GALACTIC / YA-KA-MAY
3月28日、渋谷クラブ・クアトロにてギャラクティックを観てまいりました。ご存知、ニューオーリンズ・ファンクを下敷きにありとあらゆる音楽性を飲み込む驚異の5人組。しかも今回はネヴィル・ブラザーズの末弟シリル・ネヴィル、そして現リバース・ブラス・バンドのトロンボーン奏者コーリー・ヘンリーをゲストに招いての来日公演。もう期待に胸がはちきれそうになりながら現地入りしました。ミーハー魂を炸裂させて最前列ど真ん中です。
開演予定時刻をちょっと押してメンバーが登場。割れんばかりの拍手歓声のなか、スタントン・ムーアがドラムの席に着く。既にコーリー・ヘンリーも居ます。そしてベースのロバート・マーキュリオが聴きなれたベース・ラインを弾き始めます。いや、この重低音は本来スーザフォンが奏でるはずあの曲ですよ? いきなりあれ演っちゃうの? とか思っていると、メンバーからゲストのコーリー・ヘンリーが紹介され、始まりました!「Blackbird Special」!!
まさかこう来るとは! ニューオーリンズ産ブラス・バンドを代表する1曲、いやもはやニューオーリンズを代表する1曲といっても過言ではないでしょう。コーリーにとっては大先輩、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドのオリジナル。この曲から始まったということで、いかに今夜がニューオーリンズ・モードなのかが窺い知れ、いきなりテンション上がりまくりでした。しかもブラス・バンドのような混沌としたリズムのうねりとはまた違う、現在のギャラクティックならではのボトムの太いファンク・サウンドに仕上がっていて、これがまた格好良い! でもね、ギャラクティック&コーリー・ヘンリーがいかに格好良かったかはまた後半で語るとして、まず私はシリル・ネヴィルについて語りたい!!
という訳で、我らがシリル・ネヴィルは3曲目か4曲目辺り(もう既に記憶が曖昧)に登場。曲はミーターズ時代の「No More Okey Doke」。しかもパーカッションを叩きながらではなく、マイクを持ってステージ中央で踊りながら歌う。私の目の前でシリルがミーターズの「No More Okey Doke」を歌ってる!! もちろん粘り気のあるソウルフルな歌声も健在! これぞシリル・ネヴィルですよ! つづいてギャラクティックの最新作「YA-KA-MAY」から「You Don't Know」。この曲はCDではグレン・デイヴィッド・アンドリュースが歌っている曲ですが、シリルが歌うと完全にシリルの曲になってしまうから凄い。冒頭の「ユ~~ドンノ~!!」と歌い上げるところからゾクゾクきましたね。ソウルフルでした!
さらに「YA-KA-MAY」から「Heart of Steel」。CDではアーマ・トーマスが貫禄の歌声を聴かせてくれますが、シリルが歌うこの曲も良いです。アーマのようなどっぷりとした感じではなく、シリルならではのソウルを込み上げるような歌唱。しかもこの曲はパーカッションを叩きながら歌いましたが、後半はまたしてもマイクを持って中央に躍り出て、腕をブンブン振り回しながら熱く歌う! これですよね。やっぱりシリルはこうでなくちゃ!
しかしシリル・ネヴィルの本当のハイライトはライヴ終盤にやってきます。中盤はほぼパーカッションに専念する形だったシリルでしたが、ステージも佳境に入り再び彼にスポットが当たります。サックスのベン・エルマンが再度シリルを紹介。しかも何やら昔の曲を演るという。お!ミーターズの名曲か?と期待していたところ、ジェフ・レインズが弾き始めたギター・リフはなんと「Gossip」。 え~、他の名曲を差し置いて?みたいな。この曲は69年にリリースされたシリル・ネヴィルのソロ・デビュー曲ですが、かなりレアな存在。昨年ファンキー・ミーターズの来日公演でもこの曲が披露され、ファンの度肝を抜きましたが、ここでもまた「Gossip」! いま「Gossip」再評価なんですかね? でもこの曲メチャクチャ格好良いですよね。しかもライヴ映えが良い! シリルはまたしてもステージ中央で熱くファンキーなパフォーマンスを見せてくれ、終わり近くには得意の足をうねうねさせるダンスも披露してくれました。まさかシリルの歌う「Gossip」が聴けるとは!感無量でした。
