人形(ひとがた)は次々(つぎつぎ)に湧(わ)き出てくる。そして神崎(かんざき)つくねと眠(ねむ)ったままの水木涼(みずきりょう)に近づいて来た。つくねはそばに落ちていた棍棒(こんぼう)を拾(ひろ)い上げて投(な)げつける。棍棒は人形に突(つ)き刺(さ)さったが何のダメージも与(あた)えられなかった。それどころか、棍棒は人形に呑(の)み込まれていった。
つくねは涼を抱(だ)き起こして、アキの近くへ飛(と)んだ。そして柊(ひいらぎ)あずみに叫(さけ)んだ。
「先生(せんせい)! こいつらに触(ふ)れたら取(と)り込まれるかも。こっちは任(まか)せて、早く行って!」
あずみは返事(へんじ)を返(かえ)すと、貴志(たかし)とともにその場を離(はな)れた。つくねはどうしたものかと考えた。アキは日野(ひの)あまりを救(すく)おうと能力(ちから)を注(そそ)ぎ込んでいる。あたし一人で何ができるの?
その時だ。川相初音(かわいはつね)と琴音(ことね)が姿(すがた)を現した。ちょうど人形の目の前に――。
つくねが叫んだ。「逃(に)げて!」
琴音はすぐに宙(ちゅう)に舞(ま)い上がったが、初音は壁(かべ)を作るのが精一杯(せいいっぱい)だった。しかし人形はその壁を少しずつ浸食(しんしょく)していく。初音の能力(ちから)を吸(す)い取っているように。初音は叫んだ。
「どうなってるのよ! こいつら何者(なにもの)なの?」
「分かんないよ」つくねが答(こた)えた。「そいつらに触れると逃げられなくなるわ。飛んで!」
初音は飛ぼうとしたがダメだった。なぜか能力(ちから)を使うことができなくなっていた。壁はどんどん薄(うす)くなっていく。琴音が助(たす)けに向(む)かおうとするのを初音は止めて言った。
「来ちゃだめ! あなたには何もできないでしょ。ここは、何とかするから…」
<つぶやき>いったい何が起きているのか…。人形を止めることはできるのでしょうか?
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