みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0757「うなされる」

2019-12-26 18:04:46 | ブログ短編

 あたしは異様(いよう)な物音(ものおと)で目を覚(さ)ました。目覚(めざ)めて気づいたのだが、それは隣(となり)で寝ている主人(しゅじん)の呻(うめ)き声だった。びっしょり汗(あせ)をかいて、悪(わる)い夢(ゆめ)でも見ているのか苦(くる)しげにしていた。あたしは心配(しんぱい)になって、主人の肩(かた)を揺(ゆ)すって声をかけた。
 主人は突然(とつぜん)目を開けると、ふとんから飛(と)び起きた。荒(あら)い息(いき)をついて、目は虚(うつ)ろに正面(しょうめん)を見つめている。また声をかけると、主人はやっと我(われ)に返ったのかあたしを見つめて、
「どうした? …何かあったか?」
「何かじゃないわよ。大丈夫(だいじょうぶ)? イヤな夢でも見たの?」
 主人はしばらく無言(むごん)でいたが、あたしの方を見るでもなく、まるでひとり言のように、「ちょっと、汗を拭(ふ)いてくるよ。すぐ…、すぐ戻(もど)るから…」
 主人はベッドから下りると、そのまま寝室(しんしつ)を出て行った。あたしは、ますます心配になった。いつもと様子(ようす)が違(ちが)う。
 ――いつまで待っても、主人は戻って来なかった。あたしは寝室を出ると、主人を探しに階段(かいだん)を降(お)りた。階下(した)まで来ると、リビングに明かりが点(つ)いていて主人の声が聞こえた。
「ごめん、やっぱり無理(むり)だ。僕(ぼく)には、そんなことできないよ。だから…」
 あたしは、そっと戸(と)の隙間(すきま)から中の様子(ようす)をうかがった。主人は携帯電話(けいたいでんわ)で誰(だれ)かと話している。ひどく動揺(どうよう)して、手が震(ふる)えているのが分かった。主人は絞(しぼ)り出すように答えた。
「そ、そんなこと、あいつにばれたら、僕は…、僕はもう、お終(しま)いだ」
<つぶやき>どんな隠(かく)しごとをしているのでしょうか? 早く打ち明けちゃったほうが…。
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