千歳山の山道は、小国の大境山にも増して、秋の風情を感じさせる。ツツジの返り花が咲く傍らに、ガマズミの赤い実や紅葉が見られた。昨年の小又峡でも紅葉に少し早かったが、ここのところの暑い9月が季節をやや遅らせているようだ。しかし、秋の日は確実に短くなっている。3時ころの千歳山は、日は高く、山道の奥の方まで日がさし込んでいたが、3時半を過ぎる頃、斜光は早くも日没を予告するするように弱々しくなった。
夜は虫のおとろへしるし九月尽 相馬遷子
山里には栗の実が売り出され、やがて夜には名月も見られる。この季節になると、国上山の一人暮らしの草庵で、行く秋を惜しんだ良寛のことが偲ばれる。良寛の寂寥を慰めようようと、酒と肴を携えて友人が草庵を訪れる。「うま酒にさかなしあれば明日もまた君が庵をたづねても来む」と歌づくりのうちに過ごす楽しい宵は、釣瓶落としに暗くなっていく。
もう庵には火が欲しいころだ。楽しい宵は友人を早く帰したくもない。いましばし、この庵のとどまって欲しいという思いから名歌が生まれた。
月よみの光りをまちてかへりませ
山路は栗のいがの多きに 良寛
折しも、その夜は仲秋の名月であったらしい。栗のいがを踏まぬことに加え、この秋一番の満月を見ながら、夜道を帰ることを友に勧めたものだ。
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