みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0995「しずく114~泣き顔」

2020-12-06 17:52:32 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)は為(な)す術(すべ)もなく、家が燃(も)えるのを見ながら泣(な)き崩(くず)れていた。遠くから消防車(しょうぼうしゃ)のサイレンが聞こえてくる。川相初音(かわいはつね)は彼女の背中(せなか)をさすりながら言った。
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。あなたの家族(かぞく)は無事(ぶじ)だと思うわ。さぁ、行きましょ」
「ほんとに…。助(たす)けてくれたの?」
「ええ、しずくがね。心配(しんぱい)ないわよ」初音は涼の顔をまじまじと見つめながら言った。
「それにしても、あなたの泣き顔って不細工(ぶさいく)なのね。ふふっ…」
「笑(わら)うな。もう泣かないわよ。あんたって、そういうとこがあるから――」
 初音は羨(うらや)ましそうに呟(つぶや)いた。
「あなたって、家族に愛(あい)されてたのね。あなたも…愛してる」
「ほんとうの親(おや)じゃないけどな。私にとっては大切(たいせつ)な家族だから…」
 涼は立ち上がると初音を睨(にら)みつけて、「誰(だれ)にも言うなよ。もし、しゃべったら…」
「えっ、何を?」初音はいつもの調子(ちょうし)で、「家族に愛されてるってこと?」
「違(ちが)うわよ。泣き顔が…不細工だってこと。絶対(ぜったい)、しゃべるなよ」
「はいはい、分かりました。さぁ、急(いそ)ぎましょ。みんなが待ってるわ」
 二人は駆(か)け出した。一瞬(いっしゅん)、涼は崩れ落ちていく家を見つめたが、何かを吹(ふ)っ切るように走り出した。二人は闇(やみ)の中へ消(き)えて行く。サイレンの音が大きくなっていた。
<つぶやき>普段(ふだん)は気にもかけないけど、家族は大切なものなんですよ。感謝(かんしゃ)しましょ。
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