ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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エドマール・カスタネーダ & ゴンサロ・ルバルカバ@ブルーノート東京

2014-01-15 19:32:35 | ジャズ

1月12日、ブルーノート東京にてエドマール・カスタネーダ&ゴンサロ・ルバルカバによるデュオ公演を観てまいりました。

キューバが世界に誇るピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバ。そしてコロンビア出身の若き天才アルパ奏者エドマール・カスタネーダ。アルパというのはいわゆるハープのことですが、クラシックで使われるグランドハープとは違う南米のハープで、インディアンハープとかラテンハープと呼ばれるもの。そのシェイプはグランドハープより一回り小型です。私もアルパという名前は聞いたことがあったものの、観るのは初めてでした。

ハープと言うと、どうしても女性が椅子に腰掛けて麗しく弾くイメージがあるのですが、アルパは流石はラテン系。ハープがこんなにも情熱的でリズミカルな楽器だったとは!目から鱗でした。

私はエドマール・カスタネーダのほぼ目の前、最前列で見ていたこともあり、アルパを弾く彼に目が釘付けでしたね。「左手でベース・ラインを、右手でコードとメロディーを同時に一人で演奏する超絶な演奏スタイル」とのことですが、かぶり付きで見ていてもあまりに超絶過ぎて目がついていきません。その腕及び手の動きは、しなやかさと激しさを併せ持つもので、その指先が奏でる音色は優しくもあり、荒々しくもある。ベース、メロディ、コードが複雑に絡み合い、三位一体となって美しい広がりを魅せる。特に驚いたのが左手が繰り出すベース・ライン。これが超ファンキー! ある意味パーカッシヴでもありました。まるでハープからリズムが湧き出るかのよう。まさにラテン系!アルパを前後に揺らしながら、身体全体で複雑なリズムを体現するかの如く小刻みに震えるように演奏する姿もラテンの血が成せる技でしょうか?

78年、コロンビアの首都ボゴタに生まれたエドマール・カスタネーダ。現在35歳でしょうか? これまでに既に3枚のアルバムをリリースし、数々のジャズ・フェスティヴァルへの出演を経て、その脅威の演奏スタイルで世界各国から大絶賛を受けているそうです。現在はニューヨークに在住。彼の弾くアルパ、いやラテン音楽におけるアルパをこの日初めて聴いた私にとって、それは多分にジャズ的というか、モダンなものに聴こえましたが、おそらくその根底には伝統的なアルパの奏法や、コロンビアの民族音楽が息づいているのでしょう。彼の音楽的語彙の豊かさには、現在進行形の鋭気と同時に、そういった悠久の深みをも感じさせられました。

一方のゴンサロ・ルバルカバ、流石はキューバを代表するピアニスト! 卓越したリズム感と豊かな表現力に酔いしれました。途中、スキャットのようにリズムを取りながら弾いてるのも印象的でした。またエドマールのパッションを受け止めそれに相対するような懐の深さも感じました。そんなアルパとピアノの音の交わりは本当に美しかったです。ですが、私がアルパの目の前に陣取ってしまったせいもあるかもしれませんが、今回はどちらかと言うとエドマール・カスタネーダが主役だったと言って良いのではないでしょうか。曲間のMCも全てエドマールが喋ってましたし、ルバルカバにもエドマールを立ててるような雰囲気を感じましたしね。

それにしても刺激的で贅沢なデュオでした。アンコール含めて全6曲の1時間強。私が想像出来るラテン音楽とは趣きを異にするものでしたが、それ故に音楽の面白さ、豊かさ、そして深さをたっぷりと堪能させていただきました。



ブルーノート東京のオフィシャルページに公開されたこの日のセットリスト↓。

1. ENTRE CUERDAS
2. DOUBLE PORTION
3. EDMAR SOLO : JESUS DE NAZARETH
4. GONZALO SOLO : FIRST SONG
5. QUITA PESARES
6. LIBERTANGO

3曲目はエドマール・カスタネーダのアルパ・ソロ。4曲目はゴンサロ・ルバルカバのピアノ・ソロ。2曲目、5曲目はエドマールが最新作「DOUBLE PORTION」でルバルカバと共演している曲。アンコールの6曲目も「DOUBLE PORTION」収録曲ですが、もちろん有名なピアソラの曲。イントロが始まって場内から拍手が沸き上がりました。これはため息ものの美しさでしたね。終演後、お互いの熱演を讃えるように肩を組んでステージを後にする二人の姿も印象的でした。