爆弾低気圧の記憶も去らないうちに、今度は竜巻の猛威である。
5月6日、日本の上空には季節外れの寒気が入り込み、大気が不安定となり、雹が降り、落雷が発生、そして茨城県つくば市などでは竜巻が発生した。1人が死亡、1500棟もの建物に倒壊などの被害がでた。
竜巻の本場といえばアメリカだ。年間の発生数は1000件以上、世界中で起きる竜巻の7割がアメリカで起きている。ちなみに日本での年間発生数は20件程度であるという。
その本場アメリカの竜巻でこんなことが起きた。
1962年5月9日、アイオワ州を竜巻がおそった。愛称ファウンという雌牛がこの竜巻に巻き込まれて空高く舞い上がった。奇跡的にファウンは1キロほど離れた牧場に無事着陸した。この牧場には、雄のホルスタインがいてめでたくというか、偶然というか、結ばれた。やがて自分の牧場に連れもどされたファウンは、とき満ちてみごとな子牛を生んだ。
話はこれだけでは終わらない。それから5年後、ふたたびこの地方を竜巻がおそった。こともあろうにファウンはまたも竜巻に巻き込まれ、衆人が見ているなか数10mの高さで飛ばされた。だが、そのときもファウンは4本の足をそろえて無事に着陸した。
さすがに、飼い主は暴風警報が出るたびにファウンを牛舎に閉じ込め、再び飛ばされることのないように注意した。ファウンはその後10年平和に生き、1974年冬に死んだ。
異常気象が日本に竜巻を発生させているのではという感想を持っていた。しかし、平清盛の時代、今から800年ほど前に辻風として、竜巻の記述がある。治承4年卯月、陰暦4月であるからいまの5月であろう。このときおきた辻風は京都の京極から六条へかけて吹き抜けた。その惨状が微細に書かれている。
さながら平に倒れたるもあり、桁、柱ばかり残れるもあり。門を吹きはなちて、四、五町がほかに置き、また垣を吹きはらひて、隣とひとつになせり。いはんや、家の内の資材、数をつくして空にあり、檜皮、葺板のたぐひ、冬の木の葉の風にみだるるがごとし。塵を煙のごとく吹きたてれば、すべて目も見えず、おびただしくなりとよむほどに、もの言ふ声もきこえず。(方丈記・治承の旋風)
竜巻は上空に流れ込んだ寒気と低層の暖かい空気との温度差が大きいと空気の入れ替わりが激しく、強い上昇気流や下降気流を発生させて渦ができ、風向き、速さなどの条件が加わって発生するらしい。そして竜巻と同時に発生する雷もこわい。かぎ形の火柱が、黒雲から地上へ走り落ちると、その先に落雷の被害がある。