風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ボストン美術館展・補遺

2012-05-20 23:17:39 | たまに文学・歴史・芸術も
 昨日、一つ触れ忘れたことがあります。何故、これほどの傑作がアメリカ・ボストンにあるのでしょうか。
 ボストン美術館は、作品保護の観点から作品の展示期間を厳しく制限しており、本展の開催にあたり、その出品作品のほとんどを、5年間にわたって公開を控えて準備をしてきた・・・と言います。確かに保存状態は大変良いし、ボストン美術館はそうした体制を敷いていることでも有名です。有難いことです。そして、今回、修復された未公開作品を含む、日本美術コレクションの名品約90点が厳選され里帰りを果たしました。海外に渡った日本美術を蘇らせ日本文化の理解を深めることは、友好関係の一層の発展を促すものと、好意的に説明されています。
 勿論、正確な事情は知りませんが、幕末・維新の混乱期に、幕府や藩や有力なパトロンから放出された傑作が、経済力で勝るアメリカに買収されてしまった、一種の文化的略奪の状況があったことは容易に想像されます。勿論、その芸術的価値を高く評価されたことは、確かに嬉しい。結局、いつの世も、どこにあっても、例えばルーブルや大英博物館にも多くの世界的なコレクションがあるように、芸術は経済力が囲ってしまう、そんな現実を見せつけられたような気がします。日本は、歴史上、植民地支配は受けませんでしたが、その社会が世界に開かれた時、狙われてしまった。全人類の財産であるという観点からすれば、散逸して人々の目から隠されてしまうより、また保存に配慮されることなく朽ち果ててしまうより、よほど有り難いことですが、日本人にとっては、やり切れない思いは残ります。
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