句会はおもしろい。
というか、毎回なにかその会の風味があるなあと。
今回は鹿児島県の知覧で特攻隊の記念館に行って、
その感慨を句にした人、その彼の言葉に共鳴、反応
して句が出来た人。沖縄慰霊の日、6月23日前後の
テレビなど見て、沖縄の人たちの痛みにともにふるえた
ところから句が出来たなど。
梅雨時期に戦さのきな臭さが漂っている世相を映して
いるんだろうか。
知覧聞きアリガトをくり返す母の声 鈴木英二
パリパリと非戦の誓いキューリ食む 宮地昌幸
梅雨明けとなおも晴れぬや礎(いしじ)哭く 大平達男
若夏の胸の痛みや今我に 大平照子
1945年の沖縄の地上戦で戦火を逃れようとした5歳の兄
と3歳の弟に砲弾が貫いた。
兄が生き延びて、弟が亡くなった。その弟の名が今年の
沖縄慰霊の日に、戦没者の礎に刻まれた。
そのニュースに深く感じてて、詠まれた。
「胸の痛み」の句に点と入れた大平さん、その「痛み」がどんな
ものかを熱く、熱く語った。
「それって、大平さんの句かい?」と聞いた。
「いや」一同大笑い。
「どなたの句?」と敏子さん。
「はーい」と大平照子さん。
大平さんの句は「礎(いしじ)哭く」のほう。
「75歳の翁が、沖縄戦の悲惨を思い返しても、思い返しても
楽にならない,ただの泣くじゃ、すまない、哭くだよな」
幼な子の寝息き確かめ青梅雨の 大平照子
梅雨といっても、明るい梅雨のイメージもあるんだね。
「青梅雨」というのは、明るい緑の梅雨の風情。
季節の抒情やこころを詠んだもの。
こころが和んだり、情景にほっこりしたり。
揚雲雀泣き虫駄々っ子和ませる 伊藤敏子
今日もまた新築許可乞う燕かな 伊藤敏子
青虫の家を剥がして出荷かな 今井亜子
田植えする子らの頬には泥の文字 余川彬夫
木登りの子に夏空の果てもなし 余川彬夫
梅雨晴れ間飽くなき探究小さき孫 宮地小浪
七夕の願いの中に人もよう 森原とし子
野の草に斜め雨すじ踊る様 辻屋哲男
長雨の晴れ間に泳げ白きシャツ 辻屋康子
いかにして天を掴むや蔓の先 宮地昌幸
その人の心情が色濃く表出していて、個性的な句もあった。
(これは、ぼくの勝手な分類)
葱坊主闇夜に光る仏かな 金治智計
花冷えや仲むつまじく遠い耳 金治智計
命日やほうほうホオタル飛んで来い 鈴木英二
紫陽花や一期一会に青さ増し 深田哲男
草取りて冷やしスイカやつかの間の 伊藤敏正
最後の句は「草取り」と「スイカ」が季語が重なっているという。
「冷たいスイカ」さぞかし、旨かったろうな、。
食べる句といったら、こんなのも。
スペシャルタコ飯うましやがて夏 栗屋 章
「タコ」と「夏」が季語が重なっているって、初めて聞いた。
句の説明を聞いて、「ああ、そういうことか!」とやっと分かる句。
英霊や言の葉欺瞞沖縄忌 中井正信
蛍来て消えず思いを照らすなり 中井正信
「英霊」というのは、特攻隊などで死んでいった人の一人ひとりの
気持ちはいろいろだっろう。それを、人くくりに「英霊」と呼んですませ
られるだろうか、ということらしい。
それなら、「英霊や」と止めちゃうと、それが伝わりにくいんじゃない?
次の句は「蛍来て消えぬ思いを照らすなり」のほうが、分かりいいかな。
「消えぬ思い」の深さについては、後日詳しく、聞かせてもらえるかな?
しばし、余韻ですぐに席を立つ人なし。