みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0652「癒やされたい」

2019-09-09 18:24:21 | ブログ短編

 男二人が、行きつけの小料理屋(こりょうりや)のカウンターに座(すわ)って飲んでいた。
「俺(おれ)さ、じゅんちゃんの寝(ね)てるとこ見てると、すっごく癒(い)やされるんだよね」
「じゅんちゃん? 誰(だれ)だ、それ。あっ、お前、女ができたのか?」
「違(ちが)うよ。もう女は、別(わか)れたかみさんでたくさんだ。へへ…、最近(さいきん)、もらって来た子猫(こねこ)なんだよ。これがまた、可愛(かわい)いんだ。こいつのためなら、俺、がんばっちゃう」
「あほらしい。いい歳(とし)したおっさんが言うことか? そんなんだからな――」
「いいだろ。俺の唯一(ゆいいつ)の楽しみだ。そういうお前はどうなんだ。そういうのないだろ?」
「俺は…」男はしばらく考えて、「あるな。うちのかみさんの寝顔(ねがお)を見てるときかなぁ。何かほっとするっていうか…。何時(いつ)もは口うるさいヤツなんだけど、寝てる顔だけは可愛いって思えるんだよなぁ」
「何だよそれ。何だかんだ言って、お前ら上手(うま)くいってんじゃねえか」
「ああ、まあな。俺が、でんと構(かま)えてるから…」
「絶対(ぜったい)違うだろ。奥(おく)さんが良くできてるんだよ。そうじゃなきゃ、とっくに別れてるよ」
「まあ、そうとも言う。ハハ…、もうよそうよ、この話は」
「あっ、俺、そろそろ帰るわ。じゅんちゃんの食事(しょくじ)の用意(ようい)しないといけないし」
「そうか、じゃ俺も…。最近、かみさんがさ、外(そと)で飲み過(す)ぎるなってうるさいんだ。たまには早く帰ってやらないとな。――大将(たいしょう)、おあいそね」
<つぶやき>奥(おく)さんの手玉(てだま)に乗(の)ってた方が家庭円満(かていえんまん)なのかもしれません。でも現実(げんじつ)は…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする