風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

昴になった谷村新司

2023-10-17 02:09:32 | スポーツ・芸能好き

 「昴になられましたね」とは、イルカさんの言葉。アリスのリーダーでシンガーソングライターの谷村新司さん(以下、敬愛を込めてチンペイと呼ぶ)が、今年3月に急性腸炎の手術を受けて療養を続けておられたが(とは不覚にも知らなかったが)、今月8日に亡くなっていたことが今日、事務所から発表された。葬儀は近親者のみで昨日、執り行われたという。享年74。

 戒名は「天昴院音薫法楽日新居士」で、「昴」の文字が入っている。事務所によると、「日本語の精神文化を大事に、歌詞を紡いできた」 「天にある星となって私達を照らし続けてくれる事だろう」との思いが込められているようだ。昨年、活動50年の節目を迎え、アリスの記念ライブ『ALICE GREAT 50(FIFTY)』を有明アリーナで開催し、ベーヤン、キンチャンと共に、ここからリスタートして10年続けようと目標を立てて、今年6月から全国ツアー「ALICE 10 YEARS 2023 ~PAGE1~」がスタートする予定だったが、延期が発表されていた。三人揃ってのツアーはもはや叶わぬ夢となってしまった。

 私にとっては、音楽界の巨星である。まさに、巨星、堕つ。学生時代、アリスのコピーバンドを組んで、大学一年の秋、サークル活動を共にしていた京都の某女子大の学園祭の舞台に恥ずかしげもなく立ち、チンペイとベーヤン役でそれぞれ「秋止符」と「南回帰線」を披露したのだった(今思うと若さとはなんと恥ずかしいことだろう)。

 更に遡ると、高校二年の修学旅行で芸能大会があり、陸上部だった私は何の因果か軽音の友人と即席バンドを組んで、「帰らざる日々」と「酒と泪と男と女」(大阪やな・・・)を歌い、芸能大賞を貰ってしまったのだった。勘違いはあの時、始まったのか・・・それはともかく、チンペイの歌声には、えも言われぬ艶があった。日本的な抒情あふれる歌詞を紡ぐ感性にも、多大なる影響を受けた。壮大な「陽」としてのイメージがある「昴」や「サライ」は国民的な楽曲として、これからも歌い継がれるだろうが、私はどちらかと言うと、青春時代の屈折した思いをぐっと吞み込み、強がる背中を見せるような「陰」の楽曲の数々に惹かれる。

 そんな声の艶と言い、歌詞を紡ぐ感性と言い、音楽活動だけではなく、ラジオのパーソナリティでも遺憾なく発揮された。噂では聞いていた文化放送の「セイ!ヤング」や「青春大通り」「青春キャンパス」は大阪まで電波が届かなかったが、高校生の頃、MBSの深夜放送「ヤングタウン」(1978~86年、金曜日)を聴きながらの「ながら族」で、ともすれば折れて潰れそうになる受験生の気持ちを支えて貰ったものだった。ばんばんと佐藤良子さんとの軽妙なトークは、大人のガキっぽさや悪戯っぽさに溢れて、成長期の人格に大いなる刺激を与えて頂いた。まっとうでなくなったのではなく、まっとうでないなりに生きる術を、元気を、与えて頂いたのではないかと思う・・・

 子供心に、素敵に年齢を重ねるお手本の最初は、チンペイだったように思う。その姿は、2018年にアリスの三人で復活した「ヤングタウン金曜日」(東京にいる私は、今やYouTubeで聴くことが出来る)でも変わるところはないが、もはや目に、耳に、することは出来なくなってしまった。盛者必衰の理を知りつつも、あって当たり前のものがなくなってしまう喪失感・・・しかし、チンペイの音楽は未来永劫、私たちの心の中に生き続ける。なんと幸せなことだろう。感謝をこめて、合唱。

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