みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1158「勇者」

2021-11-16 17:43:02 | ブログ短編

 とある国で勇者(ゆうしゃ)の募集(ぼしゅう)が始まった。魔王(まおう)の復活(ふっかつ)によって危機(きき)が迫(せま)っていたのだ。だが、募集会場(かいじょう)には数人の男しか集(あつ)まらなかった。どれもこれも、勇者にはほど遠(とお)い者たちばかりだ。そこへ、女の子が通りかかった。彼女は募集の垂(た)れ幕(まく)を見てスタッフに訊(き)いた。
「勇者って、何をするんですか?」素朴(そぼく)な質問(しつもん)だ。
 スタッフの魔法使(まほうつか)いが答(こた)えた。「それはね、魔王やドラゴンたちと戦(たたか)うんだよ」
 女の子は、岩(いわ)に突(つ)き刺(さ)さっている剣(けん)を見つけて言った。
「わぁ、綺麗(きれい)だわ。これ、ちょっと触(さわ)ってもいいですか?」
 魔法使いは暇(ひま)を持て余(あま)していたので、「まあ、かまわないけど。でも、君(きみ)には…」
 女の子は剣の柄(つか)を握(にぎ)ると、いとも簡単(かんたん)に引き抜(ぬ)いてしまった。魔法使いは驚(おどろ)いて、
「何てこった! まさか、勇者の剣が君を選(えら)ぶなんて…」
 女の子は手にした剣を魔法使いに返(かえ)して、「あたしには、ちょっと重(おも)いわ」
「そ、そうだね。…君、勇者にならないかい? 君は選ばれし者なんだよ」
「あたし、家の手伝(てつだ)いをしなきゃいけないの。食べていかないといけないから」
「もし君が勇者をやってくれたら、国からたくさんお手当(てあ)てがもらえるよ」
「でも、家の手伝いをサボったら怒(おこ)られちゃうわ」
「いや、それは大丈夫(だいじょうぶ)だと思うよ。君の両親(りょうしん)には、僕(ぼく)から説明(せつめい)してもいいんだけど…」
<つぶやき>彼女は勇者になるのか? でも危険(きけん)なお仕事(しごと)ですから、両親は反対(はんたい)するかも。
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