みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0645「しずく44~異変」

2019-09-02 18:31:31 | ブログ連載~しずく

 しずくは目を見開(みひら)いて、思わず駆(か)け出した。火の勢(いきお)いは激(はげ)しく、すでに家全体(ぜんたい)へ回っていた。それでもしずくは母親(ははおや)の名を呼(よ)び続け、家の中へ飛(と)び込もうとした。いてもたってもいられなかったのだ。しずくが玄関(げんかん)の前まで来たとき、彼女を後ろから引き止めるものがあった。彼女の身体(からだ)を両腕(りょううで)で押(お)さえ、後ろへグイグイと引き戻(もど)していく。
 しずくはその腕を振(ふ)りはらおうともがきながら叫(さけ)んだ。「離(はな)して! お母さんが…」
「行っちゃだめ! だめだよ! 絶対(ぜったい)離さないから!」しずくの後ろからつくねが叫(さけ)んだ。
 その時、爆発(ばくはつ)が起こって玄関の扉(とびら)が吹(ふ)き飛んだ。そして熱風(ねっぷう)が二人に襲(おそ)いかかり、彼女たちはその場に倒(たお)れ込んだ。それでも、つくねはしずくを離さなかった。しずくは崩(くず)れかかっている家を目(ま)の当(あ)たりにして、顔をゆがめて叫び声を上げた。
 つくねは、しずくの身体を引きずるようにして炎(ほのお)から遠(とお)ざけようとした。その間にも、しずくは狂(くる)ったように叫び声を上げ続ける。異変(いへん)が起こったのはその時だ。しずくの身体が熱(ねつ)を持ち、光を放(はな)ち始めたのだ。その光は赤味(あかみ)をおびていて、どんどん強くなっていく。
 つくねの腕にもその熱が伝わって来た。あまりの熱さに、彼女は叫び声を上げそうになった。それでもつくねは、しずくを引きずるのを止めなかった。しずくに触(ふ)れているつくねの服(ふく)から煙(けむり)が立ち始めた。つくねは心の中で叫んだ。「誰(だれ)か…、助(たす)けて!」
<つぶやき>人体発火現象(じんたいはっかげんしょう)なのでしょうか? これから二人はどうなっちゃうのでしょう。
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