風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

米朝首脳会談の不調

2019-03-02 11:59:10 | 時事放談
 ベトナム・ハノイで行われていた鳴物入りの米朝首脳会談は不調に終わったようだ。
 金王朝では失敗は許されないので、国営メディアは、談笑する写真とともに両首脳が「難関を手を取り合って克服すれば、関係を画期的に発展させられるとの確信を表明した」などと、何のための会談だったのかよく分からない言い回しで成功を取り繕ったらしいが、トランプ大統領は率直で、会談自体は「とても良かった」としつつも、「双方とも(合意の)用意ができていなかった」と振り返ったという。
 もう少し詳しく見ると、金正恩委員長が、寧辺の核施設の一部閉鎖と引き換えに、(大量破壊兵器開発計画を直接の標的とする制裁を除き)基本的に国連安保理の経済制裁を“全面”解除するよう要求したのを、トランプ大統領は拒否したようだ。北朝鮮側の言い分では、寧辺の核施設廃棄と引き換えに国連制裁の“一部”を解除するよう“現実的”提案をしたということになるが、いずれにしても安倍首相がノーベル平和賞をエサに、それに値する成果を期待して“ピン止め”したことが、ちょっとは効いているかも知れない(笑)。
 詰まるところ、非核化の考え方の違いで、金王朝の安全保障をどう担保するかという点で、依然、双方の立場に溝があるような気がする。核・化学兵器やミサイルは貧者の兵器と言われ、北朝鮮のような最貧国でも超大国の大統領と交渉できるカードになり得るが、それを取り除いた後に残る北朝鮮の通常兵器システムは、兵士の数こそ多いが旧式で貧相でとても使い物にならないと想像される。なにしろ近代兵器システムはカネがかかるのだ。臆病者(と言っては失礼、慎重な)金王朝としては一気に核放棄に追い込まれないよう、これまで同様、“段階別・同時行動の原則”に従い、お互いに手持ちカードを1枚ずつきりながら歩み寄っていく交渉を望んだのだろうが、過去の失敗に学ぶアメリカ、とりわけ破天荒なトランプ大統領はそれを許さなかった。
 メディアからはトップダウン外交の限界と揶揄される。確かに金正恩委員長はそこに望みを託した可能性があるし(同時進行していたロシア疑惑を追及され、功を焦るかも知れないトランプ大統領の足元を見ていなかったわけはないだろう)、トランプ大統領は、今回こそ多少なりとも実務の積み上げによる常識的な外交交渉の努力をした形跡は見られるが、相変わらず対面で揺さぶりをかける不動産屋の交渉スタイルは崩していない。以下は私の妄想に過ぎないが・・・シリアにミサイルをぶち込み、アフガニスタンに爆弾を落とし、朝鮮半島に二つの空母打撃群を遊弋させて、予測不可能性を装うことで、深窓の令嬢ならぬ深窓の金王朝御曹司をビビらせて、交渉のテーブルに引き摺り出し、最初の交渉では、会合自体をいったんキャンセルして見せて、御曹司に未練があることを世間に晒させ、二度目の交渉では御曹司を「友人」と呼び、北朝鮮の「潜在力はすごい」と持ち上げ、気持ち悪いほどに友好ムードを演出しながら、いざ条件が合わなければ、さっさと交渉の席を蹴って、いずれの交渉でも、なんとなく御曹司に宿題を与えている・・・こうして見ると、「ディールの名手」を自負しながら、北朝鮮側の対応を読み切れなかった悔しさが感じられるとの報道があるが、全て織り込み済みの演技ではなかったかと思う。トランプ大統領を褒めるつもりはさらさらなく、超大国アメリカ大統領としては破格に品がなく、正直なところその一挙手一投足に対して格式ある大統領発言に対する分析と言うより下衆な野次馬根性でしか見ていないのだが(苦笑)、交渉のポジション取りは流石に手慣れたものと思わせ、これまでのところトランプ大統領のペースで進められる「トランプ劇場」は魅せてくれる。
 以前、ブログに書いたように、そして今回も露わになったように、国連安保理決議による北朝鮮制裁は現に効果が出ている。この点が実に重要で、北朝鮮を包囲したまま、じわりじわりと締め上げている限りにおいて、交渉に時間をかけることはトランプ大統領の側に味方する。まあ、そんな悠長なことを言っていると、北朝鮮による瀬取りやサイバー攻撃などの非合法活動が活発化するだけかも知れないが(笑)、米朝関係について、歴代の“普通の”大統領が手を拱いていたのは事実であり、“普通じゃない”トランプ大統領なら何かやってくれそうな仄かな予感があり、見守って行きたい。
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