みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0546「鳶に油揚げ」

2019-05-18 18:24:32 | ブログ短編

 カウンターで男が二人、睨(にら)み合っていた。その間(あいだ)に挟(はさ)まれて、若い女が気持ちよさそうに眠(ねむ)っている。男たちは小声で言い合っていた。
「俺(おれ)が彼女を送(おく)って行くよ。お前は――」
「君(きみ)の家は、彼女の家とは全くの逆方向(ぎゃくほうこう)だろ。彼女は僕(ぼく)が送って行くよ」
「それはダメだ。お前は何をするか分からない。そもそも、彼女がこんなになるまで飲ませたのは君じゃないか。彼女がお酒(さけ)に弱(よわ)いって知ってるくせに――」
「何を言ってるんだ。彼女にお酒を勧(すす)めたのは君のほうだろ。僕は止めたじゃないか」
 そこへ別の男がやって来た。その男は彼女を見るなり言った。
「すいません。こいつがご迷惑(めいわく)をおかけして。俺、連(つ)れて帰りますから」
 男の一人が驚(おどろ)いた顔で訊(き)いた。「あなたは、いったい…。彼女とは…」
「俺っすか? 俺は、彼女の知り合いっていうか…。俺たち、付き合ってるんすよ。――ほら、起(お)きて。迎(むか)えに来たよ。立てるかい? しっかりしろよ」
 彼女は眠(ねむ)そうに目をこすりながら、「あっ、ヒロ君。来てくれたんだ。ありがとね…」
 そのまま二人は店を出て行った。残(のこ)された男二人。彼女を見送ると、どちらともなく、
「彼女、付き合ってる人、いたんだ。全然(ぜんぜん)、知らなかったよ」
「何でだよ。あんなチャラチャラしてる奴(やつ)の、どこがいいんだ?」
 二人はコップに残っていたお酒をグイっと飲み干(ほ)した。
<つぶやき>まさに、鳶(とんび)に油揚(あぶらあ)げをさらわれるってとこですね。でも、ほんとに彼氏(かれし)なの?
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