哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

イマキュレー・イリバギザ著『生かされて。』

2006-12-16 05:24:50 | 時事
 先日テレビ番組でこの本が紹介されていました。ルワンダの大虐殺を生き抜いた主人公が綴ったノンフィクションです。インタビューでは、決して加害者を恨んではいけない、復讐の連鎖を呼ぶだけだ、というようなことを言っていました。早速買って読んでみました。


 一人称で語られる文章は、凄まじい事件を体験してしまったせいか、記憶が定かでない部分もあるようです。しかし殺戮の生なましさは、体験したからこそ書ける内容なのでしょう。加害者を許せるか、著者本人の葛藤も書かれています。



 とくに感動的だったのは、ツチ族の女性たちをかくまった牧師が、彼女らをフランス軍基地に送る前に、かくまっていたことを全く知らなかった家族に彼女らを会わせ、いつか困った人がいれば助けるように、という話をしたところでした。
 牧師はまさに「命をかけて」助けたのです。もし私たちがそのような事態に直面したとき、果たして同じ行動に出ることができるか。決して簡単なことではありません。




 ただ、読んでいて違和感が少しあったことも否めません。ひとつは、全編の内容が神への強い信仰のおかげであると徹底されていることです。全米ヒットの理由は、この本が信仰の本だからでしょうか。もうひとつは、夫となるべき人はカソリックでなくてはならない、という部分です。殺戮者をも許すという行動に出た彼女が、キリスト教内でもさらにカソリックでなくてはパートナーにふさわしくないと考えていたというのは、この本が信仰の本であるゆえに、当然のことなのでしょうか。



 とはいえ、この本は読まれるべき本と言えるでしょう。