年度替(ねんどが)わりのこの時期(じき)、わが家(や)では家族会議(かぞくかいぎ)が開かれる。これから一年の予算配分(よさんはいぶん)が話し合われるのだ。会議の当日(とうじつ)、リビングに家族全員(ぜんいん)が集まった。議長(ぎちょう)を務(つと)めるのは、わが家の家計(かけい)を一手(いって)に握(にぎ)っているママ。「――以上(いじょう)が今年一年の収支(しゅうし)の報告(ほうこく)です。質問(しつもん)がなければ、来年度(らいねんど)の予算配分を決めたいと思います」
真(ま)っ先に手をあげたのは弟(おとうと)だ。「僕(ぼく)はもう高学年(こうがくねん)になるんだから、お小遣(こづか)いを上げてよ」
弟はこの時のために、同級生(どうきゅうせい)からお小遣いの額(がく)をリサーチし、自分のお小遣いがどれほど少ないかをアピールした。まったく、勉強(べんきょう)もしないでこんなことしてたなんて…。
ママは弟の話を聞き終(お)えると言った。「よく調(しら)べたわね、えらいわ。でも、それだけでは不充分(ふじゅうぶん)だわ。家ごとに収入(しゅうにゅう)が違(ちが)うのよ。わが家では、パパのお給料(きゅうりょう)が上がらないとね」
ママはパパに同意(どうい)を求(もと)めるように目線(めせん)を送る。弟はがっかりしたように口を閉(と)じた。すかさずわたしが手をあげて、「わたしスマホが欲(ほ)しいの。友だちもみんな持ってるし」
「みんなが持ってるからって、そんなあいまいな理由(りゆう)じゃ許可(きょか)できないわ」
ママはバッサリと切り捨(す)てた。でもわたしも負(ま)けてはいられない。すかさず切り返した。
「ママ、このあいだ買ってきたバッグ、とっても高そうに見えたんだけど…」
パパが初めて発言(はつげん)した。「えっ? ママ、バッグを買ったの?」
ママは平然(へいぜん)と言った。「あれは、ママの正当(せいとう)な報酬(ほうしゅう)よ。家族のために頑張(がんば)ってるだから」
<つぶやき>きっと、家計をやりくりして買ったんでしょうね。大目(おおめ)に見てあげましょう。
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