みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1163「骨董好き」

2021-11-26 17:45:37 | ブログ短編

 突然(とつぜん)、父が風呂敷包(ふろしきづつ)みを手に訪(たず)ねてきた。私は、イヤな予感(よかん)がした。父が風呂敷を広げると、桐(きり)の箱(はこ)が出てきて、箱の中には薄汚(うすよご)れた壺(つぼ)が入っていた。父は言った。
「これは、中国の景徳鎮(けいとくちん)で焼(や)かれた壺なんだ。なかなかの名品(めいひん)なんだぞ」
 私にそんなこと言われても…。父は、意(い)を決したように言った。
「これを、お前に預(あず)けるから…、金を用立(ようだ)ててくれないか? 五十万でいいんだ」
 ほら、きた。父の骨董(こっとう)集めに、母も頭を悩(なや)ませていた。まさか、私のところにまで…。
「実(じつ)はな、行きつけの古道具屋(ふるどうぐや)で楽茶碗(らくぢゃわん)を見つけたんだ。これがなぁ、いいんだ~ぁ。ぜひ、手に入れたくてな。そこの店主(てんしゅ)は目利(めき)きじゃないから、安く買えそうなんだ」
「そんな大金、あるわけないでしょ。この壺を売ればいいじゃない」
「そんなことできるわけないだろ。売ってしまったら、二度と眺(なが)められないんだぞ。お前のところに預ければ、いつでも見に来られるじゃないか」
「絶対(ぜったい)ムリだから。それに、私…、赤ちゃんができたし…」
「そ、そうなのか? いや、それはめでたいじゃないか。よくやった! うん」
「あっ…。これ、隆之(たかゆき)に一番に話そうと思ってたのに……」
「いやぁ、隆之君も喜(よろこ)ぶぞ。じゃあ、楽茶碗は出産祝(しゅっさんいわ)いとして、お前にやろう。それならいいだろ? やりくり上手(じょうず)のお前だから、出せない額(がく)じゃないと思うんだがなぁ」
<つぶやき>骨董にはまってしまったんですね。産(う)まれてくる孫(まご)のためにも止めた方が…。
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