ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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エイモス・ギャレット@渋谷クラブ・クアトロ

2009-04-16 12:51:42 | ルーツ・ロック
AMOS GARRETT / GET WAY BACK : A TRIBUTE TO PERCY MAYFIELD

4月11日、渋谷のクラブ・クアトロにてエイモス・ギャレットを観てきました。ウッドストック・シーンの国宝級ギタリストです。トムズ・キャビンさん主宰の「聴かずに死ねるか!」シリーズで07年に久々の来日を果たし、その大盛況からのアンコール・ツアーと言ってもいい、2年振りの来日公演です。前回を見逃している私にとっては、まさに聴かずに死ねるか!って感じで気合充分に観てまいりました。

*以下、完全にネタバレになりますので、これからライヴを観に行かれる方は読まないことをお勧めします。


今回は最新作となるパーシー・メイフィールドのトリビュート作「GET WAY BACK : A TRIBUTE TO PERCY MAYFIELD」(写真)を引っさげての来日ということで、そのアルバム・ジャケットで持つ、箱型のエレキ・ギターを弾くのかと思いきや、それはまったく登場せず、メインはトレード・マークのテレキャスで、途中にアコースティック・セットを挟むという構成。これは前回の公演とほぼ一緒のスタイルですかね? ま、アルバムはアルバム、ライヴはライヴって感じで、我が道を行く感じですかね。

ですが演目は「Never Say Naw」、「River's Intention」、「Lost Mind」、「Fading Love」、「Ha Ha In The Daytime」など、新作からの曲を結構演ってましたね。とは言え、昔からエイモス・ギャレットはパーシー・メイフィールドがお気に入りだったようで、お馴染みのレパートリーなんでしょうけどね。他にはルイ・ジョーダン「Is You Is or You Ain't My Baby」、ジミー・ロジャース「Carolina Sunshine Girl」、チャック・ベリー「La Juanda」など。アコースティック・セットではホーギー・カー・マイケルの「Lazybones」とか「Hong Kong Blues」あたりを演ってましたね。サポートは今井忍氏のギターと岡嶋文氏のベース。このお二人も前回と同じようですね。今井忍氏はアコースティック・セットで8弦ウクレレを弾いたりしていました。

まあ、何はともあれ、エイモスのギターですよ! 指の動きなんかは決してしなやかではなく、今にも崩れそうで、フィーリング的にはかなりブルージーなんですが、出てくるフレージングは神業的にロマンチック。複弦での多彩なベンディングが聴くものを夢心地の世界へ連れて行ってくれます。私はてっきりスライド・バーを使ってるものだとばっかり思っていましたが、この目でしかと魔術のようなベンディングを見てきました。そして常人には決して真似することができない、まるで宇宙で星が儚く弾けるような音使い。どうやったらあんな音階を弾けるんでしょう?「星屑のギター」は健在でした!

でも、曲間では何度か「あー!」と唸り声を上げながら、まるで痺れか痛みでもあるかのように左手をブンブン振ったりしてました。思うように指が動かないのかな?と心配にもなりましたが、曲が始まれば絶品の「星屑ギター」を鳴らすのです。職人と言うか、もう手に染み付いた技なのでしょうね。もちろん年齢的な衰えもあるとおもいますよ。でもそれすら絶妙の間やフィーリングに変えてしまう程、エイモスのギターは特別なのものでした。

一番盛り上がったのは意外にもジミー・リードの2曲でした。「Big Boss Man」と、もう1曲は「I'll Change My Style」だったかな? この2曲のギター・ソロは素晴らしかったですね~。ソロが終わると拍手喝采が巻き起こり、エイモスも笑顔で軽く会釈して応えてましたね。シカゴ・ブルースもエイモスにかかると、何処を切ってもエイモス色に染め上がります。

もちろんギターだけではなく、深いバリトン・ヴォイスも魅力的です。やっぱりパーシー・メイフィールドの曲はエイモスの声に合ってますよね~。人間味溢れる素朴な味わいながら、声自体が60代後半にしては艶やかですし、年齢を重ねたコクもある。そんな低音ヴォイスには男の私もうっとりです。

そして終盤にキラーチューン「Sleepwalk」。目を閉じると、その滑らかで振り幅の大きな音の揺れは、まるでスティール・ギターのような音色ですが、もちろん全てベンディングです。そして星が降ってくるような音階に指がネックの上を舞います。素晴らしい! これを生で聴きたかったんです! 生で観たかったんです! まさに聴かずに死ねるかです!

本編ラストはロバート・ジョンソンの「Walkin Blues」。それにしてもセット・リストを振り返ると、エイモス・ギャレット流のルーツ探訪の旅のようでありながら、エイモス・ギャレット自身のキャリアを振り返るような選曲でもありましたね。例えば「La Juanda」や「Carolina Sunshine Girl」は78年のジェフ・マルダーとの共演盤「GEOFF MULDAUR & AMOS GARRETT」収録曲ですし、「Lazybones」や「Hong Kong Blues」もジェフとのライヴ盤に入っていた曲です。そして「Walkin Blues」はポール・バターフィールドと組んだベターデイズで「New Walkin Blues」としてとりあげていた曲。「Sleepwalk」は89年のソロ作「I MAME MY HOME IN MY SHOES」から。そう言えば同作から「Move On Down The Line」も演ってましたね。

そしてアンコールはエイモスを一躍有名にした必殺のソロが入ったマリア・マルダー「真夜中のオアシス」。ゲスト・ヴォーカルに中村まりさんを迎えてのセッション。失礼ながら私は彼女のことを良く知らなかったのですが、05年のフジロックにも出演していたシンガー・ソング・ライターだそうです。そして前回のエイモス公演でもゲストに招かれこの曲を歌ったとか。今回はステージも客席もかなり年齢層高めな男性が多かったので、彼女の登場で一気に華やぎましたね。出だしのファルセットから「オー!!」と思わせる美声でした。そしてその声に寄り添うように艶やかな音色を奏でるエイモス。まさか彼のギターでこの曲を聴けるとは! 感無量でした。

途中15分程の休憩を挟んで約2時間。20曲程演ってくれたでしょうか? 終演後には恒例のサイン会が。私も長い列に並んでサインを頂きました。ギターは右利きですが、サインは左手で書いてましたね。09と年を入れてくれたのは、この先また来てくれると言うメッセージでしょうか?

ちなみに、この日のステージは今回の日本ツアーの初日で、このあと関西方面から九州まで回り、さらに仙台へ向かい、最後は4月29日の北海道鶴居村「ヒッコリーウィンド」まで続くようです。元気ですね!

*曲目等、間違ってましたらごめんなさいね。