保健福祉の現場から

感じるままに

院内感染と施設内感染

2014年11月10日 | Weblog
キャリアブレイン「5種類の多剤耐性菌、院内感染対策を強化へ- 厚労省、アウトブレイク見直しでパブコメ 」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/44207.html)。<以下引用>
<複数の菌種による院内感染が相次いでいることを受け、厚生労働省は、5類感染症に新たに定められたカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)など5種類の多剤耐性菌による院内感染の対応手順などを見直すことを決め、10日からパブリックコメントの募集を始めた。これまで4週間に3例以上発生した場合にアウトブレイクの対応を求めていたが、CREなどについては1例目の発見で「厳重に感染対策を実施する」としている。募集期間は12月9日まで。厚労省が2011年に出した院内感染対策に関する通知では、同じ病棟での同一菌種に加え、同じ医療機関でも4週間以内に、同一菌株と思われる感染症が3例以上発生した場合、院内感染対策委員会や感染制御チームによる会議を開き、1週間以内を目安にアウトブレイクに対する院内感染対策を策定し、実施することを求めていた。しかし、今年3月に明らかになった、CREの一種であるメタロβラクタマーゼ産生菌による院内感染のアウトブレイク事例では、国立感染症研究所などの調査によって、自律的に増殖する遺伝因子プラスミドによる伝播があったことが判明。プラスミドによる伝播では、原因の菌種が複数にまたがる可能性があるため、適切なアウトブレイクの判断や院内感染対策の徹底を求める意見が出ていた。厚労省は12月中旬に都道府県に対し、アウトブレイクの考え方や対応などを盛り込んだ新たな通知を出す予定。従来の院内感染対策の実施基準に加え、CREやバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)や多剤耐性緑膿菌(MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性アシネトバクター属の5種類の多剤耐性菌については、「保菌も含めて1例目の発見をもって、アウトブレイクに準じて厳重に感染対策を実施する」と記載する方針だ。>

「医療機関における院内感染対策について(案)に関する意見の募集について」(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140293&Mode=0)が出ている。平成26年度診療報酬改定(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032996.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000037464.pdf)p191にあるように、感染防止対策加算1ではJANISへの参加が必須になり、参加医療機関(https://www.nih-janis.jp/hospitallist/index.html)は増えるであろう。感染防止対策加算2でも重症患者の診療にあたる医療機関が多く、加算2のJANISへの積極的参加が必要と感じる。さて、院内感染対策にかかる指導は、医療法第25条1項に基づく立入検査でも重点事項であり、3年前の通知「医療機関等における院内感染対策について」(http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110620G0010.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_2.pdf)が出ている。通知(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_2.pdf)では、地方自治体の役割として「地方自治体はそれぞれの地域の実状に合わせて、地域における院内感染対策のためのネットワークを整備し、積極的に支援すること」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_2.pdf)とある。厚労省作成図(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_4.pdf)でも保健所が地域におけるネットワークを支援することになっていることは認識したい。しかし、院内感染以上に気になるのは施設内感染である。例えば、改訂「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/tp0628-1/)、「結核院内(施設内)感染予防の手引き(平成26年版)」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000046630.pdf)、改訂「インフルエンザ施設内感染予防の手引き」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/tebiki.pdf)、「保育園サーベイランス」導入のための自治体向け手引書(http://www.syndromic-surveillance.net/hoikuen/tebiki/hoikuen_surveillance_lg_tebiki.pdf)、「(改訂版)保育所における感染症対策ガイドライン」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku02.pdf)は周知徹底しておきたい。
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医療介護連携の行政の役割

