哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

自由貿易 自由経済

2010-04-16 00:20:20 | 時事
 ある雑誌で自由貿易が民主主義を崩壊させるという記事に接した。民主主義を最善とする前提はとりあえず置いておくとして、簡単に言うと、自由貿易つまり国家間での貿易を自由にすると、他国の低価格商品が輸入されるから国内の関連産業がダメージを受け、国内の貧富格差が進むため、政治が不安定となり専制政治が台頭することになるという流れだ。確かに貿易とは異なるが、ヨーロッパでも移民受け入れを積極的に進めた国において、移民が低賃金で働くため自国民の失業が増え、結果的にネオナチが台頭しているという話も聞く。

 自由貿易は自由経済の一形態だが、自由経済においては希少な物は高く、供給過剰であれば安くなり、そして同じ物であれば、安い方が売れる。安ければ良いわけだ。しかし、ここには外部不経済が存在し、そこで歪みが生じる。エコにおいても(エコを最善とする前提はとりあえず置いておくとして)再生紙は高価で一般紙は安いが、安い方を取れば結果的にエコに反してしまう。

 ここに至って、経済における自由というものの問題に突き当たる。自由経済においては、安ければ売れるからよい、売れることにより利潤最大を目指すことに価値がある。各人が市場で利潤最大を目指すことが社会全体にとって善いことだという前提があるが、上で見たようにこの価値感には落とし穴があるわけだ。

 利潤最大を目指すことが善いという価値感は、やはりお金が全てという価値感とつながってしまう。お金が全てという価値感は、池田晶子さんが常に問題としていた話だ。池田さんのいう「自由」は、好き勝手にやったり、お金を儲けるためが目的だったりするのとは違う。人間は真善美を求めるという、そこにしか「自由」はないというわけだ。貿易や経済において、真善美を求めるとは一体何のことかと思ってしまうが、経済も政治も生活も生存も一蓮托生につながる話であるから、決して関係のない話ではない。