風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

葬式の名人

2019-10-02 00:02:50 | たまに文学・歴史・芸術も
 大阪府茨木市の市制70周年記念事業の一環として、ふるさと納税とクラウド・ファンディングを活用し、川端康成の母校・大阪府立茨木高等学校(旧制茨木中学)を舞台に、川端康成の複数の作品をモチーフに制作したという、なかなかユニークな映画である。茨木市のホームページには次の様な宣伝文句がある。

(引用)
 茨木が生んだノーベル文学賞作家・川端康成の傑作を原案として、茨木を舞台とした青春群像コメディが制作されました。これは、
 ・茨木市が市制施行70周年であること
 ・文豪・川端康成の作品へのオマージュ
 ・府立茨木高等学校出身で本市ゆかりの映画脚本家
という3つの要素の巡りあわせにより得ることができた、本市のブランドメッセージ「次なる茨木へ。」を展開する絶好のチャンスと考えております。
(引用おわり)

 若くして天涯孤独ということでも川端康成をモチーフにした、両親や祖父のことで葬式慣れした主人公(前田敦子)が、期せずして高校卒業10年後に6人の同級生とともに「同窓会」ならぬ「同葬会」を母校で繰り広げるという、ちょっとシュールなドタバタ・ファンタジーだ。川端康成の作品へのオマージュということで私が気付いたのは、学生時代に読んで衝撃を受けた(!?)「片腕」という耽美的な小説だけだったが、あの小説では肩の丸みを愛でるのではなかったか・・・という意味では物足りないと言うよりも、やや浮世離れしたストーリー展開の中で、取って付けたような“転換”こそ見事と言うべきかも知れない。ほかにも、タイトルの『葬式の名人』をはじめ、『師の棺を肩に』、『バッタと鈴虫』、『十六歳の日記』、『古都』、『少年』、『化粧の天使達』などもモチーフとして使われる場面があるらしく、「ウォーリーを探せ」的な愉しみがありそうだ。
 見たところキャストやスタッフは豪華なのだが、上記も含めて、予算の都合と言うよりも、敢えて8ミリ的な味を狙った手作り感は、見る人によっては安っぽく、逆に凝り過ぎにも見えるというように、評価が分かれそうで、結果として通好みの作品に仕上がっているように思う。とにかく見終わって、なんとも楽しくとも懐かしくとも愛しくともほろ苦くとも不思議ともつかない奇妙な感覚に囚われることだけは間違いない(笑)
 実は私の母校のことなので見に行った次第だが、かれこれ30年以上訪れない間に、改築されて裏門が正門になっていたりして物珍しく、JR(当時は国鉄)で通っていた私には、ロケ地の阪急沿線は殆ど馴染みがなく、という意味で内輪受けにどっぷり浸ることも出来ずに、比較的冷静に見ていたのが、ちょっと寂しくもあった。私にとって懐かしいとすれば、部活帰りに、通称・前店(ゼンテン、正門前の駄菓子屋)でたまに飲むチェリオが美味かったことだが、正門が裏門になってしまったので、潰れてしまったと聞く。
 主役の前田敦子さんは女優さんらしくなった(と、しみじみ)。初めて挑戦したという大阪弁はいまひとつだったが(笑)、幼顔なので、回想シーンのセーラー服姿が良く似合う(笑)
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