みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1219「来訪者」

2022-03-20 17:36:29 | ブログ短編

 彼女は、先輩(せんぱい)を前にしてもじもじしていたが、意(い)を決(け)してか細(ぼそ)い声で言った。
「あ、あの…。あたし、先輩のこと…。ずっと…ずっと――」
 先輩は彼女の言葉(ことば)をさえぎるように、
「これって、告白(こくはく)って感じのやつですか?」
 彼女はこの言葉に気力(きりょく)をなくしてしまった。それでも彼女は思い切って、
「あたし、先輩のこと、好(す)きです。でも、他(ほか)に付き合ってる人とか、いるなら…」
 先輩は首(くび)をかしげて、「僕(ぼく)は、誰(だれ)とも付き合ってないけど…。ごめんなさい」
「どうして…、あたしじゃダメなんですか? あたしの、どこがいけないんですか?」
 先輩は困(こま)った顔をして、「君(きみ)がダメというわけじゃないんだ。つまりね…」
「あたしのこと、恋愛(れんあい)の対象(たいしょう)にならないってことですか? あたし、そんなに魅力(みりょく)が…」
「だから、そういうことじゃないんだよ。もっと、根本的(こんぽんてき)な問題(もんだい)なんだ」
「えっ…、分かんないです。はっきり言ってください。その方が…」
「分かった。じゃあ、君だけに告白するけど、僕は地球人(ちきゅうじん)じゃないんだ。だから君とは…」
「ひどい…」彼女は涙声(なみだごえ)になり、「こんな時に、そんな冗談(じょうだん)で誤魔化(ごまか)すなんて――」
 彼女は、涙をぬぐいながら走り去ってしまった。残(のこ)された先輩は、何を思ったのか、鞄(かばん)から古いファッション雑誌(ざっし)を取り出して呟(つぶや)いた。
「これを参考(さんこう)にしたのがまずかったのか? どうやら、この容姿(ようし)は目立(めだ)ちすぎてるようだ」
<つぶやき>まさか、本当(ほんと)に異星人(いせいじん)だったのか? こっそり私たちを観察(かんさつ)してたんですね。
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