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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1357「愛車」

2023-02-11 17:25:33 | ブログ短編

 彼は彼女と一緒(いっしょ)に郊外(こうがい)にある巨大(きょだい)アウトレットへお買い物にやって来た。今日は何か楽(たの)しいことでもあるのか、二人はウキウキとしているようだ。車(くるま)を駐車場(ちゅうしゃじょう)に停(と)めると、二人はおしゃべりをしながら店内(てんない)へ向かった。
 買い物を終(お)えて店を出ると、彼は首(くび)を傾(かし)げて呟(つぶや)いた。「車…、どこに停めたんだっけ?」
 彼女は呆(あき)れて、「なに言ってるのよ。それぐらい覚(おぼ)えてないの?」
「だって、話に夢中(むちゅう)になってて…。君(きみ)、どこだったか覚えてないかい?」
「あたしに聞かないでよ。ここ、初めて来たところだから分かんないわ」
 何しろ広い駐車場が三つもある。彼はキョロキョロ見回(みまわ)して、この辺(あた)りと思う方へ行ってみた。だが、そこにあったのは…。見渡(みわた)す限(かぎ)り、彼の愛車(あいしゃ)と同じ車種(しゃしゅ)、同じ色の車がずらりと並(なら)んでいた。彼は途方(とほう)に暮(く)れたように、
「これ…、どういうことだ? 俺(おれ)の車…、どこにあるんだよ」
 彼女は明(あき)らかに不機嫌(ふきげん)になっていた。彼は彼女をなだめて言った。「この辺りだと思うんだ。一緒に探(さが)せば、すぐに見つかるから…。頼(たの)むよ」
 彼女から笑顔(えがお)が消(き)えていた。車がなくては帰(かえ)れない。しぶしぶ一緒に探すことに…。
 二時間後。彼の車は別(べつ)の駐車場で見つかった。帰りの車の中、彼女は一言もしゃべらなかった。気まずい雰囲気(ふんいき)に、彼は押(お)し潰(つぶ)されそうになっていた。
<つぶやき>こんなこと、ありませんか? 彼も悪気(わるぎ)はないんです。許(ゆる)してあげて下さい。
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