さて、シリル! シリル! と熱く書いてしまいましたが、実はシリル以上に目立っていたのがコーリー・ヘンリー。まあ、とにかく凄かった! 格好や雰囲気はヒップホップ的というかストリートの悪童って感じで、パフォーマンスも見事にそんな雰囲気でした。常にステージ中央で高らかにトロンボーンを吹き上げる。しかもどんどん前へ出てくる。モニタースピーカーを跨いでステージから落ちるギリギリのところまで出てくる。もう私との間には柵が一つあるだけ、みたいな。しかもある曲ではその柵を乗り越え、観客の中に分け入り、長尺ソロを吹いたり。もうやりたい放題。さらにトロンボーンだけではなく、ラップまで決める。そして強引に観客を煽る。コール&レスポンスはもちろん、腕を振らせたり、ジャンプさせたり、あげくの果てには柵から観客に向かってダイブし、クラウド・サーフィンで流されつつステージに帰還みたいな。ほとんど誰が主役だか分からない感じでしたね~。
まあ、そう言ったパフォーマー的な強引さで目立っていた一面もある一方で、彼の吹くトロンボーンの存在感は絶大でした。曲目については既に曖昧ですが、「Tuff Love」とか、「Cineramascope」辺りのいかにもギャラクティック流ファンクが炸裂する曲でも、コーリーがトロンボーンを一吹きすれば一気にニューオーリンズな空気が立ちこめる。確かジプシー・ブラスのボバン・マルコヴィッチ・オーケスターの「Mere Yaara Dildara」も演ってたと思うのですが、その選曲や、ヘヴィなファンクに仕立て上げたアレンジも流石ですが、それに絡むコーリーのトロンボーンによるニューオーリンズ臭が強烈。また彼の弾力のある吹きっぷりがリズムの強度を確実に高めていましたね。
まず音にパンチがあるんですよ。そして高らかに天をも突き抜けるような勢いで吹く。流石にブラス・バンドを渡り歩いただけはある、まさにストリートで鍛え上げられた音色です。もうビリビリきます! ジャズ的でフリーキーなソロを吹くサックスのベン・エルマンとの対比も面白かったですね。彼らの掛け合いはなかなかに熱かったです。
リバース・ブラス・バンドのレパートリーでもある「Ooh Nah Nay」や、そのリバースも参加した「YA-KA-MAY」からの「Boe Money」なんかはもうコーリー・ヘンリーのためというか、コーリーが居てからこそ! みたいなところがありますよね。それと「Ooh Nah Nay」ではサビの合間にすかさずインディアン風の合いの手を入れるシリル・ネヴィルも流石でした。ちなみにコーリー・ヘンリーがダイヴ&サーフィンを敢行したのは「From The Corner To The Block」でした。こういう曲を出来るのも彼がラップを決められるからですよね。
さて、どうしてもゲストの話ばかりになりがちですが、主役はあくまでもギャラクティックなのです。いや、主役はシリル・ネヴィルとコーリー・ヘンリーだったのかもしれません。いつもならスタントン・ムーアばかりを見てしまうであろうギャラクティックのライヴですが、この夜はほとんどゲストの二人に目が釘付けでしたから。ですが終わってみれば、なんだかんだでギャラクティックってスゲ~な、って感じになってしまうのです。
どんなにゲストをフューチャーしても、ギャラクティックのライヴの流れとして成立しているんですよね。ゲストを招くこと自体がギャラクティックの実験精神の現れでもありますし、ゲストとのコラボにより、今のギャラクティックの姿を見事に浮き上がらせる。その一方、「Wild Man」ではボ・ドリスのサンプリングをキーボード操作するといった変化球もあったりで、それもギャラクティックらしいなと思ったり。もちろんメンバー個々の見せ場もありジャム・バンドならではのスリリングな展開にもゾクゾクさせられました。特にスタントン・ムーアのドラムソロは格好良かったし面白かったですね。そしてセカンドライン・ファンク、ブラス・バンド、ヒップ・ホップ、ジャズ・ファンク、など全てを飲み込み、そして押し寄せてくるギャラクティック流ファンクの荒波に、結局は打ちのめされてしまったのです。
アンコール・ラストの「Baker's Dozen」の格好良かったこと! ハネたベースラインにホーンが入ってくる瞬間がね。そしてスタントン・ムーアのドラム! やっぱりなんだかんだで彼ですよ。スタントンのドラムスには歌心があるんですよね。滅茶苦茶ファンキーなのに歌ってる。やっぱりニューオーリンズって良いよな~。
過去に何度かギャラクティックのライヴを観ましたが、今回が圧倒的に一番でした!!!
次はリバース・ブラス・バンドが観たいです! 誰か呼んでください…。
*写真は終演後のサイン会でメンバー全員からサインを頂いた最新作「YA-KA-MAY」。傑作です!!
