ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ローリン・ヒル@幕張メッセ

2007-04-02 17:25:37 | フェス、イベント
FUGEES / GREATEST HITS

3月31日、幕張メッセで行われたスプリングルーヴ。隣同士に配置されたレッド・ステージとブルー・ステージで、それぞれのセット・チェンジの時間を利用して交互にパフォーマンスが展開されます。それはとても良い方式に思えましたが、予想外のドラマを生みました。

予定では大トリにレッド・ステージでカニエ・ウェスト、その前にブルー・ステージでローリン・ヒルが出演するはずでしたが、実際にはカニエ・ウェストが先にパフォーマンスをし、トリはローリン・ヒルが務めました。

私は当初、フェス終盤はAI~ローリン・ヒルの流れでブルー・ステージを観ようと楽しみにしていました。AIの一つ前のアクト、ZEEBRAが終わると同時にステージ前へ移動。かなり前方中央あたりの良い位置をキープ出来ました。予定ではこの後3時間弱でローリン・ヒルの出番となるはずでした。

さて、隣のレッド・ステージでルーペ・フィアスコが始まり、横目で楽しみました。いよいよAIの開演が近くなると、私の回りは身動きが取れない程ぎゅうぎゅうに。このぎゅうぎゅうはAIのソウルフルなステージが終わっても続きました。そして隣のステージではジギー・マーリーが始まります。そしてその次がこちらのステージでローリン・ヒルです。ですがこの頃から私の回りでセキュリティの人に担ぎ上げられフェンスの外に離脱する人が目立ち始めます。

離脱した人達にはそれぞれの理由があったと思いますが、身動きがとれない上の、あの蒸し暑さと淀んだ空気に、体力の限界を感じた人も多かったのではと思います。私は男ですからちょっと背伸びをして上を向けば新鮮な空気が吸えましたが、それでも辛かったです。背の低い女の子にはなおさら過酷な状況だったと思われます。

そして誰もがジギー・マーリーが終わればローリン・ヒルが見れると思っていました。そしていよいよそのジギー・マーリーが終わり、ローリン・ヒルの開演を告げるはずのMCが登場しました。しかしその人が私達に告げたのは「ローリン・ヒルがまだ会場に到着していません。」という内容でした。

まさに天国から地獄へ。さらに追い討ちをかけるように「先に隣のステージでカニエ・ウェストが演ります!」と。隣では悲鳴のような歓喜のような大声援が。その一方こちらは失望と怒りと不安で騒然としていました。あとどれだけこの状態で待ち続ければ良いのだろうかと。

ここでさらに幾人かの人達が離脱していきました。とにかく暑かったです。私は身動きとれない中なんとか上着を脱ぎTシャツ一枚に。持っていたペットのお茶は確実に常温を超え、生ぬるい液体になっていました。でもこうなったら居座るしかないなと。

そして隣ではセット・チェンジの後、カニエ・ウェストがスタート。これはかなり良かったです。横目ながらこちら側でも結構盛り上がりました。カニエ・ウェストが良い感じにローリン・ヒルに繋いでくれたことは間違いないと思います。ですが、如何せん疲れすぎました。

もちろんこの間にも離脱していく人達がいました。まるで生き残りを賭けたサバイバルのようでした。私もかなりきつかったです。それでもローリン・ヒルのさざ波のように揺れるオーガニックなヒップホップを、もしくは哀愁のある枯れた歌声を楽しみに、そしてそれに疲れた体を癒されたいと、自分勝手に期待していたのです。

結局、本来なら7時15分開演予定のローリン・ヒルが始まったのは9時判頃だったと思います。しかも歓喜に迎えられたローリン・ヒルはびっくりするぐらいアッパーでした。癒されるどころではありません。バック・バンドはロック色の濃い、ファンク・レゲエ的な強烈なサウンドを繰り広げます。ローリンのラップもテンションが高く、歌声は繊細さよりも勢いとノリ重視。もともと声量が有るタイプではないので、正直こんなに力強く歌うとは思わず、びっくりしました。

ですがローリンの使っていたワイヤレス・マイク、何であんなに音が悪かったのでしょう? 完全に音が割れているように聞こえました。私の立ち位置の問題か?それともアグレッシヴなサウンドにするためにエフェクトをかけていたのか?単なる風邪声か? それが残念でした。

結局終始アゲアゲに攻めたローリン・ヒル。私は疲労と、初めて間近で見る憧れのローリン・ヒルの姿に、ただただ恍惚とした時間を過ごしました。それは間違いなく至福の時間ではありましたが、アンコールのエレキ・ギター弾き語りが最も心に染みました。

終了は11時近く。予定では45分程度の持ち時間だったのが、遅刻のおかげでアンコールも含めたフルサイズのセットに近い内容が見れたと思うと、そういう意味では得をしました。

帰りの列車で座りながらようやく人心地がついた頃、あらためてローリン・ヒルのライブを振り返ると、それは新しいローリン・ヒルの姿を打ち出した凄いライブだったのかもと思い、何やらゾクゾクしてきました。

全体的にファンク・ロックっぽいアグレッシヴなビート感はもちろん、フージーズ時代、ソロ時代の曲も多くが速いテンポと新アレンジで歌われ、スピーディーな曲の展開や細かい緩急がビシバシと決まる。ビートルズやジミヘン、マーサ&ザ・ヴァンデラスなどのカヴァー、もしくは引用も効果的。そしてなによりローリンの攻めモード。私は今まで彼女の歌に内省的な魅力を感じでいたのですが、今回のライブでは間違いなく直接的に観客へ声をぶつけていました。そんな彼女の姿も今思えば眩しかったです。

もっと体力のある状態で観たかった…。もちろん体力の無い私にも責任はありますけどね。できればまた来日して欲しいです。

最後にここに書いたことは私個人の印象であり、ステージ前のエリアに居たオーディエンスの気持ちを代弁するものではない事を付け加えておきます。私は待ち時間を過酷に感じましたが、そう感じたのはごく一部の少数派かもしれません。何せ私は男とは言えもう歳ですからね。


*写真のアルバムはフージーズ時代のベスト盤。フージーズ時代の曲も「Killing Me Softly With His Song」他、結構演ってくれました。私的にはこのベスト盤を聴くなら「THE SCORE」を聴くよ、と思ってしまうのですが、そちらは以前に使っているので今日は敢えてこちらを。ジャケはこっちの方が好きですし。しかしニュー・アルバムは何時出るんでしょう?



~関連過去ブログ~ お茶のお供にどうぞ。

 07. 4. 1 スプリングルーヴ@幕張メッセ