WAH WAH WATSON / ELEMENTARY
昨年、2018年10月24日に亡くなられたワー・ワー・ワトソン。米国のソウル/R&B/ジャズ・シーンを影で支えたセッション・ギタリストの代表格の一人でした。享年67歳。
彼について書きかけていた記事があったので、遅ればせながら、その名演の数々を偲んで、ここに掲載します。
1951年デトロイトに生まれたワー・ワー・ワトソン。本名メルヴィン・レイジン。上の写真は彼の唯一のソロ作「ELEMENTARY 」。1976年の作品。ジャズがファンキーになり、ソウルがジャジーに洗練されていった70年代。両者の接近に双方から貢献したのがデイヴィッド・T・ウォーカー、フィル・アップチャーチ、そしてワー・ワー・ワトソンといった職人ギタリスト達でした。マーヴィン・ゲイ、ハービー・ハンコック、クインシー・ジョーンズなど、当時の最先端サウンドの中核を担ったワー・ワー・ワトソンが、その人脈と経験を生かして制作したのがこの「ELEMENTARY 」でした。ワウが絶妙に効いた極上のファンキー・ギターをたっぷり味わえるのはもちろん、作曲者として、プロデューサーとして、そしてシンガーとしての魅力も存分に味わえます。バックにはハービー・ハンコック(key)、デイヴ・グルーシン(key)、ジョー・サンプル(p)、レイ・パーカー・ジュニア(g)、デイヴィッド・T・ウォーカー(g)、ジェームス・ジェマーソン(b)、ウィルトン・フェルダー(b)、ルイス・ジョンソン(b)、ウィリー・ウィークス(b)、オリー・ブラウン(ds)、アーニー・ワッツ(sax)などなど、とんでもないメンバー達が集結しています。
THE TEMPTATIONS / ALL DIRECTIONS
さて、70年代のワー・ワー・ワトソン。彼の代表的プレイとして必ず上げられるのがテンプテーションズの「Papa Was A Rollin' Stone」ですね。彼をモータウンに連れてきたのは、ジャクソン5の初代プロデューサーとしても知られるボビー・テイラーでした。そしてノーマン・ホイットフィールドが手掛けるサイケデリック・ファンクで、ワー・ワー・ワトソンのワウギターが炸裂します。ワー・ワー自身も彼が「モータウンに果たした最大の貢献」と自負する名演です。ちなみにワー・ワー・ワトソンが、彼の代名詞ともなるワウを使うきっかけとなったのは、モータウンの先輩ギタリスト、デニス・コフィがワウペダルを使っているのを見て驚いたからだそうです。
MARVIN GAYE / LET'S GET IT ON
マーヴィン・ゲイによる説明不要の大名盤。73年の作品。ワー・ワー・ワトソンは、デイヴィッド・T・ウォーカー、レイ・パーカー・ジュニアと共に、官能のギター・グルーヴを担っています。タイトル曲の印象的なワウギターは彼の手によるものという説もある。また、この作品が録音された時期は、モータウンが本社をデトロイトからLAに移した直後にあたり、そのセッションにはジョー・サンプル(p)、ポール・ハンフリー(ds)、アーニー・ワッツ(sax)など、LA界隈のミュージシャン達が参加していて、この時既にロスに移住していたワー・ワー・ワトソンがその橋渡しをしたとか。
QUINCY JONES / BODY HEAT
クインシー・ジョーンズによる74年の名盤。このアルバムって、アーサー・アダムス、デイヴィッド・T・ウォーカー、デニス・コフィ、エリック・ゲイル、フィル・アップチャーチといった、当時を代表するセッション・ギタリストが顔を揃えてるんですよね。もちろんその中にワー・ワー・ワトソンもいます。レオン・ウェアの活躍でも知られるアルバムですが、クインシー・ジョーンズとモータウン系ミュージシャンとの繋がりも興味深いところ。ワー・ワー・ワトソンは、「MELLOW MADNESS」、「I HEARD THAT!」など、この後のクインシー・ジョーンズ作品にも参加していきます。
HERBIE HANCOC / SECRETS
クインシーともう一人、ワー・ワー・ワトソンのギター・グルーヴを愛したジャズ界の大物と言えば、ハービー・ハンコック。72年の「HEAD HUNTERS」以降、ブラックファンク路線を追求していたハンコックの76年作「SECRETS」。プロデュースは70年代のハンコック作品と言えばのデヴィッド・ルービンソン。そしてワー・ワー・ワトソンがアソシエイト・プロデューサーにクレジットされている。レイ・パーカー・ジュニアとの鉄壁コンビによるファンキーなバッキングが冴え渡る一方、全7曲中5曲でハンコックと共作するなど、その活躍が光ります。ハービー・ハンコックは「FEETS DON'T FAIL ME NOW」、「MR. HANDS」など、その後もワー・ワー・ワトソンを重用しています。また、2005年の東京ジャズにハービー・ハンコックがヘッドハンターズで出演した際、黙々と気持ち良さそうにチャカ、チャカとカッティングしているワー・ワー・ワトソンの姿が印象的でした。
BOBBY WOMACK / SAFETY ZONE
