彼のプロポーズを受けることにした彼女。いよいよ、彼のご両親(りょうしん)に挨拶(あいさつ)に行くことに…。彼の家は名家(めいか)とは聞いていたが、彼の実家(じっか)の前まで来て彼女は足がすくんでしまった。思ってた以上(いじょう)に立派(りっぱ)なお屋敷(やしき)…。彼女は思った。あたしで大丈夫(だいじょうぶ)なの?
彼によると、おばあさまが気に入ってくれれば問題(もんだい)ないと。彼の家族(かぞく)が揃(そろ)っている広い座敷(ざしき)に入ると、大勢(おおぜい)の人が座(すわ)っていた。みんな、一斉(いっせい)に彼女の方を見た。彼女は思わず身体(からだ)をこわばらせた。これ、みんな家族なの? 多すぎだよ。
彼女は、彼の方を見た。彼は、どんどん行ってしまう。彼女は慌(あわ)てて追(お)いつこうとして、足がもつれて倒(たお)れ込んでしまった。これは、痛恨(つうこん)のミスだ。周(まわ)りからクスクスと笑(わら)う声や、ひそひそと何かささやき合っている声が聞こえた。
上座(かみざ)から声がして、一瞬(いっしゅん)で静(しず)かになった。おばあさまの一声だ。彼が助(たす)けに来てくれて、彼女はようやく座ることができた。挨拶がすむと、おばあさまが言った。
「この人が、お前の花嫁候補(はなよめこうほ)なのかい? ずいぶんと、あれだねぇ」
彼女は思った。あれってなに? それに、花嫁候補って…。彼女は、彼の方を見て訴(うった)えた。他(ほか)にも候補がいるのかい? いったいどうなってるのよ。
彼は首(くび)を傾(かし)げるばかり。おばあさまが声を上げた。「じゃあ、一週間後に試験(しけん)を行う。家事全般(かじぜんぱん)と礼儀作法(れいぎさほう)の試験だ。この家にふさわしい嫁(よめ)か見極(みきわ)める」
彼女は思った。そんなのムリ…。あたし、料理(りょうり)なんてできないし、礼儀作法ってなに?
<つぶやき>これは、とんでもないことになってしまいました。彼女は結婚(けっこん)できるのか?
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