風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

マラソン世界最高記録

2013-10-02 00:28:24 | スポーツ・芸能好き
 一昨日のベルリン・マラソンで、ケニアのウィルソン・キプサングが2時間3分23秒の世界最高記録で優勝しました。従来の記録は、2年前の同大会で同じケニアのパトリック・マカウが出した2時間3分38秒で、15秒も更新したことになります。
 私が物心ついた頃、世界最高記録はデレク・クレイトンの持つ2時間8分33秒6で、1969年に打ち立てられてから1981年に同じオーストラリア人のロバート・ド・キャステラに破られるまで、1970年代を通して君臨し続けました。世界で初めてサブ・テン(2時間10分を切ったという意)を達成したランナーですが、その彼の黄金の記録は今では歴代315位にまで落ちてしまいました。隔世の感があります。何が起こったのでしょうか。
 言わずと知れた、アフリカ勢の台頭です。勿論、靴や栄養食に関する技術革新も影響なしとはしませんが(私が子供の頃は、裸足のアベベの影響でしょうか、運動会では競って裸足で走ったものでしたが、実に素朴と言いますか、長閑なものですね)、アフリカ勢の身体能力に比べれば微々たるものです。1988年にエチオピア人のべライン・デンシモが世界記録を樹立してから、一瞬、ブラジル人に譲ったことがありましたが、ほぼ一貫してケニア人とエチオピア人とモロッコ人(アメリカ国籍取得者を含む)が世界記録を独占して来ました。子供の頃から裸足で飛び跳ねるように日に何時間も歩くことに慣れた、身体能力に優れたアフリカ人が、マラソンに目覚めたということです。本日時点で、歴代100位の構成を見ると、ケニア人(63人)、エチオピア人(23人)、モロッコ人(4人)、フランス人/アメリカ人/日本人/ブラジル人(各2人)、ポルトガル人/南アフリカ人(各1人)となり、モロッコ生まれでフランスとアメリカ国籍取得者を補正すると、実に93%がアフリカ出身者となります。尋常ではありません。
 そんな中、日本人はなかなか健闘していると言えましょう。根性だけではない、身体的特徴もあるようです。
 マラソンの記録を伸ばすための生理学的な因子は、最大酸素摂取量、乳酸性作業閾値、ランニングエコノミーと言われます。この内、最大酸素摂取量はここ100年で頭打ちで伸びなくなっており、また乳酸性作業閾値はトレーニングによって高めることができ、乳酸を蓄積させずにより速いペースで走れるようになりますが、アフリカのランナーはいずれも特に高い数値ではなく、ランニングエコノミーが優れているのだそうです。ランニングエコノミーは言わば自動車の燃費性能に当たるもので、効率よく速く走る能力を指し、ランニングフォーム、筋繊維の組成、体重、膝から足首までの長さが影響するようです。そのため、ある研究者によると、2時間の壁を破る可能性があるのは、ランニングエコノミーに優れ、身体が小さく、高地で生活し、幼少期から活発であることが条件であり、最も合致するのは東アフリカのランナーとまで言われます。気温が高くなると、体重当たりの表面積が小さい大柄な選手は、熱が体にこもりやすいので不利なのだそうです。そういう意味で、身体が小さい日本人も、有利な部類に入るわけです。
 2時間、素人ならその倍の4時間近くも走り続けるのですから、ちょっとした差が積もり積もって大きな差になるのでしょう。これはこれで、気が遠くなるほど実に繊細な世界とは言えないでしょうか。
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