花の季節、珍しい花を咲かせる木が2本ある。近所のお宅の庭にあるキングサリと芸工大の近くにあるマロニエだ。2本とも散歩の途中で見つけ、気になってグーグルレンズで検索したもだ。さほど大きな木ではないが、今年は花が早いので気になっていた。キングサリの方は咲き始めで、花を見るには十分間に合った。芸工大の方は少し遠いので、天候が崩れないうちにと、意を決して歩いた。マロニエは遠くから、花が咲いているのが分かった。近づてみると、花が散り始めている。少し時期がずれてしまうと、花を見ることができなかったかも知れない。この2本しかあるところを知らないので、見逃せば来年の開花の時期まで待つほかはない。
花木は散歩していて無数にある。それぞれ、手入れする人がいて、大事にされて美しい花を咲かせる。自分は通りがかりで、木と人のつながりから生まれる花を見る至福を味わわせてもらっている。自分で、その木を検索して、キングサリやマロニエの木を知って5年、木が元気でいるか気になるようになった。木とそんな知遇を得たことは幸運と言わねばならない。
永井荷風の『フランス物語』に「橡の落葉」という小品がある。そのなかで、パリの並木のマロニエについて語られている。
「市街を飾るべき並木の植物としては、これに優りたるもの無しとせらる。ああ、われは如何にこのマロニエを愛せしか。わがフランスに於ける、忘れ難き記念は一つとしてこのマロニエの木陰に造られざるはなし。われの詩を読み夢に耽りし処はこの木陰なりき。」
荷風のフランスでの思い出は、マロニエの並木とともにある。リラの花、キングサリ、マロニエ。どの花にも、西洋の香りがまとわりついている。
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