DMMニュース「産科医を増やすために…崩壊寸前、周産期医療の現場を立て直し」(http://dmm-news.com/article/899730/)。<以下引用>
<【話の肖像画】内閣官房参与・吉村泰典氏〈平成19年に日本産科婦人科学会の理事長に就任して最初に取り組んだのは、崩壊しかけていた周産期医療の現場を立て直すことだった〉全国で周産期崩壊が起きていましたが、中でも20年10月に起きた東京都立墨東病院の妊婦受け入れ拒否事件の衝撃は大きかったと思います。激しい頭痛を訴え、かかりつけ医から救急搬送されることになった江東区の妊婦が、墨東病院をはじめ7つの病院に受け入れを断られたのです。最終的に墨東病院が受け入れたものの、妊婦は3日後に死亡しました。〈崩壊は何年も前から始まっていた〉16年に初期研修医が2年間の研修先を自由に選べる「初期臨床研修制度」が導入され、大学病院の医局から研修医が大幅に減りました。大学病院のみならず市中の病院でも、夜勤や当直が多い過酷な勤務体制に加え、訴訟を起こされるリスクも高い産科は、若い医師から敬遠されるようになってしまったのです。とはいえ、まさかその余波が首都を直撃するとは東京都も思っていなかったでしょう。都立病院でお産を主に扱っていたのは大塚、広尾、府中の3病院。これらの病院には大学の医局が医師を派遣していたのですが、医局員の減少に伴い人繰りがつかなくなったのです。驚いたのは東京都です。「都立病院でお産ができなくなったら大変だ。何とかしてくれないか」というのです。学会に頼めば何とかなると考えたのかもしれませんが、私は「東京には都立病院以外にも病院があるのだから、やむを得ないのではないか」と突き放したんですよ。〈学会の対応に驚いた都は、石原慎太郎知事(当時)との面談を申し入れてきた〉石原知事の対応は早かった。「医師の待遇を改善すればよいか」と、その場で給与アップや分娩(ぶんべん)手当などの導入を約束してくれました。何十年も変わらなかった都立病院の待遇が、たった30分の面談で変わったのです。舛添要一厚生労働相(当時)には、出産した際に健康保険から支給される出産育児一時金を4万円アップの42万円にしてもらいました。分娩費用の安い地方病院でも40万円程度の費用を取れるようになり、安い病院に妊婦が集中し、医師が忙しくなってやめていく悪循環は避けられたと思います。〈待遇改善だけでなく、医学生や研修医に産婦人科の魅力を伝えるサマースクールを開くなど、産科医を増やす活動も始めた〉これまで私たちは、医師が待遇改善、つまりお金を要求してはいけないと考えてきました。けれども、一連の活動で問題解決のためなら要求してよいのだと学んだ。加えて福島県立大野病院問題では、メディアに正しい情報を伝えることの大切さも学びました。理事長を務めた4年間は、包み隠さず伝えることが国民の理解を得るために重要と実感した4年間でもありました。>
健やか親子21(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000062884.html)の指標(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000062914.pdf)には、「妊産婦死亡率」「周産期死亡率」があるが、周産期医療体制の確立を位置付ける必要がある。平成21年の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」報告書(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/s0305-7.html)では「出生1万人対25~30床を当面の目標として、地域の実情に応じたNICU整備」が掲げられているが、それに見合うだけの人員確保が図られなければならない。不妊治療や妊婦高齢化等に伴って、周産期医療体制の充実は急務と感じる。日本産婦人科医会「産婦人科医師の勤務実態と将来ビジョン」(http://www.jaog.or.jp/all/document/81_141112.pdf)をみれば、状況は深刻なようである。医療計画(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html)では周産期医療は柱の一つであり、地域医療ビジョン(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=216011)でも重点的に協議されるべきであろう。今年3月20日の「新たな財政支援制度にかかる都道府県担当者会議」(http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226651633445)では、28番「産科・救急・小児等の不足している診療科の医師確保支援(産科医、救急医、新生児医療担当医等の確保を図るため、これらの医師の処遇改善に取り組む医療機関を支援する)」が例示されているが、先般内示された平成26年度地域医療介護総合確保基金(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000065773.html)では、周産期医療対策にどれほど取り組まれているであろうか。少子化対策の一環として、一定人口規模には出産取扱い医療機関が必要である。産科医は婦人科医でもあり、女性応援の政府方針(http://www.kantei.go.jp/jp/headline/kagayaku_women/)の観点からも産婦人科医の確保策は非常に重要と感じる。今回の報道のような待遇の改善、手厚い奨学金の地域枠・自治医大卒医の活用など、いろいろ考えられるであろう。
