みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1006「悪夢」

2020-12-28 17:47:47 | ブログ短編

 妻(つま)は、夫(おっと)の呻(うめ)き声で目を覚(さ)ました。横(よこ)を見ると、夫が汗(あせ)をびっしょりかいてうなされている。突然(とつぜん)、夫が飛び起きた。妻も驚(おどろ)いて起き上がり、
「どうしたの…。大丈夫(だいじょうぶ)? 何か、悪(わる)い夢(ゆめ)でもみたの?」
 夫はしばらく放心状態(ほうしんじょうたい)だったが、妻の問(と)いかけに答(こた)えて、「ああ…。それが、何かに追(お)いかけられているような……。覚(おぼ)えてないよ。もう…、思い出せない」
 夫はベッドを抜(ぬ)け出して、「ちょっと、水を飲(の)んでくるよ」と、寝室(しんしつ)を出た。
 妻は心配(しんぱい)になって、夫が戻(もど)ってくるのを待った。しかし、いくら待っても夫は戻ってこなかった。妻は、寝室を出てキッチンへ向かった。リビングに灯(あか)りがついていた。妻は夫を呼(よ)んでみた。でも、返事(へんじ)がない。キッチンにも夫の姿(すがた)はなかった。
 妻は家中を探(さが)したが、夫はどこにもいなかった。玄関(げんかん)に向かってみると、鍵(かぎ)はかかったままだ。家のキーもいつもの所に置いてある。どこへ行ったのだろう?
 妻は寝室に戻ってみた。すると、ベッドの中で夫が寝息をたてていた。
 ――翌朝。妻が朝食の支度(したく)をしていると、夫が起(お)きてきた。妻は、昨夜(ゆうべ)のことを訊(き)いてみたが、夫は何も答えなかった。食卓(しょくたく)についた夫は、妻に言った。
「僕の分の食事(しょくじ)はいらないよ。水をくれないか。どうも、消化不良(しょうかふりょう)のようだ」
 妻は、夫のしゃべり方に違和感(いわかん)を感じた。妻が夫に背(せ)を向けたとき、夫の目が獣(けもの)のような目付(めつ)きになった。そして、夫は舌(した)なめずりをした。
<つぶやき>夢に出てきた獣が現実世界(げんじつせかい)に現れたのか? 夫は、呑(の)み込まれてしまったの?
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