みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0644「お見合い4」

2019-09-01 18:20:58 | ブログ短編

 弟(おとうと)は五郎(ごろう)の背中(せなか)をつついて、買って来たものを手渡(てわた)した。
 五郎は彼女にそれを差し出して、「これ、受け取っていただけませんか?」
 それは小さな花束(はなたば)だった。五郎は彼女が喜(よろこ)んでくれると思ったのだが、受け取った彼女の反応(はんのう)はまったく無(な)かった。五郎はどうしたらいいのか焦(あせ)ってしまった。
「すいません。私たちの村(むら)では、花はとても高価(こうか)な物で…、これだけしか買えなくて」
 五郎は汗(あせ)を拭(ふ)こうとポケットからタオルを取り出した。その時、タオルにくるまれていた小さな小石(こいし)のようなものが座卓(ざたく)の上に散(ち)らばった。五郎は慌(あわ)てて小石をかき集(あつ)めた。
 小石の一つが彼女の前まで転(ころ)がって来た。彼女は何気(なにげ)なくそれを指(ゆび)でつまみあげる。それは透明(とうめい)な石で、光に当てるとキラキラと輝(かがや)いた。彼女は首(くび)をかしげて呟(つぶや)いた。
「これって、ダイヤ? まさか、そんな…」
 五郎は彼女に言った。「これは、くず石なんです。これの大きいやつは、しるべ石として…。ほら、ライトを当てると光るんで、坑道(こうどう)の中の道(みち)しるべに使っているんです」
 五郎は別のポケットからこぶし大の光る石を取り出して彼女に手渡した。
「坑道の奥(おく)まで行くと、いくらでも転(ころ)がっているんです」
 彼女は目を輝(かがや)かせて立ち上がると、「私をそこへ連(つ)れて行って下さい。今すぐに!」
<つぶやき>彼女いわく。ダイヤに目が眩(くら)んだんじゃなく、この人にちょっと興味(きょうみ)が…。
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