ボビー・ウーマックの75年作。本作はハンコックの「SECRETS」同様、プロデューサーにデヴィッド・ルービンソン、アソシエイト・プロデューサーにワー・ワー・ワトソンを迎えている。1曲目の「Everything's Gonna Be Alright」でのワウ・ギターの格好良いこと!! ワー・ワー・ワトソンとレイ・パーカー・ジュニアの共作による「Love Ain't Something You Can Get for Free」でのチャカポコも気持ち良い〜。 この曲はワーワーのソロ作「ELEMENTARY 」でセルフ・カヴァーしていますが、名曲ですよね〜。
MICHAEL JACKSON / OFF THE WALL
マイケル・ジャクソンが名実共にソロ・アーティストとして旅立った傑作「OFF THE WALL」。79年の作品。彼の「ジャクソンズとは違う作品にしたい」という願いを助けたのがクインシー・ジョーンズでした。この名作にワー・ワー・ワトソンは3曲で参加しています。「It's The Falling In Love」での効果音的なオシャレなプレイも素敵ですが、ルイス・ジョンソン作のフロア名曲「Get On The Floor」でのスピード感を煽るようなバッキングもまた際立っています。
ここに挙げた作品は、もちろん氷山の一角です。ワー・ワー・ワトソンの参加した作品は、数多あります。バリー・ホワイト、ポインター・シスターズ、ビル・コスビー、スモキー・ロビンソン、フォー・トップス、アルバート・キング、ビル・ウィザース、などなど。さらにSMAPのバックもやってたり。2000年代以降も、ブライアン・マックナイト、アンジェリック・キジョー、マックスウェル、ラファエル・サディーク、マーカス・ミラーなどの作品に彼の名前を見つけることが出来ます。中でも最も新しいのが、クリス・デイヴの最新ソロ作。
CHRIS DAVE AND THE DRUMHEDZ / CHRIS DAVE AND THE DRUMHEDZ
現行ブラック・ミュージック界、最高峰のドラマーであるクリス・デイヴによる、ソロとしては初作となる2018年作。ワー・ワー・ワトソンは、1曲だけではありますが、アンダー・ソン・パークをフィーチャーした「Black Hole」に招かれています。クリス・デイヴとアンダー・ソン・パークの邂逅という刺激的なファンキー・サウンドに、ワー・ワー・ワトソンのギターが切れ込んでいきます。もしかしたら、これが最後の録音だったかもしれませんね…。
昨年、2018年10月24日に亡くなられたワー・ワー・ワトソン。米国のソウル/R&B/ジャズ・シーンを影で支えたセッション・ギタリストの代表格の一人でした。享年67歳。
彼について書きかけていた記事があったので、遅ればせながら、その名演の数々を偲んで、ここに掲載します。
1951年デトロイトに生まれたワー・ワー・ワトソン。本名メルヴィン・レイジン。上の写真は彼の唯一のソロ作「ELEMENTARY 」。1976年の作品。ジャズがファンキーになり、ソウルがジャジーに洗練されていった70年代。両者の接近に双方から貢献したのがデイヴィッド・T・ウォーカー、フィル・アップチャーチ、そしてワー・ワー・ワトソンといった職人ギタリスト達でした。マーヴィン・ゲイ、ハービー・ハンコック、クインシー・ジョーンズなど、当時の最先端サウンドの中核を担ったワー・ワー・ワトソンが、その人脈と経験を生かして制作したのがこの「ELEMENTARY 」でした。ワウが絶妙に効いた極上のファンキー・ギターをたっぷり味わえるのはもちろん、作曲者として、プロデューサーとして、そしてシンガーとしての魅力も存分に味わえます。バックにはハービー・ハンコック(key)、デイヴ・グルーシン(key)、ジョー・サンプル(p)、レイ・パーカー・ジュニア(g)、デイヴィッド・T・ウォーカー(g)、ジェームス・ジェマーソン(b)、ウィルトン・フェルダー(b)、ルイス・ジョンソン(b)、ウィリー・ウィークス(b)、オリー・ブラウン(ds)、アーニー・ワッツ(sax)などなど、とんでもないメンバー達が集結しています。
THE TEMPTATIONS / ALL DIRECTIONS
さて、70年代のワー・ワー・ワトソン。彼の代表的プレイとして必ず上げられるのがテンプテーションズの「Papa Was A Rollin' Stone」ですね。彼をモータウンに連れてきたのは、ジャクソン5の初代プロデューサーとしても知られるボビー・テイラーでした。そしてノーマン・ホイットフィールドが手掛けるサイケデリック・ファンクで、ワー・ワー・ワトソンのワウギターが炸裂します。ワー・ワー自身も彼が「モータウンに果たした最大の貢献」と自負する名演です。ちなみにワー・ワー・ワトソンが、彼の代名詞ともなるワウを使うきっかけとなったのは、モータウンの先輩ギタリスト、デニス・コフィがワウペダルを使っているのを見て驚いたからだそうです。
MARVIN GAYE / LET'S GET IT ON
