風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

生活保護の問題

2012-05-30 23:53:30 | 時事放談
 お笑いの次長課長の河本準一さんは、年収5千万円も稼いでおきながら母親には生活保護を受けさせていると週刊誌に告発されたのは、どうやら「貰えるものは貰っておけ」などと周囲に公言していたためのようで、社会的な吊し上げを受けてしまいました。事業自得としか言いようがありませんが、だからと言ってこの一事を以てして、一事が万事と、したり顔で日本人のモラル云々を論ずるのはナンセンスですし、河本さん個人の品格をアゲツラうのも、元々それほど期待していたわけじゃなし、私たちだってそれほど胸を張れるわけじゃなし、むしろ品格なるもの、他人と比較するような使われ方をすることにこそ毀損される類いのものであり、取扱いには注意が必要です。
 河本さんは自業自得と言いながら、たかが個人的なことがオオゴトになってこれほど世間の耳目を集める事態に至ったのは却って気の毒とも言えますが、お陰で、弱者保護の大義名分のために切り込みにくかった問題にもメスが入る契機になったという点で、河本さんの貢献は大いに評価したいと思います。
 週刊誌やテレビの報道によると、約210万人、約4兆円にものぼる生活保護受給で、不正は10%以上にのぼると言われます。中には、名前を変えて仕事について、生活保護はいわば基本給、仕事の給与は残業代などと言って憚らない不埒な人もいれば、受給日にはパチンコ屋が混むなどとも噂されるなど、生活保護受給の認定が杜撰だった事実が次々に明らかになりました。銀行本店で本人口座を集約して照会することで銀行と合意・・・というような報道から、これまでは銀行口座の照会といっても、せいぜい近所の支店にしか手が及ばず、遠方の支店で口座を開設してしまえば財産を捕捉されなかったこと、結局、強制力ある実態調査が法的に担保されていなかった事実も明らかになりました。民法上は親族間の扶養義務が定められ、親族など扶養義務者による仕送りの可否などの調査が行われますが、絶縁状態の場合には援助を期待できませんし、離れて住んでいる場合は文書で(管内に住んでいれば実際に訪ねて)調査することになりますが、親族が立派な家に住んでいても「住宅ローンがあるから」「子供の教育にお金がかかるから」と断られることも少ないわけではないようです。
 こうした欧米を起源とするであろう社会保障制度の前提には、欧米的な自立・自律の精神があることを、私たちは思い起こすべきかも知れません。日本にあっても、当然のことながら自立・自律の精神を支援する制度設計に変えていく必要がありますが、それを実効あらしめるためには、先ずは私たち自身の意識改革が必要であるように思います。自分たちの文化から生まれ出た制度ならまだしも、借り物の制度に魂が入らなければ、どんどんおかしくなるばかりですから・・・
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