彼は綿密(めんみつ)に計画(けいかく)を練(ね)った。金(かね)が集(あつ)まる日も確認(かくにん)し、逃走経路(とうそうけいろ)も頭(あたま)に入っている。だが、決行(けっこう)の日…。どういうわけか、予期(よき)せぬことばかりが起(お)きた。そして計画は失敗(しっぱい)し、彼は警察(けいさつ)に追(お)われる身(み)となった。逃走用(とうそうよう)に用意(ようい)した車(くるま)も、警察が盗難車(とうなんしゃ)と確認しレッカー移動(いどう)させられるところだった。
ちょうど目の前にマンションがあった。彼はそこに潜(もぐ)り込(こ)むことにした。以前(いぜん)、宅配(たくはい)の仕事(しごと)をしたことがあるので、外観(がいかん)を見ればだいたい分かる。
「ここは単身(たんしん)用の賃貸(ちんたい)だなぁ。セキュリティーも甘(あま)そうだ」
彼はマンションに入ると二階(かい)へ向かった。ちょうど部屋(へや)を出てきた若(わか)い女を見つけて捕(つか)まえると、その女の部屋へ引(ひ)きずり込んだ。女は抵抗(ていこう)はしなかった。部屋の中を見回(みまわ)す。独身(どくしん)女の部屋だとすぐに分かった。だが、部屋の奥(おく)から女の子の声がした。
彼は、「ちょうどいいや。このガキは人質(ひとじち)だ。俺(おれ)の言うとおりにしろ」
女は肯(うなず)くと、「これから買(か)い物(もの)に行くんです。もう…何もなくて…」
女の子は微笑(ほほえ)んで、「もういいよ。よかったね、あなたの代(か)わりがきてくれて…」
女は震(ふる)えていた。彼は女の子が何を言っているのか分からなかった。手を緩(ゆる)めたすきに、女は部屋を飛(と)び出して行った。彼は、女の子から目が離(はな)せなくなった。
女の子は無邪気(むじゃき)に言った。「おじさん、何して遊(あそ)ぼうか?」
<つぶやき>これは、やばいことになるのかなぁ。女の子は…いや、彼は脱出(だっしゅつ)できるのか?
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