保健福祉の現場から

感じるままに

新たな疫学調査要領で気になる9点

2021年11月30日 | Weblog
R3.10.1「今後の感染拡大に備えた新型コロナウイルス感染症に係る保健所体制の整備等について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000838790.pdf)の別紙1「新型コロナウイルス感染症に係る保健所体制の整備に関する今後の取組について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000838791.pdf)p2「① 陽性者への連絡の遅延(遅くとも陽性判明の翌日までに連絡できない場合)が生じないこと ② 積極的疫学調査の遅延(遅くとも発生届受理から翌々日までに積極的疫学調査ができない場合)が生じないこと」は、それだけ第5波で問題が大きかったのかもしれない。「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2559-cfeir/10800-covid19-02.html)(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)が出ているが、いくつか少々気になる点がある。第一に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p2「患者発生(特に重症者)が地域の医療体制を揺るがすほどの規模で発生する、あるいは発生が予期される場合には、強力に地域の社会活動を停止させ、ヒトーヒト感染の経路を絶つ、すなわちSocial distancing を実施する施策が社会全体で行われることがある。そのような施策を実施している状況下では、感染経路を大きく絶つ対策が行われているため、個々の対応を丁寧に行うクラスター対策は大きな効果を発揮しなくなる場合がある。こうした状況下では、対象の優先度を考慮し、いわゆる重点化など、効率的に積極的疫学調査を行うことが多い。」とあり、p7「調査の優先順位」を踏まえて、第5波では疫学調査が一部省略された地域が少なくないかもしれない。R3.8.13「感染拡大地域における陽性者の家族等への検査について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000819097.pdf)を踏まえて、保健所の疫学調査がなくても接触者に対する検査が行われる必要がある。第二に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p2「クラスター対策としての積極的疫学調査により、直接的には陽性者周囲の濃厚接触者の把握と適切な管理(健康観察と検査の実施)、間接的には当該陽性者に関連して感染伝播のリスクが高いと考えられた施設の休業や個人の活動の自粛の要請等の対応を実施することにより、次なるクラスターの連鎖は防がれ、感染を収束させることが出来る可能性が高まる。」について、そもそも聞き取りによる疫学調査には限界があることを認識したい。第三に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p3「新型コロナウイルス感染症を疑う症状(発熱、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、関節・筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐など)」について、「味覚や嗅覚の異常」が明記されていないのはおかしい。R2.5.8共同「味覚や嗅覚の異常は「軽い症状」に該当」(https://allnews02.x-day.tokyo/?p=115016)の「厚生労働省の担当者は、味覚や嗅覚の異常については専門家との検討により記載は見送った」とあり、厚労省「相談・受診の目安」(https://www.mhlw.go.jp/content/000628619.pdf)(https://www.mhlw.go.jp/content/000628620.pdf)には、いまだに「味覚や嗅覚の異常」が記されていない。R2.4.30Business Journal「加藤厚労相「4日間自宅待機は誤解」」(https://biz-journal.jp/2020/04/post_154931.html)も出ていたが、従来からの専門家・指導者の対応に不誠実さを感じる方が少なくないかもしれない。第四に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p4「2021年11月現在、ワクチン接種を受けた者の感染予防に関する免疫状態の評価については、国際的に知見の集積段階であり、厳密には困難。このため、必要な回数のワクチン接種を受けた者であっても、現時点では、原則的に濃厚接触者としての対応の変更は行わない。」について、R3.8.18「 医療従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について(改訂部分は下線部分)」(https://www.mhlw.go.jp/content/000819920.pdf)p1「新型コロナウイルスワクチンを2回接種済みで、2回目の接種後14日間経過した後に、新型コロナウイルス感染症患者と濃厚接触があり、濃厚接触者と認定された者」は、2週間の連日検査で行動制限が解除されるが、このエビデンスが確認できれば、医療従事者に限定せず、規制緩和できないものであろうか。第五に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p5「市民が新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターへ相談する流れについては、発熱等の症状が生じ、新型コロナウイルス感染症が心配な方は、かかりつけ医や地域の身近な医療機関へ電話相談を行う、あるいはかかりつけ医がいない場合、相談する医療機関に迷う場合、土日や夜間等かかりつけ医が休診の場合に発熱相談センター(地域によって名称が異なる。)へ電話相談を行うことが考えられる。自治体や医師会等のホームページも活用いただくほか、上述の地域の対応窓口の確認を促すことが重要である。」について、厚労省「受診・相談センター/診療・検査医療機関等」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-jyushinsoudancenter.html)で自治体ごとの設置数が出ているが、診療・検査医療機関リストは原則公開すべきと感じる。財政制度等審議会財政制度分科会(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/index.html)のR3.11.8「社会保障」(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20211108/01.pdf)(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20211108/02.pdf)について、R3.11.12Web医事新報「かかりつけ医の法制化などを改めて提言―財政審で財務省」(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=18414)で一部解説されている。「尾崎:大変ですが、われわれ開業医が積極的に診ていくことが、コロナ禍を乗り切る一つの道なのではないかと。発熱外来やワクチン接種をおこなっていない先生方もぜひコロナを診てもらいたい。」(https://dot.asahi.com/dot/2021102500031.html?page=4)は同感である。第六に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p6「原則として、無症状で経過する濃厚接触者は、初期スクリーニング以後は新型コロナウイルスの検査対象とはならない。」「無症状者を対象とした検査については、特に曝露のタイミングがはっきりしない場合においては、ウイルスが存在してもどのタイミングで検出出来るかは不明であり、検査陰性が感染を否定することにはならない。」について、状況によっては間隔を置いた2回検査が検討される場合があるかもしれない。第七に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p6「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかる「行政検査」の対象者は、新型コロナウイルス感染症の患者、疑似症患者、無症状病原体保有者のほか、当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者が含まれる。「当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者」は、濃厚接触者のほか、関連性が明らかでない患者が複数発生している、事前の情報から検査前確率が高いと考えられる、集団の特性から濃厚接触を生じやすいなど、クラスター連鎖が生じやすいと考えられる状況にある「特定の地域や集団、組織等に属する者」が含まれる。」について、行政検査対象を限定しすぎてはいけないであろう。R3.4.12NHK「厚労省 送別会参加の職員 新たに1人の新型コロナ感染確認」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210412/k10012970781000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_028)では「老健局は職員170人余りに対し、休日などを利用して自費でPCR検査を受けるよう呼びかけているということで、費用の一部は幹部職員のカンパで賄うとしています。」とあったが、厚労省の対応を真似る必要は全くない。第八に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p8「積極的疫学調査の対応者が調査対象者に対面調査を行う際は、サージカルマスクの着用及び適切な手洗いを行うことが必要と考えられる。」について、疫学調査は電話による聞き取り調査が一般的であろう。第九に、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)」(https://www.niid.go.jp/niid/images/cfeir/covid19/COVID19-02-211129.pdf)p9「「接触確認アプリ(COCOA)」とは、厚生労働省が開発したスマートフォンアプリケーションである。利用者本人の同意を前提にブルートゥースを利用して利用者がお互いにはわからない形で1メートル以内15分以上の近接を記録する。同アプリの利用者が患者(確定例)となった場合に、当該患者(確定例)の同意に基づいて同アプリに登録することで、当該患者(確定例)と接触した同アプリ利用者が通知を受け取ることができる。」について、「COCOA」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/cocoa_00138.html)は度々トラブルが発生しており、実際どれだけ役立っているのか、「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00294.html)での評価を期待したいところかもしれない。
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