2014年11月10日 | Weblog
朝日新聞「企画特集 2【医療・介護 最前線】行政・医師の連携重要」(http://www.asahi.com/area/kanagawa/articles/MTW20141107150160001.html)。<以下引用>
<高齢者が、病状の悪化などを機に通院できなくなり、必要な介護も受けられぬまま自宅で人知れず寝たきりとなる。急速な高齢化で起こる様々な問題に対し、国は医療、介護、生活支援などを地域で担う「地域包括ケアシステム」の整備を自治体に促す。システムの核となるのは医療と介護の連携だ。連携が進む平塚市の取り組みをみた。平塚市岡崎地区は人口1万の農村地域で、医院が集まる駅から離れている。ここで内科医院を開業する久保田毅医師(55)は外来診療とともに、146人の訪問診療も担う。最近1年で32人を在宅で看取(み・と)った。10月下旬、訪問診療に同行した。外来の合間の4時間、久保田さんは車を運転し、家々を巡った。この日、訪ねた11人の半数以上は、元々は医療や介護を満足に受けられなくなり、久保田さんや地域包括支援センターに駆け込んできた人だった。「調子いいですか?」。久保田さんが聞くと、90代の男性患者は「はい」と笑顔を見せた。男性は2年前、認知症が進み歩けなくなった。かかりつけ医に通うこともできず、往診もない。発熱や床ずれが出て、家族が久保田医院に相談にきた。男性は、介護サービスを全く利用していなかった。久保田さんは往診初日に、地元のセンターに連絡した。センター職員は即日、訪ねて介護保険を申請し、暫定利用も開始。家にはその日のうちに介護ベッドが届いた。男性はやがてデイサービスの利用も受け入れ、妻には買い物へ出かける余裕ができた。80代の女性患者宅では、娘が「食べられるまでになり、顔色もよくなって、ありがたいです」と喜んだ。女性は今年5月に衰弱して動けなくなり、家族から相談を受けたセンターが久保田さんを紹介した。国は地域包括ケアシステムを「住み慣れた地域で必要な医療・介護サービスを利用して自分らしく暮らし続けられる体制」と説明する。サービスを受けられないでいる人を見つけ出すことは大きな課題だ。医療や介護の従事者の関係が深ければ、発見し、ケアを始めやすくなる。久保田さんは、病院勤務時代、在宅医が少なく住民が困っている様子を知り、9年前に開業した。半径3キロを目安に、24時間往診に対応する。「国が描いた包括ケアに、地域でどう魂を入れるか。連携の要であるセンターなど行政の仕事を医師は尊重し、自ら支えることです。平塚は市と医師会の協力関係があり進めやすかった」と語る。市医師会は昨年3月、各医院の同意を得て、在宅や外来の診療内容の統一データを冊子にまとめた。訪問、往診、24時間、認知症など20項目以上がわかる。昨年度には「地域包括サポート医」を設け、名乗り出た49医師で、地域包括支援センターごとの8地区全てをカバー。各自が訪問診療や看取りを担うなどして地域を支える。岡崎地区を管轄するセンターの高野信一主任ケアマネジャーは「スタッフは限られ、センターの業務に限界もある。医師の連絡で支援が必要な人の把握が増え、医院データは相談者の対応に非常に役立ちます」。以前はセンターを知らない医師もいたが、ケアマネが説明に回り、理解が深まっているという。市高齢福祉課の鎌田安之課長代理は「医療と介護の連携が動き出した。さらに、生活支援など多職種の間で顔の見える関係を作りたい」と話す。センターの人手不足、民生委員の過重労働など、課題は幅広い。■高齢化加速予測で県本腰 国は2025年をめどに高齢者への「医療・介護・予防・生活支援・住まい」が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の実現を目指す。そのための制度を改革する地域医療・介護推進法が先月から順次施行され、診療報酬改定も進む。取り組むのは地方自治体。例えば市町村は在宅医療と介護の連携分野で、来年度から3年の間に国が示す8事業(24時間の提供体制構築など)の実施を求められる。神奈川県は高齢化率が比較的低かったが、今後は都市部で高齢化が加速すると予測され、県高齢社会課は「地域包括ケアシステムはより重要で、早めに運用していく必要がある」とする。■「望まぬ住宅」の現実に目を 記者のひと言 地域包括ケアシステムづくりは国策だが概念が先立ち、わかりにくい。久保田医師は「住み慣れた家や地域で高齢者を穏やかにお看取(み・と)りできた状況」と例える。幸せな在宅診療の形がある一方で、「望まぬ在宅」も厳然とある。困窮から施設を使えぬまま老老介護が疲弊したり、子らが世話を拒否し独居を強いられたり。時に悲しい事件にも至る。そうならぬよう、幅広い関係者の「連携」が求められている。>

これからの在宅医療は、在宅診療を行う医療機関だけでは進まない。①退院前からの医療介護連携、②多職種(ケアマネ、看護、介護、リハビリ、薬剤、歯科等)によるチーム、③複数医師(主治医・副主治医)、④緊急時に受け入れる病院、⑤タイムリーな情報共有、⑥地域住民の理解などのシステムがなければならない。介護保険の地域支援事業実施要綱改正案の在宅医療・介護の連携推進業務(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000061024.pdf)では、(ア)地域の医療・介護サービス資源の把握、(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応の協議、(ウ)在宅医療・介護連携支援センター(仮称)の運営、(エ)在宅医療・介護サービスの情報の共有支援、(オ)在宅医療・介護関係者の研修、(カ)24時間365日の在宅医療・介護サービス提供体制の構築、(キ)地域住民への普及啓発、(ク)二次医療圏内・関係市区町村の連携の8業務が示され、現在、各自治体で策定中の第6期介護保険事業計画(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000052532.pdf)でも打ち出されるであろう。「在宅医療提供状況・医療介護連携状況の評価」「経営母体の異なる様々な機関による協議や研修」「住民への普及啓発」「ICT等による情報共有」など、行政側に期待される役割は大きいであろう。しかし、「退院前からの医療介護連携」は市町村完結とは限らない。平成26年度診療報酬改定(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000032996.html)の概要資料(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039378.pdf)p9~10で示されるように、急性期・回復期を含む在宅医療・介護連携である。厚労省が示す8業務の中で「(ク)二次医療圏内・関係市区町村の連携」には県や保健所の関わりが極めて重要になるであろう。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/siryou1_1.pdf)p11~13にある「都道府県医療介護連携調整実証事業」は現在9府県で行われ、病院ネットワーク+ケアマネネットワーク+病院・ケアマネ協議によって、適切な退院支援を行い、要支援・要介護の入院者をケアマネにつなぐよう図られている。この事業は圏域単位での医療介護連携を推進するモデルとなるように感じる。なお、今年10月からの病床機能報告(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html)の報告項目(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000058910.pdf)として、担う役割「急性期後の支援・在宅復帰への支援」の項目で診療報酬の「退院調整加算」「介護支援連携指導料」「退院時共同指導料」「地域連携診療計画退院時指導料」等がある。それらの指標は、すでに医政局「医療計画作成支援データブック」(http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=141464&name=2r98520000036flz.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000036854.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000036855.pdf)のNDB分析でも医療圏別に出ており、医療介護連携の評価指標として、活用すべきであろう。行政は「何でも市町村」ではいけない。
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