風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

豪州産ワインを飲もう!

2020-12-05 00:43:36 | 時事放談
 12月2日付のFinacial Timesが、中国の「いじめ」に対抗して、「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」が、豪州との連帯を示すために、クリスマス・シーズンには地元の酒ではなく豪州産ワインを飲むよう呼びかけていることを報じた(https://www.ft.com/content/f95e1294-d93c-418c-afe3-1c23c2ea03c5)。直接には、中国が、エコノミック・ステイトクラフトの一環で、豪州産ワインに反ダンピング関税を適用する方針を決定したことと、戦狼外交官として知られる趙立堅・中国外務省報道官が、豪兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを突きつけているように見える偽の合成画像をツイッターに投稿したことに抗議するものだが、中国の人権問題やその他の政策を批判する国を個別に攻撃するために、中国が経済というハードパワー(economic muscle)に訴えることへの懸念が高まっていることを反映するものだとFinancial Timesは伝えている。なお、「対中政策に関する列国議会連盟The Inter-Parliamentary Alliance on China」とは、「中華人民共和国及びその執政政党たる中国共産党と、民主主義諸国間の交渉のあり方の改革を目的に、民主主義諸国の国会議員たちによって(天安門事件の20年目に合わせ今年6月4日に)設立された国際議員連盟」(Wikipedia)で、日本の中谷元氏と山尾志桜里氏をはじめ18ヶ国200名の国会議員が参加している。
 それにしても、中国のやることは、えげつない(苦笑)。豪州の牛肉、大麦、石炭、綿花、ロブスター、ワインへの制裁に続き、外交「非礼」である。中国は豪州にとって最大の貿易パートナーで、昨年の輸出入額はUS$185Bに達し、何より豪州は大国ではなく(人口は日本の五分の一)、中国にとってクリティカルな技術を(日本が持っているようには)豪州が持っていないことを見切っているのであろう。最近の中国は、リーマンショックで中国の投資によって世界を金融危機から救ったと自負し、新型コロナのパンデミックで世界のサプライチェーンを牛耳っていることに余程自信を持っているのだろう。外交において、慎みがなくなった。西欧ウェストファリア体制では大国も小国もなく、国連では一国一票の平等な扱いだが、中華文明圏では小国は大国に従うものというのが古代以来の伝統であるから、「韜光養晦」をかなぐり捨てて、本来の中華帝国に戻っただけのことではあろう。
 外交「非礼」ということで思い出されるのは、前回ブログでも触れた、王毅外相の訪日記者会見での尖閣領有権主張である。前回ブログに引用させて頂いた近藤大介氏は、このときの王毅外相は「パンダ外交」に転じていると評されたのは、10月下旬の5中全会を経た習近平政権は、折からの米中対立の下で、「戦狼内交とパンダ外交」、すなわち「内には厳しく、外には優しく」という方針に転換していると分析されるからで、それだけに、依然、豪州に厳しいのを訝しがっておられる。王毅外相訪日に話を戻すと、そもそも中国側から打診のあった訪日であり、当然、習近平国家主席の国賓来日についても話し合われたことだろう。そして恐らく、尖閣海域への侵入を繰り返す中国に対して、日本人の対中感情は極度に悪化しており、習近平国家主席を国賓として迎える雰囲気にはないというようなことを日本国政府は説明したことだろう。王毅外相は、それならと、尖閣の領有権主張は譲れない一線であることを、政府関係者だけでなく、記者会見を通して日本国民に向かって宣言したのではなかったか。近藤大介氏が指摘されるように物の言いは婉曲的で丁寧だったかも知れないが、日本国民への「威嚇」と捉えて構わないと思う。これは訪日目的を果たせなったであろう王毅外相にとって、中国共産党に対する言い訳であり、一種の自己弁護の予防線でもあっただろう。
 その後、香港では12月2日に、24歳の黄之鋒氏、23歳の周庭氏、26歳の林郎彦氏という三人の若者に対して、それぞれ13カ月半、10カ月、7カ月の実刑判決が下されて、衝撃が走った。たかが(と言っても中国共産党には許せないのだろうが)抗議の声を上げて、平和的なデモを行っただけのことである。黄氏と周氏が起訴内容を最終的に認めたのは、情状酌量を訴えるための苦渋の決断だったと言われる。もともと不法集会に関する罪は、前科の無いケースや学生などは罰金やボランティアなどが命じられるに留まっていたからだ(最近は量刑が重くなりつつあったようだが)。翌3日には、蘋果日報(アップル・デイリー)の創業者で、香港の民主化運動を支えてきた黎智英氏(71歳)が詐欺罪で起訴され、収監された。「パンダ外交」に転じた中国ではあるが、核心的利益では絶対に譲らないことは明らかである。
 中国は、「自由で開かれたインド太平洋」あるいは日・米・豪・印のクアッドが気に入らないから、法律戦(たとえば1日に施行された輸出管理法など)と情報戦と世論戦を仕掛けて、西側民主主義国の連帯を徹底的に潰しにかかるだろう。日本学術会議の報道を見る限り、日本のアカデミアはナイーブなことに、中国にかなり浸食されているようだし、大手左派メディアも既に手名付けられていることだろう。ここは私たち庶民が、豪州産ワインを飲んで、なんとしても抵抗しなければ・・・(笑)
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