三日後、連絡船(れんらくせん)の船上(せんじょう)に三人はいた。結局(けっきょく)、ずっと砂(すな)と格闘(かくとう)することになってしまった。今、いちばんホッとしているのは林田(はやしだ)である。やっとこれで帰ることができる。
久美子(くみこ)は船の上から桟橋(さんばし)にいるケンちゃんに叫(さけ)んでいた。
「卒業(そつぎょう)したら戻(もど)ってくるから、それまで頼(たの)んだわよ!」
あれからどうなったのか、伊集院(いじゅういん)も林田も教えてもらえなかった。まあ、恋(こい)の話など全く興味(きょうみ)のない伊集院にとってはどうでもいいことなのだが。
船の汽笛(きてき)が鳴(な)って、ゆっくりと連絡船は桟橋を離(はな)れて行く。久美子も林田も、見送りに来ていた若者(わかもの)たちに手を振(ふ)っていた。短い間だったが、二人とも胸(むね)に込み上げてくるものがあった。伊集院だけは、手を振るでもなく、離れていく島を見つめていた。――いつまでも島を見つめている伊集院に、林田は言った。
「そんなに落(お)ち込むなよ。仕方(しかた)ないさ。お宝(たから)なんか、そう簡単(かんたん)に――」
「落ち込む? どうして落ち込まなきゃいけないんだ。この旅(たび)の目的(もくてき)は達成(たっせい)した」
「えっ? じゃ、お宝を…。まさか、見つけたんじゃないだろうな!」
「もちろん、見つけたさ。すごいお宝だったよ」
「どこにあるんだ。俺(おれ)にも見せてくれよ。その権利(けんり)は、俺にもあるはずだ」
「あのお宝は、あの島にあるからお宝なんだ。あそこから持ち出したら価値(かち)はなくなるよ」
<つぶやき>どういうこと。いつ見つけたのよ? こんな結末(けつまつ)なんて…。納得(なっとく)できない。
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