<【話の肖像画】内閣官房参与・吉村泰典氏〈平成19年に日本産科婦人科学会の理事長に就任して最初に取り組んだのは、崩壊しかけていた周産期医療の現場を立て直すことだった〉全国で周産期崩壊が起きていましたが、中でも20年10月に起きた東京都立墨東病院の妊婦受け入れ拒否事件の衝撃は大きかったと思います。激しい頭痛を訴え、かかりつけ医から救急搬送されることになった江東区の妊婦が、墨東病院をはじめ7つの病院に受け入れを断られたのです。最終的に墨東病院が受け入れたものの、妊婦は3日後に死亡しました。〈崩壊は何年も前から始まっていた〉16年に初期研修医が2年間の研修先を自由に選べる「初期臨床研修制度」が導入され、大学病院の医局から研修医が大幅に減りました。大学病院のみならず市中の病院でも、夜勤や当直が多い過酷な勤務体制に加え、訴訟を起こされるリスクも高い産科は、若い医師から敬遠されるようになってしまったのです。とはいえ、まさかその余波が首都を直撃するとは東京都も思っていなかったでしょう。都立病院でお産を主に扱っていたのは大塚、広尾、府中の3病院。これらの病院には大学の医局が医師を派遣していたのですが、医局員の減少に伴い人繰りがつかなくなったのです。驚いたのは東京都です。「都立病院でお産ができなくなったら大変だ。何とかしてくれないか」というのです。学会に頼めば何とかなると考えたのかもしれませんが、私は「東京には都立病院以外にも病院があるのだから、やむを得ないのではないか」と突き放したんですよ。〈学会の対応に驚いた都は、石原慎太郎知事(当時)との面談を申し入れてきた〉石原知事の対応は早かった。「医師の待遇を改善すればよいか」と、その場で給与アップや分娩(ぶんべん)手当などの導入を約束してくれました。何十年も変わらなかった都立病院の待遇が、たった30分の面談で変わったのです。舛添要一厚生労働相(当時)には、出産した際に健康保険から支給される出産育児一時金を4万円アップの42万円にしてもらいました。分娩費用の安い地方病院でも40万円程度の費用を取れるようになり、安い病院に妊婦が集中し、医師が忙しくなってやめていく悪循環は避けられたと思います。〈待遇改善だけでなく、医学生や研修医に産婦人科の魅力を伝えるサマースクールを開くなど、産科医を増やす活動も始めた〉これまで私たちは、医師が待遇改善、つまりお金を要求してはいけないと考えてきました。けれども、一連の活動で問題解決のためなら要求してよいのだと学んだ。加えて福島県立大野病院問題では、メディアに正しい情報を伝えることの大切さも学びました。理事長を務めた4年間は、包み隠さず伝えることが国民の理解を得るために重要と実感した4年間でもありました。>
健やか親子21(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000062884.html)の指標(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000062914.pdf)には、「妊産婦死亡率」「周産期死亡率」があるが、周産期医療体制の確立を位置付ける必要がある。平成21年の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」報告書(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/s0305-7.html)では「出生1万人対25~30床を当面の目標として、地域の実情に応じたNICU整備」が掲げられているが、それに見合うだけの人員確保が図られなければならない。不妊治療や妊婦高齢化等に伴って、周産期医療体制の充実は急務と感じる。日本産婦人科医会「産婦人科医師の勤務実態と将来ビジョン」(http://www.jaog.or.jp/all/document/81_141112.pdf)をみれば、状況は深刻なようである。医療計画(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html)では周産期医療は柱の一つであり、地域医療ビジョン(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=216011)でも重点的に協議されるべきであろう。今年3月20日の「新たな財政支援制度にかかる都道府県担当者会議」(http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226651633445)では、28番「産科・救急・小児等の不足している診療科の医師確保支援(産科医、救急医、新生児医療担当医等の確保を図るため、これらの医師の処遇改善に取り組む医療機関を支援する)」が例示されているが、先般内示された平成26年度地域医療介護総合確保基金(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000065773.html)では、周産期医療対策にどれほど取り組まれているであろうか。少子化対策の一環として、一定人口規模には出産取扱い医療機関が必要である。産科医は婦人科医でもあり、女性応援の政府方針(http://www.kantei.go.jp/jp/headline/kagayaku_women/)の観点からも産婦人科医の確保策は非常に重要と感じる。今回の報道のような待遇の改善、手厚い奨学金の地域枠・自治医大卒医の活用など、いろいろ考えられるであろう。