3月28日、渋谷クラブ・クアトロにてギャラクティックを観てまいりました。ご存知、ニューオーリンズ・ファンクを下敷きにありとあらゆる音楽性を飲み込む驚異の5人組。しかも今回はネヴィル・ブラザーズの末弟シリル・ネヴィル、そして現リバース・ブラス・バンドのトロンボーン奏者コーリー・ヘンリーをゲストに招いての来日公演。もう期待に胸がはちきれそうになりながら現地入りしました。ミーハー魂を炸裂させて最前列ど真ん中です。
開演予定時刻をちょっと押してメンバーが登場。割れんばかりの拍手歓声のなか、スタントン・ムーアがドラムの席に着く。既にコーリー・ヘンリーも居ます。そしてベースのロバート・マーキュリオが聴きなれたベース・ラインを弾き始めます。いや、この重低音は本来スーザフォンが奏でるはずあの曲ですよ? いきなりあれ演っちゃうの? とか思っていると、メンバーからゲストのコーリー・ヘンリーが紹介され、始まりました!「Blackbird Special」!!
まさかこう来るとは! ニューオーリンズ産ブラス・バンドを代表する1曲、いやもはやニューオーリンズを代表する1曲といっても過言ではないでしょう。コーリーにとっては大先輩、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドのオリジナル。この曲から始まったということで、いかに今夜がニューオーリンズ・モードなのかが窺い知れ、いきなりテンション上がりまくりでした。しかもブラス・バンドのような混沌としたリズムのうねりとはまた違う、現在のギャラクティックならではのボトムの太いファンク・サウンドに仕上がっていて、これがまた格好良い! でもね、ギャラクティック&コーリー・ヘンリーがいかに格好良かったかはまた後半で語るとして、まず私はシリル・ネヴィルについて語りたい!!
という訳で、我らがシリル・ネヴィルは3曲目か4曲目辺り(もう既に記憶が曖昧)に登場。曲はミーターズ時代の「No More Okey Doke」。しかもパーカッションを叩きながらではなく、マイクを持ってステージ中央で踊りながら歌う。私の目の前でシリルがミーターズの「No More Okey Doke」を歌ってる!! もちろん粘り気のあるソウルフルな歌声も健在! これぞシリル・ネヴィルですよ! つづいてギャラクティックの最新作「YA-KA-MAY」から「You Don't Know」。この曲はCDではグレン・デイヴィッド・アンドリュースが歌っている曲ですが、シリルが歌うと完全にシリルの曲になってしまうから凄い。冒頭の「ユ~~ドンノ~!!」と歌い上げるところからゾクゾクきましたね。ソウルフルでした!
さらに「YA-KA-MAY」から「Heart of Steel」。CDではアーマ・トーマスが貫禄の歌声を聴かせてくれますが、シリルが歌うこの曲も良いです。アーマのようなどっぷりとした感じではなく、シリルならではのソウルを込み上げるような歌唱。しかもこの曲はパーカッションを叩きながら歌いましたが、後半はまたしてもマイクを持って中央に躍り出て、腕をブンブン振り回しながら熱く歌う! これですよね。やっぱりシリルはこうでなくちゃ!
しかしシリル・ネヴィルの本当のハイライトはライヴ終盤にやってきます。中盤はほぼパーカッションに専念する形だったシリルでしたが、ステージも佳境に入り再び彼にスポットが当たります。サックスのベン・エルマンが再度シリルを紹介。しかも何やら昔の曲を演るという。お!ミーターズの名曲か?と期待していたところ、ジェフ・レインズが弾き始めたギター・リフはなんと「Gossip」。 え~、他の名曲を差し置いて?みたいな。この曲は69年にリリースされたシリル・ネヴィルのソロ・デビュー曲ですが、かなりレアな存在。昨年ファンキー・ミーターズの来日公演でもこの曲が披露され、ファンの度肝を抜きましたが、ここでもまた「Gossip」! いま「Gossip」再評価なんですかね? でもこの曲メチャクチャ格好良いですよね。しかもライヴ映えが良い! シリルはまたしてもステージ中央で熱くファンキーなパフォーマンスを見せてくれ、終わり近くには得意の足をうねうねさせるダンスも披露してくれました。まさかシリルの歌う「Gossip」が聴けるとは!感無量でした。
