『悟浄出世』-新たな旅立ちの巻-
さていよいよ『悟浄出世』も最終回。どんな結末にあいなりますやら……。
悟浄が木叉恵岸の言葉(前回でご紹介)を聞いて、こんなことをとりとめもなく考えました。
――そういうことが起こりそうな者に、そういうことが起こり、そういうことが起こりそうな時に、そういうことが起こるんだな。――中略――今の夢の中の言葉だって、女禹や蚯髭鮎師(きゅうぜんねんし)の言葉と、ちっとも違ってやしないんだが、今夜はひどく身にこたえるのは、どうもへんだぞ。
しかし、なぜか知らないが、もしかすると、今の夢のお告げの唐僧とやらが、本当にここを通るかもしれないという気がしてしかたがない。そういうことが起こりそうなときには、そういうことがおこるものだというやつでな。……--
彼はそう思って久しぶりに微笑した。
その秋、果たして、大唐の玄奘法師と会い、その力で水から出て人間にとなりかわることができた。そうして、天真爛漫な孫悟空と、怠惰な楽天家猪悟能(猪八戒)とともに、新しい遍歴の途にのぼることとなった。
しかし、その途上でも、まだすっかりは昔の病の抜けきってきない悟浄は、依然として独り言の癖を止めなかった。彼はつぶやいた。
――どうもへんだな。どうも腑に落ちない。分からないことを強(し)いて尋ねようとしなくなることが、結局、分かったということなのか?どうも曖昧だな!あまり見事な脱皮ではないな!フン、フン、どうも、うまく納得がいかぬ。とにかく、以前ほど、苦にならなくなったのだけは、ありがたいが……--
※ ※ ※
ここから先は、みなさんご存じの西遊記。長い間、連続でお読みいただきました、中島敦著『悟浄出世』、これにて、読み終わりとさせていただきます。
悟浄が木叉恵岸の言葉(前回でご紹介)を聞いて、こんなことをとりとめもなく考えました。
――そういうことが起こりそうな者に、そういうことが起こり、そういうことが起こりそうな時に、そういうことが起こるんだな。――中略――今の夢の中の言葉だって、女禹や蚯髭鮎師(きゅうぜんねんし)の言葉と、ちっとも違ってやしないんだが、今夜はひどく身にこたえるのは、どうもへんだぞ。
しかし、なぜか知らないが、もしかすると、今の夢のお告げの唐僧とやらが、本当にここを通るかもしれないという気がしてしかたがない。そういうことが起こりそうなときには、そういうことがおこるものだというやつでな。……--
彼はそう思って久しぶりに微笑した。
その秋、果たして、大唐の玄奘法師と会い、その力で水から出て人間にとなりかわることができた。そうして、天真爛漫な孫悟空と、怠惰な楽天家猪悟能(猪八戒)とともに、新しい遍歴の途にのぼることとなった。
しかし、その途上でも、まだすっかりは昔の病の抜けきってきない悟浄は、依然として独り言の癖を止めなかった。彼はつぶやいた。
――どうもへんだな。どうも腑に落ちない。分からないことを強(し)いて尋ねようとしなくなることが、結局、分かったということなのか?どうも曖昧だな!あまり見事な脱皮ではないな!フン、フン、どうも、うまく納得がいかぬ。とにかく、以前ほど、苦にならなくなったのだけは、ありがたいが……--
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ここから先は、みなさんご存じの西遊記。長い間、連続でお読みいただきました、中島敦著『悟浄出世』、これにて、読み終わりとさせていただきます。
毎日、ぬける事無く更新して頂きありがとうございました。すべて印刷してとってあります。20数ページになりました。我が家の『悟浄出世』名取版
と題して本にしておきます。
長女は現代版西遊記(コミック)を持っているので、『悟浄出世』名取版を読んでいました。
子供って素直に受け止められるんですね。
この内容だって「空」なんだよと言ってました。
般若心経の内容が「空」というう事を私より先に知っていたのには、ビックリさせられました。
鬱病の初期と診断された友人と話をしていて、「物事をどうしてもネガティブな方向にとらえてしまう。」と言っていました。目の前で起こることは事象であって、意味を持っていないのよ。意味づけするのは自分の感情だから、とかなんとか話していて、「あれ?お経さんになんかあったなあ?無無明。。。」
いいたい放題イラスト、楽しみにしております。
ごんべいどうさん>すごい、お嬢さんに育てられました。母さん、えらい!
「言いたい放題」の更新は……管理会社の方にお任せしてありまして……連絡しておきます。でも担当の彼女、いま休暇中ダワサ……。
ruriさん>鬱は病気ですからねぇ。初期のうちに、健全な方向に向かわせてあげるといいですね。でもまず、お友だちの心情を「ああそうなんだね」と分かってあげることが大切なんだそうですね。隣で元気を差しあげてくださいませ。
読書好きな長女が色々なジャンルの本を読んで得た知識みたいです。
東京湾観音に私が閉じ込められた話覚えてますか?
その時父、母も含め家族中なんてひどい事をと話てたんですが、長女だけが「ある意味良い事なんじゃない」と言っていたんです。
和尚さんの本の冒頭に子供のような心で唱えてほしいと書いてあるように、子供って素直に受取れるんですね、子供に教えられる事たくさんあります。
般若心経を唱えるようになったのも、和尚さんの本と和尚さんとの出合いもこのブログとの出会いもすべて病が教えてくれた事。病に感謝はおかしいけど、このご縁に感謝しております。
という話を昨夜娘と話したんです。
そもあらんと思います。