みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1251「隣室の怪」

2022-05-26 17:44:16 | ブログ短編

 ずっと空室(くうしつ)だった隣(となり)の部屋(へや)に、誰(だれ)かが引っ越(こ)してきたようだ。まだ顔を合わせてはいないが、ときどき隣から変な物音(ものおと)が聞こえるようになった。
 ある深夜(しんや)のこと、私は暑苦(あつくる)しさで目を覚(さ)ました。部屋の中は、まるでサウナのような暑さになっていた。私は、たまらず窓(まど)を開けた。真夏(まなつ)でもないのに、こんなに気温(きおん)が上がるなんて――。その時、また隣からあの音が聞こえてきた。
 こんな時間(じかん)に何なんだ。私は、壁(かべ)に耳(みみ)を当てようとして驚(おどろ)いた。壁が異様(いよう)に熱(あつ)いのだ。私の頭に不安(ふあん)がよぎった。まさか、火事(かじ)――。隣の部屋が燃(も)えているのか? 私は慌(あわ)てて外へ飛(と)び出した。でも、隣の部屋には異常(いじょう)はないように見えた。煙(けむり)も出ていないし…。
 私は思い切って、隣室(りんしつ)の呼鈴(よびりん)を押(お)した。だが、何度押しても誰も出て来ない。留守(るす)なのか、それとも中で倒(たお)れているのか――。私は扉(とびら)を何度も叩(たた)いた。そして、ドアノブを回してみた。すると、扉が開いた。鍵(かぎ)がかかっていなかったのだ。
 私は部屋の中を覗(のぞ)いて驚いた。まるで工場(こうじょう)の中のように機械(きかい)が奥(おく)まで並(なら)んでいる。人が住んでいるようにはとても見えない。これは、何の装置(そうち)なんだ? 私は部屋の中へ入ってみた。機械の間(あいだ)の隙間(すきま)をぬうように奥へ向かう。しばらくして、私はあることに気がついた。部屋が広すぎるのだ。アパートなので私の部屋と間取(まど)りは同じはずだ。なのに、まだ部屋の突(つ)き当たりが見えない。私は不安になって引き返(かえ)すことにした。だが、後を振(ふ)り返って愕然(がくぜん)とした。帰り道が…、まったく分からなくなってしまったのだ。
<つぶやき>これは大変(たいへん)です。迷宮(めいきゅう)に迷(まよ)い込んだようですね。帰ることはできるのか…。
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