みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1154「何ができるの?」

2021-11-08 17:40:49 | ブログ短編

「ねぇ。あたし、お魚(さかな)が食べたいなぁ。釣(つ)ってきてよ」
 彼女はさらりと言ってのける。でも、僕(ぼく)は釣りなんかしたことがない。僕がそう言うと、
「何でできないのよ。じゃあ、いいわ。お魚屋(や)さんで買ってきてよ」
 買ってきてよって…。僕は、君(きみ)が料理(りょうり)をするのを見たことがない。できるのかと聞くと、
「なに言ってるの? お魚臭(くさ)くなるでしょ。料理するのはあなたじゃない」
 えっ…、僕にそれを望(のぞ)むのか? 僕は、魚なんかさばいたことないんですけど…。
「もう…。何でできないのよ。それくらいできないでどうするの?」
 君だって、できないじゃないか。僕は喉元(のどもと)まで出かかった言葉(ことば)を呑(の)み込んだ。
「じゃあ、いいわよ。スーパーで売ってる簡単(かんたん)なやつでいいわ」
 彼女も、譲歩(じょうほ)する気になったようだ。僕は、ホッと胸(むね)をなで下ろした。でも、
「ついでにさ、お米(こめ)を買ってきてよ。それと、今夜は、やっぱり焼肉(やきにく)がいいかも」
 なに言ってるんだ? 魚だって言ったじゃないか…。僕が不満(ふまん)そうな顔をすると、
「いいじゃない。今、お肉の気分(きぶん)になったの。それと、トイレットペーパーが切(き)れかかってるからお願(ねが)いね。それとね、何か美味(おい)しそうなデザートがあると最高(さいこう)なんだけど…」
 そんなに買ってこられないよ。君もきてくれないと…。そう言うと彼女は、
「それくらい持てるでしょ。そんなこともできないなんて…。あなた、何ができるの?」
<つぶやき>こんな娘(こ)と付き合うのは大変(たいへん)じゃない? でも、それが良いっていう人も…。
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