまた躍動感に溢れていて最高でした!
本編ラストは再び「The New Basement Tapes, Lost On The River」から「Duncan And Jimmy」。ブルーグラス&アイリッシュっぽい爽やかなフレイバーに最後はほっこりして終了。いや、もちろんこれで終わる訳はありません。アンコールを求める拍手にステージに戻って来た彼女達。曲は「Lonesome Road」。そして「Up Above My Head」へと繋がれる。シスター・ロゼッタ・サープ・メドレーと言ったところでしょうか? いやはや、最後まで天晴でした!!
最新ソロ作からゲスト参加曲、バンドのレパートリーを織り交ぜ、カントリー、フォーク、ブルース、ケイジャン、フレンチ、ケルト、ゴスペルなど、ジャンルを横断し人種を超えたルーツ解釈により、まるである種のミュージック・トラベルのようでもあり、それでいて散漫にならず、あくまでもリアノン・ギデンズの音楽としての流れを感じさせる圧巻のステージでした。また、伝統的でありながらモダンかつ魔術的なバンド・アンサンブルは、Tボーン・バーネットやジョー・ヘンリーとの仕事を重ね、吸収した、その影響を伺えるものでもありました。
そうなんです、リアノンの歌声が素晴らしいのはもちろんなんですが、バンドの演奏がまた見事だったんです。メンバーそれぞれが多彩な技を見せてくれましたしね。例えばリアノンは2本のバンジョー(ひとつはフレットレス)を曲によって使い分けていました。フィドルも用意されていましたが、結局使わなかったような…? ベースのジェイソン・サイファーは指弾きと弓弾きを織り交ぜていましたし、ハビー・ジェンキンスはバンジョー、マンドリン、大太鼓と大活躍でした。そして曲によってはフィドルも弾いていたギタリストのチャンス・マッコイ。彼の良い具合に歪んだギター・サウンドが、このバンドの音楽性を異空間的な世界に広げていた要だったと思います。実はチェロ奏者の代わりに彼が入ったそうなんですが、この交代は大正解だったのではないでしょうか?(チェロの入ったステージも観てみたかったですけどね…。)
この日のセットリスト↓
01. Spanish Mary
02. Don't Let It Trouble Your Mind
03. She's Got You
04. Waterboy
05. Underneath the Harlem Moon
06. Last Kind Words
07. Louisiana Man
08. Tomorrow Is My Turn
09. Children, Go Where I Send Thee
10. Come, Love, Come
11. S'iomadh Rid The Dhith Om / Ciamar A Ni Mi
12. Duncan And Jimmy
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13. Lonesome Road ~ Up Above My Head

この日のスペシャル・カクテル↑

終演後はお楽しみのサイン会。私もサインを頂いて、ツーショットの写真も撮っていただきました!!
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