さて、シリル! シリル! と熱く書いてしまいましたが、実はシリル以上に目立っていたのがコーリー・ヘンリー。まあ、とにかく凄かった! 格好や雰囲気はヒップホップ的というかストリートの悪童って感じで、パフォーマンスも見事にそんな雰囲気でした。常にステージ中央で高らかにトロンボーンを吹き上げる。しかもどんどん前へ出てくる。モニタースピーカーを跨いでステージから落ちるギリギリのところまで出てくる。もう私との間には柵が一つあるだけ、みたいな。しかもある曲ではその柵を乗り越え、観客の中に分け入り、長尺ソロを吹いたり。もうやりたい放題。さらにトロンボーンだけではなく、ラップまで決める。そして強引に観客を煽る。コール&レスポンスはもちろん、腕を振らせたり、ジャンプさせたり、あげくの果てには柵から観客に向かってダイブし、クラウド・サーフィンで流されつつステージに帰還みたいな。ほとんど誰が主役だか分からない感じでしたね~。
まあ、そう言ったパフォーマー的な強引さで目立っていた一面もある一方で、彼の吹くトロンボーンの存在感は絶大でした。曲目については既に曖昧ですが、「Tuff Love」とか、「Cineramascope」辺りのいかにもギャラクティック流ファンクが炸裂する曲でも、コーリーがトロンボーンを一吹きすれば一気にニューオーリンズな空気が立ちこめる。確かジプシー・ブラスのボバン・マルコヴィッチ・オーケスターの「Mere Yaara Dildara」も演ってたと思うのですが、その選曲や、ヘヴィなファンクに仕立て上げたアレンジも流石ですが、それに絡むコーリーのトロンボーンによるニューオーリンズ臭が強烈。また彼の弾力のある吹きっぷりがリズムの強度を確実に高めていましたね。
まず音にパンチがあるんですよ。そして高らかに天をも突き抜けるような勢いで吹く。流石にブラス・バンドを渡り歩いただけはある、まさにストリートで鍛え上げられた音色です。もうビリビリきます! ジャズ的でフリーキーなソロを吹くサックスのベン・エルマンとの対比も面白かったですね。彼らの掛け合いはなかなかに熱かったです。
リバース・ブラス・バンドのレパートリーでもある「Ooh Nah Nay」や、そのリバースも参加した「YA-KA-MAY」からの「Boe Money」なんかはもうコーリー・ヘンリーのためというか、コーリーが居てからこそ! みたいなところがありますよね。それと「Ooh Nah Nay」ではサビの合間にすかさずインディアン風の合いの手を入れるシリル・ネヴィルも流石でした。ちなみにコーリー・ヘンリーがダイヴ&サーフィンを敢行したのは「From The Corner To The Block」でした。こういう曲を出来るのも彼がラップを決められるからですよね。
さて、どうしてもゲストの話ばかりになりがちですが、主役はあくまでもギャラクティックなのです。いや、主役はシリル・ネヴィルとコーリー・ヘンリーだったのかもしれません。いつもならスタントン・ムーアばかりを見てしまうであろうギャラクティックのライヴですが、この夜はほとんどゲストの二人に目が釘付けでしたから。ですが終わってみれば、なんだかんだでギャラクティックってスゲ~な、って感じになってしまうのです。
どんなにゲストをフューチャーしても、ギャラクティックのライヴの流れとして成立しているんですよね。ゲストを招くこと自体がギャラクティックの実験精神の現れでもありますし、ゲストとのコラボにより、今のギャラクティックの姿を見事に浮き上がらせる。その一方、「Wild Man」ではボ・ドリスのサンプリングをキーボード操作するといった変化球もあったりで、それもギャラクティックらしいなと思ったり。もちろんメンバー個々の見せ場もありジャム・バンドならではのスリリングな展開にもゾクゾクさせられました。特にスタントン・ムーアのドラムソロは格好良かったし面白かったですね。そしてセカンドライン・ファンク、ブラス・バンド、ヒップ・ホップ、ジャズ・ファンク、など全てを飲み込み、そして押し寄せてくるギャラクティック流ファンクの荒波に、結局は打ちのめされてしまったのです。
アンコール・ラストの「Baker's Dozen」の格好良かったこと! ハネたベースラインにホーンが入ってくる瞬間がね。そしてスタントン・ムーアのドラム! やっぱりなんだかんだで彼ですよ。スタントンのドラムスには歌心があるんですよね。滅茶苦茶ファンキーなのに歌ってる。やっぱりニューオーリンズって良いよな~。
過去に何度かギャラクティックのライヴを観ましたが、今回が圧倒的に一番でした!!!
次はリバース・ブラス・バンドが観たいです! 誰か呼んでください…。
*写真は終演後のサイン会でメンバー全員からサインを頂いた最新作「YA-KA-MAY」。傑作です!!