ルーツな日記

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グラミー賞 ノミネート 『Best Traditional Pop Vocal Album』

2017-01-13 22:20:55 | ルーツ・ロック
Bob Dylan / Fallen Angels

グラミー賞ノミネート特集。どんどん行きますよ! 今回は『Best Traditional Pop Vocal Album』部門。気になるノミネートは以下の5作品。

Andrea Bocelli / Cinema
Bob Dylan / Fallen Angels
Josh Groban / Stages Live
Willie Nelson / Summertime: Willie Nelson Sings Gershwin
Barbra Streisand / Encore: Movie Partners Sing Broadway

流石はトラディショナル・ポップ、豪華な顔ぶれですが、「ルーツな日記」的にはボブ・ディランとウィリー・ネルソンの一騎打ちで決まりです! アウトローの2大巨頭のようなお2人が揃ってトラディショナル・ポップというのも、なんだか可笑しな感じですが、両者ともアメリカのスタンダードをカヴァーした作品なんです。どちらも激渋な味わい深さで、甲乙付けがたいところですが、ノーベル文学賞受賞の追い風をアドバンテージとし、ボブ・ディランの「Fallen Angels」を本命に挙げたいと思います。

フランク・シナトラのカヴァー作で世の中を、あ!っと言わせた前作「Shadows In The Night」の続編にあたるこの「Fallen Angels」。

とは言え、新たに録音された続編ではなく、2014年2月にハリウッドはキャピトル・スタジオのスタジオBで録音された23曲を2枚に分けてリリースした、というのが真相のよう。

何はともあれ、フランク・シナトラも録音した伝説的なスタジオ内でバンドと共にライヴ録音。同時ミキシングで2トラックテープに落としたいう。しかも結果的にオーヴァーダビングや修正も一切無しという、こだわりの制作で完成されたこの作品。時代に逆行しながらも、ものすごく音が良いことに驚かされます。ふくよかな人間的な暖かみを感じさせる音。ディランのダミ声もロマンチックに聞こえます。

バックの演奏はお馴染みのツアー・バンドの面々。ディラン程の人なら、アルバム録音用に豪華なオールスター・バンドを組むことも普通に可能でしょうが、そうしないところに、彼らへの絶大なる信頼と、これが現在のディランの音だ!という自信が窺えます。トニー・ガーニエとジョージ・G・リセリによる心地よくスウィングするリズムがイイですね。ドニー・ヘロンによるスティール・ギターも秀逸。

楽曲には前作同様、「Young At Heart」、「All The Way」、「All or Nothing At All」など、フランク・シナトラが歌った名曲が並んでいますが、朗らかな曲調が印象深いホーギー・カーマイケルとジョニー・マーサーによる「Skylark」は、シナトラが一度も録音していない曲だとか。

それにしてもディランの歌声が醸す境地には恐れ入りますね。とてもリラックスしているようでありながら、声の節々から深いダークネスが滲むようであり、それでいてどこか愛らしい。こんな歌、ディランにしか歌えませんよね。



さて、対抗はもちろんウィリー・ネルソンの「Summertime: Willie Nelson Sings Gershwin」。こちらはタイトル通り偉大なるガーシュインの楽曲集。リズム隊にはジェイ・ベルローズやデヴィッド・ピルチも参加。アメリカン・ポピュラーのスタンダードを真っ向から取り上げるという点ではディランの先輩とも言えるウィリー・ネルソン。ディランに負けず劣らずの深い歌声。ガーシュイン曲も極上の味わいです。