マーヴィン・ゲイによる説明不要の大名盤。73年の作品。ワー・ワー・ワトソンは、デイヴィッド・T・ウォーカー、レイ・パーカー・ジュニアと共に、官能のギター・グルーヴを担っています。タイトル曲の印象的なワウギターは彼の手によるものという説もある。また、この作品が録音された時期は、モータウンが本社をデトロイトからLAに移した直後にあたり、そのセッションにはジョー・サンプル(p)、ポール・ハンフリー(ds)、アーニー・ワッツ(sax)など、LA界隈のミュージシャン達が参加していて、この時既にロスに移住していたワー・ワー・ワトソンがその橋渡しをしたとか。
QUINCY JONES / BODY HEAT
クインシー・ジョーンズによる74年の名盤。このアルバムって、アーサー・アダムス、デイヴィッド・T・ウォーカー、デニス・コフィ、エリック・ゲイル、フィル・アップチャーチといった、当時を代表するセッション・ギタリストが顔を揃えてるんですよね。もちろんその中にワー・ワー・ワトソンもいます。レオン・ウェアの活躍でも知られるアルバムですが、クインシー・ジョーンズとモータウン系ミュージシャンとの繋がりも興味深いところ。ワー・ワー・ワトソンは、「MELLOW MADNESS」、「I HEARD THAT!」など、この後のクインシー・ジョーンズ作品にも参加していきます。
HERBIE HANCOC / SECRETS
クインシーともう一人、ワー・ワー・ワトソンのギター・グルーヴを愛したジャズ界の大物と言えば、ハービー・ハンコック。72年の「HEAD HUNTERS」以降、ブラックファンク路線を追求していたハンコックの76年作「SECRETS」。プロデュースは70年代のハンコック作品と言えばのデヴィッド・ルービンソン。そしてワー・ワー・ワトソンがアソシエイト・プロデューサーにクレジットされている。レイ・パーカー・ジュニアとの鉄壁コンビによるファンキーなバッキングが冴え渡る一方、全7曲中5曲でハンコックと共作するなど、その活躍が光ります。ハービー・ハンコックは「FEETS DON'T FAIL ME NOW」、「MR. HANDS」など、その後もワー・ワー・ワトソンを重用しています。また、2005年の東京ジャズにハービー・ハンコックがヘッドハンターズで出演した際、黙々と気持ち良さそうにチャカ、チャカとカッティングしているワー・ワー・ワトソンの姿が印象的でした。
BOBBY WOMACK / SAFETY ZONE
ボビー・ウーマックの75年作。本作はハンコックの「SECRETS」同様、プロデューサーにデヴィッド・ルービンソン、アソシエイト・プロデューサーにワー・ワー・ワトソンを迎えている。1曲目の「Everything's Gonna Be Alright」でのワウ・ギターの格好良いこと!! ワー・ワー・ワトソンとレイ・パーカー・ジュニアの共作による「Love Ain't Something You Can Get for Free」でのチャカポコも気持ち良い〜。 この曲はワーワーのソロ作「ELEMENTARY 」でセルフ・カヴァーしていますが、名曲ですよね〜。
MICHAEL JACKSON / OFF THE WALL
マイケル・ジャクソンが名実共にソロ・アーティストとして旅立った傑作「OFF THE WALL」。79年の作品。彼の「ジャクソンズとは違う作品にしたい」という願いを助けたのがクインシー・ジョーンズでした。この名作にワー・ワー・ワトソンは3曲で参加しています。「It's The Falling In Love」での効果音的なオシャレなプレイも素敵ですが、ルイス・ジョンソン作のフロア名曲「Get On The Floor」でのスピード感を煽るようなバッキングもまた際立っています。
ここに挙げた作品は、もちろん氷山の一角です。ワー・ワー・ワトソンの参加した作品は、数多あります。バリー・ホワイト、ポインター・シスターズ、ビル・コスビー、スモキー・ロビンソン、フォー・トップス、アルバート・キング、ビル・ウィザース、などなど。さらにSMAPのバックもやってたり。2000年代以降も、ブライアン・マックナイト、アンジェリック・キジョー、マックスウェル、ラファエル・サディーク、マーカス・ミラーなどの作品に彼の名前を見つけることが出来ます。中でも最も新しいのが、クリス・デイヴの最新ソロ作。
CHRIS DAVE AND THE DRUMHEDZ / CHRIS DAVE AND THE DRUMHEDZ
現行ブラック・ミュージック界、最高峰のドラマーであるクリス・デイヴによる、ソロとしては初作となる2018年作。ワー・ワー・ワトソンは、1曲だけではありますが、アンダー・ソン・パークをフィーチャーした「Black Hole」に招かれています。クリス・デイヴとアンダー・ソン・パークの邂逅という刺激的なファンキー・サウンドに、ワー・ワー・ワトソンのギターが切れ込んでいきます。もしかしたら、これが最後の録音だったかもしれませんね…。