みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1160「しずく147~別れ」

2021-11-20 17:36:39 | ブログ連載~しずく

「ハルは、アキの幻影(げんえい)なのよ」月島(つきしま)しずくがぽつりと言った。
 水木涼(みずきりょう)がしずくに詰(つ)め寄(よ)って、「どういうことだよ。幻影って…」
「私が初めてハルの心に入ったときね、気づいたの。この娘(こ)、違(ちが)うなって…。双子(ふたご)で産(う)まれてくる能力者(のうりょくしゃ)には、たまにあるみたいなの。能力(ちから)の一部(いちぶ)が人の形(かたち)になることが…」
 日野(ひの)あまりが驚(おどろ)いて、「そんなこと本当(ほんとう)にあるんですか? だって、普通(ふつう)の娘(こ)なのに…」
「そうね、どう見たって普通の娘(こ)よ。でもね、いつか戻(もど)らないといけないの。ハルには、それが分かってた。ハルは、アキを守(まも)るために存在(そんざい)してたのかもしれないわ」
 ――ハルは、アキの手を引き寄せると微笑(ほほえ)んで言った。
「ねぇ、覚(おぼ)えてる? ママのこと。あなた、いつも悪戯(いたずら)して怒(おこ)られてたわね」
「なによ…。小さい頃(ころ)の話しでしょ。それより、早く治療(ちりょう)しないと…」
「いいのよ、もう…。私の役目(やくめ)は終(お)わったわ。あとは、あなたに任(まか)せるわ」
「ちょっと、なに言ってるのよ。ハルまでいなくなるなんて、あたし…どうするのよ」
「心配(しんぱい)ないわよ。私は、アキの中にいる。ずっと一緒(いっしょ)よ。どこにも行かないわ」
 ハルは、アキの手を強(つよ)く握(にぎ)りしめた。そして、アキの中に何かが流(なが)れ込んでいく。それと同時(どうじ)に、ハルの身体(からだ)が薄(うす)れていき、ついに消(き)えてしまった。
<つぶやき>身近(みぢか)な人との別れは辛(つら)いものです。でも、心の中にちゃんと生きてますから。
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