みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1470「不思議な本屋」

2024-09-04 17:10:01 | ブログ短編

 家の近くに新しい本屋(ほんや)が開店(かいてん)したときのこと。今どき珍(めずら)しいと思ったので入ってみた。
 店内(てんない)はすごく狭(せま)く、棚(たな)に並(なら)ぶ本の数(かず)もごくわずかしかなかった。でも、見ていくうちに、どの本も自分(じぶん)の興味(きょうみ)をそそるようなものばかりだと気がついた。読(よ)みたいと思って読めずにいた本や、好(す)きな作家(さっか)の作品(さくひん)、それに何だかわくわくするような表紙(ひょうし)の本――。
 何だこの本屋は…。まるで、自分のために選(えら)ばれ、並べられたと錯覚(さっかく)してしまう。何だか嬉(うれ)しくなって、何冊(なんさつ)かの本を手に取るとレジに向かった。
 でも、レジがどこにもない。普通(ふつう)なら出入口(でいりぐち)の近くにあるはずなのに…。店員(てんいん)を探(さが)してみたが誰(だれ)もいないようだ。この本屋はどうなってるんだ? 無人(むじん)の本屋なんて…。仕方(しかた)なく手にした本を棚に戻(もど)すと、店(みせ)を出ることにした。
 その時だ。どこにいたのか若(わか)い女性の店員が現(あらわ)れて、「どうぞ、お持(も)ちください」そう言って、自分が棚に戻した本を渡(わた)された。
 代金(だいきん)を払(はら)おうとすると、その店員は、「もういただきましたよ。大丈夫(だいじょうぶ)です」と微笑(ほほえ)みかける。これは、タダってことなのか? それとも、あとで返(かえ)しに来いとでも…。
 何だかもやもやした気持(きも)ちで店を出た。
 次の日。その本屋へ行ってみると、店は跡形(あとかた)もなく消(き)えていた。そのとき渡された本は、今でも部屋(へや)の本棚(ほんだな)に入っている。
<つぶやき>一日だけ開店する本屋だったの? 代金として何を受け取ったのでしょう。
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