みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1167「食人植物」

2021-12-05 17:55:52 | ブログ短編

 綿毛(わたげ)に包(つつ)まれた種(たね)が空(そら)から降(ふ)ってきた。それは歩道脇(ほどうわき)に落ちて芽(め)を出した。そして瞬(またた)く間に成長(せいちょう)して、街路樹(がいろじゅ)ほどに大きくなった。
 植物学者(しょくぶつがくしゃ)たちは頭を悩(なや)ませた。こんな異様(いよう)な姿(すがた)の植物は今まで見たことがないからだ。観察(かんさつ)を続けていると、太(ふと)い蔓(つる)を伸(の)ばし始めた。そして、てっぺんに膨(ふく)らみが――。花を咲(さ)かせるのか? この話題(わだい)はニュースになり、見物人(けんぶつにん)が列(れつ)を作った。
 その頃(ころ)から、この街(まち)で行方不明(ゆくえふめい)になる人が増(ふ)え始めた。警察(けいさつ)の調(しら)べでは、この植物が生(は)えている道を利用(りよう)している人ばかりだ。これは、どういうことなのか?
 植物の膨らみはますます大きくなり亀裂(きれつ)が現れた。――それは、突然(とつぜん)起こった。爆発音(ばくはつおん)とともに膨らみが裂(さ)けて、綿毛に包まれた種が無数(むすう)に飛び出したのだ。一週間後、半径(はんけい)十キロの範囲(はんい)に植物の分布(ぶんぷ)が確認(かくにん)された。
 ――それから一ヶ月。この街は姿を消(け)した。植物に呑(の)み込まれてしまったのだ。政府(せいふ)は、この植物の焼却処分(しょうきゃくしょぶん)を決定(けってい)した。これ以上(いじょう)の被害(ひがい)を防(ふせ)がなくてはならない。植物学者たちは反対(はんたい)した。まだ、この植物のことが分かっていないからだ。
 焼却作戦(さくせん)が開始(かいし)されると、この植物が燃(も)えやすいことが分かった。作戦はすぐに終わると思われた。しかし、炎(ほのお)の熱(ねつ)が周りに伝わり始めると、次々(つぎつぎ)に爆発音が響(ひび)いた。種を飛ばし始めたのだ。その種は、風にのり遠くへと運ばれて行った。
<つぶやき>これは宇宙(うちゅう)からやって来たのでしょうか? 人類(じんるい)の生存(せいぞん)をかけた戦(たたか)いが…。
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